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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 予算経理

DNA合成製品の購入に当たり、会計規程等で認められていない前払による購入を行っていたり、納品検査において現物との照合を行わず支払を行っていたりするなど不適正な会計経理を行っていたもの[国立大学法人東京医科歯科大学、国立大学法人長岡技術科学大学](448)(449)


科目
経常費用
部局等
(1)国立大学法人東京医科歯科大学
(2)国立大学法人長岡技術科学大学
会計経理の内容
DNA合成製品の購入に係る代金の支払
不適正な会計経理の額
(1)9,058,338円(平成21年度~26年度)
(2)3,528,000円(平成21年度~25年度)

1 DNA合成製品の購入に係る会計経理の概要

国立大学法人及び大学共同利用機関法人(以下、これらを合わせて「国立大学法人等」という。)は、国立大学法人等に所属する研究者が各種の研究活動を行うために、研究用物品を多数購入するなどしている。研究用物品のうちDNA合成製品は遺伝子解析等の目的で分子生物学的実験等に使用するものであり、研究の進捗に応じて発注が行われている。

そして、各国立大学法人等の会計規程等の定めるところにより、DNA合成製品等の研究用物品の購入に係る契約については、研究者が契約依頼書を経理責任者等へ提出し、経理責任者等が契約を締結して納品検査を行うこととなっていたり、物品の購入に係る代金の前払は、定期刊行物及び外国から購入する物品の代金等の支払のような業務の実施上又は経費の性質上必要があるものを除き認めないこととなっていたりしている。また、各国立大学法人等の資産、負債及び資本の増減又は異動並びに収益及び費用は、その原因となる事実の発生した日の属する年度により所属する年度を区分することなどとなっている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、DNA合成製品の購入は会計規程等に基づき適正に行われているか、DNA合成製品の納品検査は適切に行われているかなどに着眼して、全86国立大学法人のうち31国立大学法人(注1)及び4大学共同利用機関法人のうち1大学共同利用機関法人(注2)において、平成21年度から26年度までの間に支払が行われていたDNA合成製品の購入に係る契約を対象として、契約決議書、検収調書等の書類により会計実地検査を行った。

(注1)
31国立大学法人  北海道大学、東北大学、山形大学、筑波大学、群馬大学、埼玉大学、千葉大学、東京大学、東京医科歯科大学、東京農工大学、東京工業大学、横浜国立大学、新潟大学、長岡技術科学大学、上越教育大学、福井大学、山梨大学、信州大学、岐阜大学、静岡大学、名古屋大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、滋賀大学、京都大学、大阪大学、徳島大学、九州大学、鹿児島大学、琉球大学、筑波技術大学の各国立大学法人
(注2)
1大学共同利用機関法人  大学共同利用機関法人自然科学研究機構

検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

2国立大学法人に所属する複数の研究者は、DNA合成製品の購入に当たり、研究者名等を製造メーカーに登録してDNA合成製品の購入に用いるポイントを保有するための口座を開設し、DNA合成製品の購入代金を販売代理店を通して製造メーカーに前払して、その口座にDNA合成製品の購入可能量に応じたポイントを保有しておき、研究者が研究の進捗に応じて必要なDNA合成製品を製造メーカーに連絡するとDNA合成製品が納入されて口座から納入に応じたポイントが引き落とされる方式(以下「プリペイド方式」という。)を利用していた。そして、これらの研究者は、プリペイド方式のポイントを購入することとなる契約依頼書等を経理責任者等に提出していた。

しかし、2国立大学法人の経理責任者等は、当該プリペイド方式のポイントの購入が実際はDNA合成製品の購入には当たらない前払となるものであることを認識せずに、これをそのまま承認して、販売代理店との契約や販売代理店への支払を行っていたり、納品検査に当たり、プリペイド方式のポイントの購入に係る納品書をDNA合成製品の納品書と誤って認識するなどしていたりしていた。

その結果、実際にはDNA合成製品の納品の事実がないのに、プリペイド方式のポイントの購入に係る納品書等を販売代理店から受けたことをもって納品を確認したこととして、現物との照合を行わず支払を行っていた事態が、2国立大学法人において、21年度から26年度までの間に計84件、支払額計12,586,338円について見受けられた。

さらに、プリペイド方式により購入されていたポイントの一部については、研究者が年度内の研究に使用せず翌年度に持ち越していたり、残高を保有した研究者が他の研究機関へ異動したことにより当該残高の管理が困難となっていたりしている事態が見受けられた。

これらの事態は、会計規程等に違反して、DNA合成製品を代金の前払となるプリペイド方式により購入するなどの不適正な会計経理を行って、DNA合成製品の購入代金計12,586,338円を支払っていたものであり、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、研究者において適正な会計経理を行うという基本的な認識が欠けていたこと、経理責任者等においてDNA合成製品の購入方法に対する確認が十分でなかったこと及びDNA合成製品の納品検査において現物との照合を行わなかったこと、また、2国立大学法人において研究者及び経理責任者等に対しDNA合成製品の購入を会計規程等に基づき適正に行うなどの指導が十分でなかったことなどによると認められる。

これを国立大学法人別に示すと次のとおりである。

  国立大学法人名 年度 不適正な会計経理を行っていた件数 不適正な会計経理による支払額
     
(448) 東京医科歯科大学 21~26 61 9,058,338
(449) 長岡技術科学大学 21~25 23 3,528,000
(448)(449)の計 84 12,586,338