日本郵便株式会社(以下「日本郵便」という。)は、日本郵便株式会社法(平成17年法律第100号)等に基づき、郵便業務、銀行及び保険の窓口業務等を行っている。そして、これらの業務を行うために、平成26年度末現在で、全国に13の支社と支社管内に、郵便物等の引受け、配達等の業務等を行う1,085郵便局(以下「集配局」という。)、日本郵便等が所有する消耗品等の保管、輸送等の業務を行う18物流センター等(以下、集配局と物流センター等を合わせて「集配局等」という。)、計1,103集配局等を設置するなどしている。
各集配局等においては、平らな荷役台(以下「パレット」という。)に積載されて集配局等に持ち込まれる郵便物等を輸送車両から建物内に移動させるなどの積卸作業(以下「積卸作業」という。)のために、フォークリフトやハンドリフト等が配備されている。
日本郵便は、26年度末現在、101集配局等に計246台のフォークリフトを配備している。そして、各集配局等へのフォークリフトの配備台数等については、集配局等からの要求によるほか予算等を考慮した上で、フォークリフトを使用した場合の積卸作業に要する時間をパレット1枚当たり4分として計算するなどして決定している。
フォークリフトは、事業者が、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)等に定められた定期自主検査をしなければならないこととなっている。このため、本社は、購入から1年以内のもの及び廃車予定のものを除いたフォークリフトについて定期自主検査、修理を行うことなどの保守作業に係る請負契約を、毎年度、一般競争契約により締結している。そして、保守作業の請負業者は、保守作業の終了後、保守作業の内容等を記録した報告書(以下「作業報告書」という。)を本社及び保守作業を実施したフォークリフトが配備されている集配局等に提出することになっている。
また、当該契約は総価により契約しているが、保守対象とするフォークリフトの台数の変更等に応じて支払額を確定するために、定期自主検査、修理等について、それぞれ単価を定めるなどしており、当該各単価は、保守対象となる各フォークリフトの稼働状況にかかわらず定額となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性、効率性等の観点から、フォークリフトが実際の稼働状況等に応じて適切に配備されているか、フォークリフトの保守作業に係る経費(以下「保守費用」という。)の支払が経済的になっているかなどに着眼して、25、26両年度に配備されていたフォークリフト246台を対象として、本社、13支社及びフォークリフトが配備されていた19集配局等において、契約書、作業報告書等の関係書類を確認するとともに、当該両年度にフォークリフトが配備されていなかった16集配局において、積卸作業の実態を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
フォークリフトが配備されていない集配局等においては、ハンドリフト等を使用して積卸作業を実施しており、1日当たりのパレットの枚数が少なくとも2枚(1か月当たり60枚)であれば通常の業務に支障は生じていなかった。一方、フォークリフトが配備されている集配局等における1日当たり2枚のパレットの積卸作業に要するフォークリフトの稼動時間は、1か月当たりの稼働時間に換算すると、4時間(フォークリフトを使用した場合のパレット1枚当たりの積卸作業に要する時間4分に1か月当たり60枚を乗じた時間)に相当するものである。
そこで、フォークリフトが配備されていた25年度102集配局等、26年度101集配局等における25、26両年度の保守対象となるフォークリフト246台のうち、作業報告書に累積の稼働時間が記載されていた25年度215台、26年度206台の稼働状況についてみたところ、1か月当たり10時間以上の稼働時間となっていたフォークリフトが25年度117台、26年度119台と全体の5割以上となっていた一方、全く使用されていないフォークリフト(25年度1台、26年度4台)を含めて25年度58台、26年度52台のフォークリフトは、1か月当たり4時間以下の稼働時間であって、稼働率が低調となっていた(以下、このようなフォークリフトを「低稼働フォークリフト」という。)。
本社では、各集配局等で使用しているフォークリフトの稼働状況等について把握していなかったため、集配局等におけるフォークリフトの必要性の有無や配置転換、廃車等の検討が十分に行われていなかった。このため、本社は、27年5月の東京北部郵便局の開局に当たり、配置転換できるフォークリフトがないとして、新たにフォークリフト7台を計816万余円で購入して同郵便局に配備していた。しかし、低稼働フォークリフトのうち8台については、新たに購入したフォークリフトの仕様書に示されていた必要な条件を満たすものであり、同郵便局への配置転換が可能なものであった。また、本社は、保守対象とするフォークリフトについて、上記のとおり配置転換、廃車等の検討を十分に行うことなく、低稼働フォークリフト(25年度58台、26年度52台)についても保守対象としており、これらに係る保守費用も含めて保守費用25年度4499万余円、26年度4518万余円、計9017万余円を支払っていた。
このように、低稼働フォークリフトについて、各集配局等における稼働状況等を把握しておらず、配備の必要性の有無や配置転換、廃車等の検討を十分に行わないまま、新たにフォークリフトを購入していたり、保守対象に含めていたりしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた保守費用等)
本社が新たに購入して東京北部郵便局に配備していた前記のフォークリフト7台について、購入することなく、同数の低稼働フォークリフトを同郵便局に配置転換させていたとすれば、同郵便局までの当該フォークリフトの移動に要する費用を考慮しても、購入に係る代金の支払額760万余円が節減できたと認められた。また、低稼働フォークリフト25年度58台、26年度52台のうち25年度11台、26年度11台については配置転換により効率的な稼働が見込まれることから、これらを除いた低稼働フォークリフト25年度47台、26年度41台について保守対象から除外して保守作業を実施していたとすれば、前記の保守費用25年度4499万余円、26年度4518万余円、計9017万余円は、それぞれ25年度3660万余円、26年度3765万余円、計7426万余円となり、その差額25年度838万余円、26年度752万余円、計1591万余円が節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、日本郵便において、各集配局等におけるフォークリフトの稼働状況等を適切に把握していなかったこと、各集配局等におけるフォークリフトの稼働状況等から配備の必要性の有無や配置転換、廃車等の判断を行うための配備基準を定めていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本郵便は、27年9月までに、フォークリフトの保守費用等の節減を図るために、次のような処置を講じた。
ア 各集配局等におけるフォークリフトの稼働状況等を把握するための体制を整備した。
イ 各集配局等におけるフォークリフトの稼働状況等から配備の必要性の有無や配置転換、廃車等の判断を行うための配備基準を定めた。