独立行政法人国立病院機構福井病院(平成27年4月1日以降は独立行政法人国立病院機構敦賀医療センター。以下「福井病院」という。)は、独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)が設置している病院であり、各部門に所属する職員に対して、独立行政法人国立病院機構職員給与規程(平成16年規程第20号)等に基づき、基本給や年俸のほか付加職務手当等の各種手当を支給している。
このうち、付加職務手当は、本務としてあらかじめ割り振った職務以外に、院長の命令により、地方公共団体等の要請等による医師の確保が困難な地域における診療援助活動等の職務を特に付加した場合(以下、付加した職務を「付加職務」という。)に、当該診療援助活動等に従事した職員に対して支給するものである。
そして、付加職務手当の算定については、「独立行政法人国立病院機構病院に勤務する職員の病院外活動に関する取扱指針について」(平成16年国立病院機構発総第0618001号国立病院機構理事長通知)によれば、地方公共団体等の要請元が病院に委託費等(これに係る消費税額(地方消費税額を含む。)を含む。以下同じ。)を支払った場合には、支払われた委託費等を病院の収益とするとともに、委託費等が、当該職員が付加職務を行うことにより欠いた本務の勤務時間数に対する給与相当額を超える場合は、その超える額を付加職務手当として支給することとされている。
さらに、委託費等に係る消費税については機構として納税することとなるため、地方公共団体等の要請元から病院に支払われた委託費等については、委託費等からあらかじめこれに係る消費税相当額を控除して、付加職務手当を算定することとなっている(次式参照)。
福井病院においては、前記の診療援助活動等の実施に当たり、要請元に対して委託費等の請求事務を行う担当者は、要請元に対して付加職務に従事した職員の勤務実績を問い合わせた上で、委託費等の請求額を算定し、当該職員の勤務実績と合わせて給与事務担当者に報告している。そして、給与事務担当者は、報告を受けた委託費等の請求額及び勤務実績に基づき付加職務手当を算定している。
本院は、合規性等の観点から、診療援助活動等に従事した職員に対する給与は適正に算定されているかなどに着眼して、福井病院において、21年4月から26年11月までの間に医師等32人に支給された付加職務手当計77,547,855円を対象として、給与簿、支払決議書、伝票等の関係書類の提出を受け、付加職務手当の算定方法を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
福井病院において、給与事務担当者は、地方公共団体等の要請元が委託費等に係る消費税額を明示していた場合を除き、支払われた委託費等からこれに係る消費税相当額を控除せずに付加職務手当を算定していた。このため、要請元から支払われた委託費等のうち消費税額が明示されていなかったものについては、消費税相当額が付加職務手当として職員に支給されていた。
したがって、診療援助活動等の要請元から支払われた委託費等に係る消費税相当額を控除するなどして、適正な付加職務手当を算定すると計72,059,229円となり、前記の付加職務手当計77,547,855円との差額5,488,626円が過大に支給されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、福井病院において、要請元から支払われた委託費等に消費税額の明示がない場合でも、消費税相当額を控除して付加職務手当を算定しなければならないことについての認識が欠けていたことなどによると認められる。