ページトップ
  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第78 首都高速道路株式会社|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

複層構造の高速道路の桁下に設置されている照明方式の案内標識の更新に当たり、現地の状況を十分確認した上で、視認性が確保できる場合には、経済的な反射方式の採用を検討するよう改善させたもの


科目
仕掛道路資産
部局等
首都高速道路株式会社本社、神奈川管理局
契約名
(修)標識設備改修工事26―3―1
契約の概要
複層構造の高速道路の桁下に設置されている照明方式の案内標識を含む道路標識の更新を行うもの
更新工事の契約金額
1億5444万円(平成26、27両年度)
契約
平成26年7月 一般競争契約
上記のうち照明方式の案内標識の更新に係る工事費の積算額
2338万余円
反射方式を採用することにより低減できた工事費の積算額
1910万円

1 道路標識の概要等

(1)道路標識の概要

首都高速道路株式会社(以下「会社」という。)は、高速道路等の通行者に対して、案内、警戒、規制及び指示の情報を提供し、交通の安全と円滑を図ることを目的として、高速道路上等に道路標識を多数設置している。

道路標識は、「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」(昭和35年総理府・建設省令第3号)によれば、案内標識、警戒標識、規制標識、指示標識等に分類されており、その設計等については、道路標識の整備に関する一般的技術基準を定めた「道路標識設置基準」(昭和61年都街発第32号都市局長、道企発第50号道路局長通達。以下「設置基準」という。)等に規定されている。また、道路標識は、設置基準等によれば、夜間における視認性を確保するために、原則として、反射材料を用いるか又は照明装置を設置することとされており(以下、反射材料を用いる方式を「反射方式」といい、照明装置を設置する方式を「照明方式」という。)、反射方式は標示板にヘッドライトの光を反射させる材料を貼付するもので、照明方式は標示板に照明装置を内蔵して透光性のある標示板を内部から照明するなどのものである。

そして、照明方式は、照明装置を必要とすることから、反射方式に比べて製作費等が一般に高価である。

(2)案内標識の設計

会社は、道路標識の新設、更新等に当たっては、設置基準等のほかに、会社が定めた標識設置要領に基づいて設計を行っている。そして、標識設置要領によれば、案内標識については反射方式を基本とすることとされているが、複層構造の橋りょう区間や立体交差部で上層側の道路の橋桁の下方(以下「桁下」という。)のように常時暗い場所に設置する場合は、日中に通行する車両がヘッドライトを点灯していなくても視認性が確保できる照明方式を採用して、照明装置を常時点灯することとされている(参考図1参照)。

(参考図1)

桁下に設置されている案内標識の概念図

桁下に設置されている案内標識の概念図の画像

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

会社は、平成27年3月末現在で桁下に照明方式の案内標識計150面を設置しており、これらについては、今後、その劣化や損傷等の状況に応じて更新することが見込まれている。そして、照明方式の案内標識は、照明装置を必要としない反射方式に比べて製作費等が高価となるため、その更新には多額の費用を要することになる。

そこで、本院は、経済性等の観点から、会社が桁下に設置している照明方式の案内標識の更新が経済的な設計となっているかなどに着眼して、会社が26年度に契約した桁下に設置されている照明方式の案内標識を含む道路標識の更新工事1件(契約金額1億5444万円)を対象として、本社及び神奈川管理局において契約書、設計書、特記仕様書等の書類を確認するとともに、現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

会社は、上記の工事において、桁下に設置されている照明方式の案内標識計150面のうち7面を更新していた。そして、これら7面の設計に当たり、現地の状況を確認することなく、更新前と同様の照明方式を採用して更新することとして、これに係る工事費を2338万余円と積算していた。

しかし、更新の対象とした7面の案内標識の現地の状況を確認したところ、これら7面の案内標識はいずれも、上層側の道路の橋桁が、下層側の道路の真上に位置していなかったり、上層側の道路の橋桁の幅が下層側の道路の幅員より狭かったりなどしているため、常時、照明装置を点灯しなければ案内標識が視認できないような暗い場所とはなっておらず、日中は自然光により視認性が確保されていると認められた(参考図2参照)。また、会社は、更新の対象とした7面全ての案内標識について、日中は自然光により視認性が確保できていると判断して、照明装置を日の出から日の入までの間は消灯し、夜間のみ点灯することとして運用していた。

したがって、上記7面の案内標識は、照明方式ではなく反射方式を採用できると認められた。

(参考図2)

案内標識と上層側の道路との位置関係

案内標識と上層側の道路との位置関係の画像

以上のとおり、桁下に設置されている照明方式の案内標識については、今後、その劣化や損傷等の状況に応じて更新することが見込まれる。そして、7面の案内標識の更新に当たり、案内標識と上層側の道路との位置関係により反射方式としても日中の視認性が確保できるのに、現地の状況を十分に確認することなく、高価な照明方式を採用していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(低減できた積算額)

前記7面の案内標識について、照明方式ではなく反射方式により更新することとして修正計算すると、前記の積算額2338万余円は422万余円となり、約1910万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、会社において、桁下に設置されている照明方式の案内標識の更新に当たり、現地の状況を確認した上で、経済的となる反射方式を採用することについての検討が十分でなかったことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、会社は、27年8月に次のような処置を講じた。

ア 契約履行中の前記工事については、受注者と協議した上で、照明方式を採用していた7面の案内標識を経済的な反射方式により更新するよう変更契約を締結した。

イ 関係部局に通知を発して、今後、桁下に設置されている照明方式の案内標識を更新する際には、現地の状況を十分確認した上で、日中の視認性が確保できる場合には、経済的な反射方式の採用を検討することとして、同月から適用することとした。