独立行政法人都市再生機構(以下「機構」という。)は、平成26年度末現在、1,692団地、約74万戸の賃貸住宅等の賃貸、維持管理等に係る業務を実施している。そして、機構が賃貸住宅団地内に設置している団地居住者等の利用に供する有料駐車場(以下「駐車場」という。)には、敷地を舗装して白線等で区画を行い、区画線内に駐車させる平面式駐車場、複数階の構造物の昇降路を自走させて入出庫を行わせる立体式駐車場、自動車を載せる部分(以下「搬器」という。)を昇降装置で上下させて自動車の入出庫を行わせる昇降式駐車場、搬送装置により搬器を駐車室内で移動させて自動車の入出庫を行わせるタワー式駐車場等(以下、昇降式駐車場及びタワー式駐車場等を合わせて「機械式駐車場」という。)がある。
機構本社は、駐車場の賃貸、維持管理等に係る業務(以下「管理業務」という。)を行うに当たり「独立行政法人都市再生機構賃貸住宅団地管理規程」(平成16年規程第54号。以下「管理規程」という。)を定めるとともに、「有料駐車場の賃借人の募集等について」(平成24年理事通達82―23)を4支社等(注)に発している。そして、4支社等は、管理規程等に基づき、駐車場の利用料金等を決定するなどして、団地居住者等と自動車1台ごとに、平面式及び立体式駐車場にあっては1区画単位で、機械式駐車場にあっては1搬器単位で有料駐車場利用契約(以下「利用契約」という。)を締結しており、利用契約において、駐車位置の変更に対する協力等の利用に当たって遵守すべき事項を定めている。
そして、機構本社は、管理規程において、4支社等は必要があると認めるときは駐車場等としての用途を変更し、又は廃止することができるなどとしている。また、空き駐車場の活用については、別途、4支社等に通知を発し、近隣居住者等や時間貸し駐車場の管理及び運営を行う事業者(以下「時間貸し事業者」という。)に貸与することなどができることとしている。
機構本社は機械式駐車場の管理業務の実施に当たり、24年11月に、「機械式駐車装置等保守点検業務仕様書」等(以下「仕様書等」という。)を定めており、4支社等は仕様書等に基づき、機械式駐車場に係る保守点検業務について、一般競争契約により専門業者に請け負わせて3年の複数年にわたる契約を締結している。
仕様書等によれば、機械式駐車場のうち昇降式駐車場の保守点検業務については、保守点検の対象となる搬器を1搬器単位で指定した上で、点検及び消耗品等の交換を3か月に1回以上行うことなどとされている。そして、4支社等は、専門業者から見積りを徴するなどして決定した1搬器当たりの保守点検単価に、指定した搬器の点検回数を乗ずるなどして、昇降式駐車場の保守点検に係る業務費を算定している。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
機構が団地居住者に対して22年に実施した定期調査によれば、自動車を保有している世帯の割合は47.7%となっており、17年に実施した定期調査の50.9%から低下している。一方、機構が管理している駐車場の設置数は、24年度から約33万台分で推移しており、保守点検に係る費用が毎年度多額に上っている。
そこで、本院は、経済性、有効性等の観点から、賃貸住宅団地における駐車場の利用状況はどのようになっているか、必要な設置数について検討がなされているか、昇降式駐車場の保守点検に係る業務費は適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、4支社等が管理業務を実施している駐車場(26年度末現在、平面式駐車場262,946台分(土地に係る帳簿価額相当額5002億8198万余円)、立体式駐車場38,153台分(構築物に係る帳簿価額207億1984万余円)、機械式駐車場32,917台分(機械装置に係る帳簿価額50億9368万余円))及び26年度の昇降式駐車場の保守点検業務に係る26件の契約(業務費計2億6912万余円)を対象として、機構本社及び4支社等において、有料駐車場利用契約書や駐車場配置図面等の関係書類及び現地を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
機構は、26年度末現在、表のとおり、1,169団地における計334,016台分の駐車場を管理しているが、これらの利用契約の締結状況についてみると、1,004団地の平面式駐車場50,215台分(敷地に係る帳簿価額相当額1006億0684万余円)、210団地の立体式駐車場12,602台分(構築物に係る帳簿価額相当額63億6607万余円)、331団地の機械式駐車場15,644台分(機械装置に係る帳簿価額相当額22億0567万余円)、計78,461台分(帳簿価額相当額1091億7858万余円)が未契約となっていて利用されていなかった(以下、未契約の駐車場を「空き駐車場」という。)。
支社等名 | 団地数 | 設置数 | 契約数 | 空き駐車場数 |
---|---|---|---|---|
東日本賃貸住宅本部 | 653 | 177,909 | 131,952 | 45,957 |
中部支社 | 97 | 32,898 | 27,606 | 5,292 |
西日本支社 | 306 | 97,782 | 73,897 | 23,885 |
九州支社 | 113 | 25,427 | 22,100 | 3,327 |
計 | 1,169 | 334,016 | 255,555 | 78,461 |
4支社等は、団地の建替えや居住環境の整備等を行う際に、駐車場の設置数を見直すなどして、駐車場の集約化を図り、余剰となった敷地を公募等により民間事業者等に譲渡したり、用途を変更して高齢者福祉施設、商業施設等を誘致したりなどしていた。また、上記以外にも、空き駐車場について、近隣居住者等や時間貸し事業者に対して貸与するなどしていた。
このように、4支社等は空き駐車場について利活用を図っていたものの、前記のとおり、依然として多数の空き駐車場が存在していたことから、機構本社は駐車場の設置数を検討するため空き駐車場について募集を停止する基準(以下「募集停止基準」という。)を定めて、駐車場の集約化等を図り、更に敷地の利活用を促進する必要があると認められた。
上記の事態について、事例及び参考事例を示すと次のとおりである。
<事例>
中部支社は、管内のA団地の周縁部にある駐車場のうち、道路を挟んで団地の反対側に設置されている38台分について空き駐車場となっていたことから、団地全体の駐車場の設置数を検討して、駐車場の集約化等を図り、更に敷地の利活用を促進する必要があった。
<参考事例>
東日本賃貸住宅本部は、管内のB団地の周縁部にある駐車場のうち、道路を挟んで団地の反対側に設置されている57台分について用途の廃止を行い、住宅用地として譲渡契約(契約額2億3301万円)を平成27年3月に締結していた。
4支社等は、26年度に、昇降式駐車場の保守点検業務において、搬器21,077器分を指定して保守点検を実施し、これに係る業務費2億6912万余円を支払っていた。
しかし、4支社等は、機構本社が募集停止基準を定めていなかったり、募集停止した昇降式駐車場に係る保守点検の取扱いを定めていなかったりしたことなどから、搬器8,604器分については利用契約が締結されていないのに、保守点検業務の対象としていた。
そこで、今後、住宅の募集に必要となる駐車場数を勘案して保守点検業務の対象搬器数を算定したところ、前記21,077器分のうち保守点検業務が必要となる搬器は14,473器分となり、6,604器分については保守点検業務の対象に含めないことができると認められた。
したがって、昇降式駐車場の保守点検業務において、利用契約が締結されていないなどの搬器6,604器分について保守点検を実施しないこととすれば、これらに係る業務費8409万余円が低減できたと認められた。
このように、機構において、駐車場の集約化等を図り、更なる敷地の利活用の促進を検討するために必要な募集停止基準を定めていなかったり、募集停止の対象となる昇降式駐車場の保守点検について見直しを行わず、業務費を支払ったりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、機構本社において、駐車場の集約化等を図って、更なる敷地の利活用を促進するために募集停止基準を定めることについての検討が十分でなかったこと、募集停止した昇降式駐車場に係る保守点検の取扱いを定めていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、機構は、27年8月に、4支社等に通知を発して、駐車場の集約化等を図って更なる敷地の利活用を促進するための募集停止基準を定めるとともに、これを踏まえて、募集停止した昇降式駐車場に係る保守点検の取扱いを定める処置を講じた。