総務省は、総務省内にLANを構築し、多数のパーソナルコンピュータ(以下「LAN用PC」という。)をこれに接続して運用している。総務省は、平成25年4月に、総務省内のLANを構成するサーバを更新するとともに、サーバ上で稼働するマイクロソフトコーポレーション製のオペレーティングシステム(以下「サーバ用OS」という。)をバージョン2003からバージョン2008R2にバージョンアップするなどのLANの更改を行っていた。サーバ用OSが提供する機能をLAN用PCで利用するには、そのための権利(Client Access License。以下「CAL」という。)が必要であり、サーバ用OSのバージョンに対応するCALがLAN用PCの台数分必要となる。
総務省は、上記LANの更改に合わせて、同月に、総務省年金記録確認第三者委員会が利用するLAN用PC700台のためのCAL700ライセンスを調達するなどの契約を、日本電子計算機株式会社と契約額59,566,500円で締結していた。そして、総務省が調達したCAL700ライセンスは、サーバ用OSのバージョン2008R2だけでなく後継となるバージョン2012にも対応するもの(以下「2012対応CAL」という。)となっていた。
一般に、サーバ用OSをバージョンアップする場合は、契約締結後にインストールや動作確認等の作業のために相当の期間を要することになる。これに対して、CALは、契約締結後にインストール等の作業を要しない。
本院は、経済性等の観点から、LAN用PCに係るソフトウェアや権利の調達が適切に行われているかなどに着眼して、本件契約を対象として、総務本省において、契約書、仕様書、ライセンス証書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
総務省は、本件契約締結前に、LAN用PCを運用するために、サーバ用OSのバージョン2003だけでなくバージョン2008R2にも対応するCAL(以下「2008R2対応CAL」という。)を別途調達しており、本件契約を締結した25年4月の時点で、前記のLAN用PC700台に活用可能な2008R2対応CAL700ライセンス以上を既に保有していた。
一方で、総務省は、前記のバージョンアップを行った25年4月の時点で、バージョン2003に係る多数のぜい弱性が公開されていたことから、バージョン2008R2においても同様に多数のぜい弱性が公開された場合に後継となるバージョン2012へ緊急のバージョンアップを行う可能性を考慮して、本件契約において2012対応CAL700ライセンスを調達する必要があったとしていた。
しかし、前記のとおり、CALは契約締結後にインストール等の作業を要しないことから、仮に、サーバ用OSを緊急にバージョンアップする必要が生じたとしても、その時点で2012対応CALを調達すれば足り、本件契約を締結した25年4月の時点では、既に保有していた2008R2対応CALを活用することとしていれば、本件契約において2012対応CALを調達する必要はなかった。そして、総務省は、27年7月に総務省年金記録確認第三者委員会が廃止された後は、2012対応CALを活用しないまま保有していた。
したがって、2012対応CAL700ライセンスは調達の必要がなく、これに係る支払額18,998,280円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、総務省において、2012対応CALに係る調達の際に、その必要性の検討が十分でなかったことなどによると認められる。