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  • 平成26年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
48省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
42省庁等、449件 10,920,433,132円
(検査報告 昭和21年度~平成25年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
42省庁等、443件 10,807,279,699円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

  • ① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
  • ② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
  • ③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
  • ④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成25年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する48省庁等における27年7月末現在の是正措置の状況を対象として、35省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの13省等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

昭和21年度から平成25年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものは42省庁等における449件10,920,433,132円(注1)である。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものは42省庁等における443件10,807,279,699円、金銭を還付する是正措置を必要とするものは4省等(注2)における7件3,511,047円、手直し工事等による是正措置を必要とするものは2省(注3)における2件109,642,386円となっている。これを、平成25年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、平成24年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注1)
449件10,920,433,132円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても449件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
(注2)
4省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター
(注3)
2省  農林水産省、国土交通省

(1)平成25年度決算検査報告に掲記した不当事項の是正措置の状況

検査の結果、平成25年度決算検査報告に掲記した不当事項402件(指摘金額の合計14,140,662,411円)のうち、373件13,437,695,362円(注4)については27年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの29件702,967,049円については27年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが28件603,857,549円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが1省(注5)における1件99,109,500円ある。

(注4)
373件13,437,695,362円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが325件6,027,675,768円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが2件50,036,771円、手直し工事等による是正措置が完了したものが29件712,421,448円、再発防止策による是正措置が講じられたものが32件6,647,561,375円となっている。
(注5)
1省  国土交通省

表1 平成25年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
総務省 10 130,936,520 9 128,041,640 1 2,894,880 1 2,894,880
法務省 4 22,899,823 4 22,899,823
外務省 2 21,904,623 2 21,904,623
財務省 2 260,656,958 1 260,218,096 1 438,862 1 438,862
文部科学省 32 366,792,265 32 366,792,265
厚生労働省 201 4,854,274,999 189 4,445,601,800 12 408,673,199 10 331,026,622 2 77,646,577
農林水産省 28 286,574,340 25 215,209,340 3 71,365,000 3 71,365,000
経済産業省 10 70,927,089 9 68,061,114 1 2,865,975 1 2,865,975
国土交通省 45 386,530,174 43 362,491,474 2 24,038,700 2 24,038,700
環境省 8 200,366,564 7 119,237,564 1 81,129,000 1 81,129,000
防衛省 2 5,405,489 2 5,405,489 1 4,040,489 1 1,365,000
省庁計 344 6,600,952,844 321 6,004,141,739 23 596,811,105 1 4,040,489 19 514,685,177 3 78,085,439
日本私立学校振興・共済事業団 1 8,060,000 1 8,060,000
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 3 1,122,255 3 1,122,255 3 1,122,255
国立研究開発法人農業生物資源研究所 1 3,950,814 1 3,950,814 1 3,950,814
日本放送協会 2 8,452,249 2 8,452,249
株式会社かんぽ生命保険 1 5,169,780 1 5,169,780
独立行政法人農業者年金基金 1 3,825,375 0 1,852,000 1 1,973,375 1 1,973,375
団体計 9 30,580,473 4 23,534,029 5 7,046,444 5 7,046,444
合計 353 6,631,533,317 325 6,027,675,768 28 603,857,549 1 4,040,489 24 521,731,621 3 78,085,439
注(1)
平成27年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。
注(2)
総務省及び経済産業省のうち各1件は、総務省及び経済産業省の合同事業に係る指摘であり、「金銭を返還させる是正措置を必要とするもの」及び「是正措置が完了しているもの」の金額の合計に当たっては、その重複分を控除している。

(2)平成24年度以前の検査報告に掲記した不当事項の是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から平成24年度までの検査報告に掲記した不当事項において、26年7月末現在で是正措置が未済となっていた482件14,312,791,674円のうち、62件4,095,325,591円(注6)については27年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの420件10,217,466,083円については27年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが415件10,203,422,150円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが4省等(注7)における7件3,511,047円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが1省(注8)における1件10,532,886円ある。

(注6)
62件4,095,325,591円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが47件981,313,241円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが21件643,823,685円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが4件655,105円、手直し工事等による是正措置が完了したものが8件1,535,948,390円、再発防止策による是正措置が講じられたものが6件1,577,408,855円となっている。
(注7)
4省等  厚生労働省、独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター、国立研究開発法人国立成育医療研究センター
(注8)
1省  農林水産省

表2 平成24年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
裁判所 1 9,030,000 1 9,030,000 1 9,030,000
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
法務省 10 360,319,811 10 360,319,811 9 359,992,811 1 327,000
外務省 3 30,108,954 3 30,108,954 1 11,914,499 2 18,194,455
財務省 20 382,148,251 2 3,588,425 18 378,559,826 7 320,712,008 11 57,847,818
文部科学省 1 33,606,972 1 33,606,972 1 33,606,972
厚生労働省 132 2,479,904,984 11 381,839,018 121 2,098,065,966 12 142,114,711 92 1,574,874,238 17 381,077,017
農林水産省 14 247,143,941 5 27,277,200 9 219,866,741 1 47,313,172 6 165,977,696 2 6,575,873
経済産業省 12 107,741,151 1 9,269,895 11 98,471,256 1 12,159,284 9 84,855,181 1 1,456,791
国土交通省 7 96,581,237 7 96,581,237 5 86,971,927 2 9,609,310
環境省 4 224,576,654 2 39,660,654 2 184,916,000 2 184,916,000
防衛省 8 76,347,069 0 437,938 8 75,909,131 7 72,193,456 1 3,715,675
省庁計 213 4,049,723,024 21 462,073,130 192 3,587,649,894 45 1,064,615,868 115 2,075,749,527 32 447,284,499
株式会社日本政策金融公庫 2 52,101,571 0 24,000 2 52,077,571 1 47,318,571 1 4,759,000
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
中日本高速道路株式会社 3 245,487,955 3 245,487,955 1 15,206,491 2 230,281,464
国立研究開発法人情報通信研究機構 1 2,000,000 1 2,000,000 1 2,000,000
独立行政法人国際交流基金 1 3,736,196 0 25,752 1 3,710,444 1 3,710,444
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 27,375,000 0 5,475,000 1 21,900,000 1 21,900,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 5,032,800 0 145,800 1 4,887,000 1 4,887,000
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 3 13,864,510 0 405,000 3 13,459,510 2 7,427,978 1 6,031,532
独立行政法人自動車事故対策機構 1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
独立行政法人国立病院機構 3 28,942,032 0 265,367 3 28,676,665 1 865,726 1 2,386,828 1 25,424,111
独立行政法人中小企業基盤整備機構 2 79,978,464 2 79,978,464 2 79,978,464
国立研究開発法人国立がん研究センター 14 37,411,781 11 5,988,600 3 31,423,181 3 31,423,181
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 1 450,361 1 450,361
国立研究開発法人国立成育医療研究センター 1 824,170 1 824,170 1 824,170
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 1 10,563,558 1 10,563,558 1 10,563,558
国立大学法人筑波大学 1 13,071,079 0 720,000 1 12,351,079 1 12,351,079
国立大学法人京都大学 1 20,028,650 0 700,000 1 19,328,650 1 19,328,650
国立大学法人大阪大学 1 780,000 0 80,000 1 700,000 1 700,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,584,000 0 97,000 1 8,487,000 1 8,487,000
国立大学法人山口大学 1 120,198,228 1 120,198,228 1 120,198,228
日本放送協会 2 125,208,140 2 125,208,140 2 125,208,140
株式会社商工組合中央金庫 1 4,460,000 1 4,460,000 1 4,460,000
東日本電信電話株式会社 1 35,143,995 0 60,000 1 35,083,995 1 35,083,995
日本郵便株式会社 14 932,687,365 2 68,493,377 12 864,193,988 10 789,730,401 2 74,463,587
株式会社ゆうちょ銀行 110 3,461,195,315 4 62,604,580 106 3,398,590,735 106 3,398,590,735
株式会社かんぽ生命保険 111 1,885,651,492 10 373,425,274 101 1,512,226,218 101 1,512,226,218
独立行政法人農業者年金基金 2 2,672,408 0 280,000 2 2,392,408 2 2,392,408
団体計 249 7,135,012,367 26 519,240,111 223 6,615,772,256 200 5,990,088,281 16 493,548,926 7 132,135,049
合計 462 11,184,735,391 47 981,313,241 415 10,203,422,150 245 7,054,704,149 131 2,569,298,453 39 579,419,548
注(1)
平成26年8月1日から27年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、27年7月31日現在の名称としている。
注(2)
日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
注(3)
是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人国際交流基金、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件並びに株式会社日本政策金融公庫の1件47,318,571円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から平成24年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので27年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、415件10,203,422,150円ある。これらに対する直近1年間(26年8月1日から27年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注9)

(注9)
債務者等が複数存在するため1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は415件と一致しない。
(ア)債務者等が分割納付等を実施中であるもの

省庁 116件 1,845,714,712円
団体 121件 3,753,857,388円

これらは分割納付等が行われているが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注10)は、省庁133,837,068円、団体27,649,828円となっている。

(注10)
直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ)債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの

省庁 96件 1,489,008,235円
団体 131件 2,782,362,436円

これらは是正措置の完了に向け督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における116件2,303,621,469円に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ)債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁 17件 252,926,947円
団体 7件 79,552,432円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているため、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。