本院は、検査の過程において会計検査院法第34条又は第36条の規定による意見表示又は処置要求を必要とする事態として指摘したところ、その指摘を契機として省庁及び団体(以下「省庁等」という。)において改善の処置を講じたものを、検査報告に本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項(以下「処置済事項」という。)として掲記している。
一方、本院は、毎年次策定している会計検査の基本方針にのっとり、検査の結果が予算の編成・執行や事業運営等に的確に反映され実効あるものとなるように、その後の是正改善等を継続して検査することとしている。検査報告に掲記した処置済事項についても、省庁等が制度を改めるなどの改善の処置が履行されること(改善の処置に基づき、その後の会計経理等が適切に行われることをいう。以下同じ。)により初めて実効あるものとなることから、当該改善の処置が履行されるまでその履行状況を継続して検査している。
本院は、平成25年度決算検査報告に、平成18年度から24年度までの検査報告に掲記した処置済事項のうち、平成24年度決算検査報告において改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととしていたもの99件から、検査報告掲記時点で既に履行済であったなどのため検査の必要がなかったもの13件及び26年次(25年10月から26年9月まで)は履行状況の検査の対象となる会計経理等の実績がなかったことなどから検査を実施しなかったもの3件を除いた83件についての検査の結果を掲記した。
その内訳は、改善の処置が履行されていたもの(以下「履行済」という。)が64件、検査した範囲では改善の処置が履行されていたもの(以下「検査分履行済」という。)が18件、改善の処置が一部履行されていなかったもの(以下「一部不履行」という。)が1件となっており、改善の処置が全く履行されていなかったもの(以下「不履行」という。)は0件となっていた。
そして、上記の検査分履行済18件、一部不履行1件及び26年次は履行状況の検査の対象となる会計経理等の実績がなかったことなどから検査を実施しなかったもの3件の計22件並びに平成25年度決算検査報告に新たに掲記した処置済事項76件の合計98件について、改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととした。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性等の観点から、改善の処置が履行されているかなどに着眼して、上記の98件のうち、検査報告掲記時点で既に履行済であったため検査の必要がなかったもの(以下「検査の必要がなかったもの」という。)9件及び今年次は履行状況の検査の対象となる会計経理等の実績がなかったことから検査を実施しなかったもの(以下「検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの」という。)3件を除いた86件について、26年8月から27年7月までの間に、関係する43省庁等のうち、36省庁等において会計実地検査を行うとともに、7省庁等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
(検査の結果)
上記の86件について改善の処置の履行状況を検査したところ、履行済が67件、検査分履行済が19件となっており、一部不履行及び不履行は0件となっていた。これを、平成25年度決算検査報告に掲記した処置済事項に係る改善の処置の履行状況と、20年度から24年度までの検査報告に掲記した処置済事項に係る改善の処置の履行状況とに分けて記述すると、次のとおりである。
平成25年度決算検査報告に掲記した処置済事項76件のうち、検査の必要がなかったもの9件及び検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの3件を除いた64件について検査したところ、履行済が53件、検査分履行済が11件となっていた。
検査報告年度 | 改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととした処置済事項(A) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
検査の必要がなかったもの(B) | 検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの(C) | 検査対象の処置済事項(A)—(B)—(C) | ||||||
改善の処置の履行状況 | ||||||||
履行済 | 検査分履行済 | 一部不履行 | 不履行 | |||||
平成 20年度 |
2 | — | — | 2 | 1 | 1 | — | — |
22年度 | 6 | — | — | 6 | 4 | 2 | — | — |
23年度 | 6 | — | — | 6 | 3 | 3 | — | — |
24年度 | 8 | — | — | 8 | 6 | 2 | — | — |
計 | 22 | — | — | 22 | 14 | 8 | — | — |
25年度 | 76 | 9 | 3 | 64 | 53 | 11 | — | — |
合計 | 98 | 9 | 3 | 86 | 67 | 19 | — | — |
省庁等名(平成27年7月31日現在) | 検査対象の処置済事項 | 改善の処置の履行状況 | |||
---|---|---|---|---|---|
履行済 | 検査分履行済 | 一部不履行 | 不履行 | ||
国会(衆議院) | 1 | 1 | ― | ― | ― |
内閣府(内閣府本府) | 2 | 1 | 1 | ― | ― |
同(警察庁) | 1 | ― | 1 | ― | ― |
総務省 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
法務省 | 9 | 4 | 5 | ― | ― |
外務省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
財務省 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
文部科学省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
厚生労働省 | 3 | 2 | 1 | ― | ― |
農林水産省 | 9 | 4 | 5 | ― | ― |
経済産業省 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
国土交通省 | 8 | 5 | 3 | ― | ― |
防衛省 | 5 | 5 | ― | ― | ― |
日本銀行 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
東日本高速道路株式会社 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
中日本高速道路株式会社 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
西日本高速道路株式会社 | 3 | 3 | ― | ― | ― |
日本郵政株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
日本司法支援センター | 1 | 1 | ― | ― | ― |
全国健康保険協会 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
日本年金機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人造幣局 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人国立印刷局 | 2 | 2 | ― | ― | ― |
独立行政法人国民生活センター | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人農畜産業振興機構 | 1 | ― | 1 | ― | ― |
国立研究開発法人理化学研究所 | 2 | 2 | ― | ― | ― |
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人国立病院機構 | 1 | ― | 1 | ― | ― |
国立研究開発法人海洋研究開発機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人都市再生機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
独立行政法人住宅金融支援機構 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
国立研究開発法人国立成育医療研究センター | 1 | 1 | ― | ― | ― |
首都高速道路株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
阪神高速道路株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
東日本電信電話株式会社 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
日本郵便株式会社 | 2 | 2 | ― | ― | ― |
株式会社ゆうちょ銀行 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
株式会社かんぽ生命保険 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
日本下水道事業団 | 1 | ― | 1 | ― | ― |
放送大学学園 | 1 | 1 | ― | ― | ― |
計 | 86 | 67 | 19 | ― | ― |
処置済事項については、省庁等において改善の処置を講じた事項に係る処置が確実に履行されることが肝要である。
本院は、前記の検査分履行済19件、検査の対象となる会計経理等の実績がなかったもの3件及び平成26年度決算検査報告に掲記した処置済事項57件の計79件について、改善の処置の履行状況を継続して検査していくこととする。