法務省は、法務本省(以下「本省」という。)や全国の矯正施設等にそれぞれ構築されている施設内LANを結ぶ矯正総合情報通信ネットワークシステム(以下「コーネット」という。)を構築し、多数のパーソナルコンピュータ(以下「コーネットPC」という。)をこれに接続して運用している。コーネットを構成するサーバ上で稼働するマイクロソフトコーポレーション製のグループウェア(注)等(以下「グループウェア等」という。)をコーネットPCで利用するには、そのための権利がコーネットPCの台数分必要となる。そして、本省は、平成23年8月に、コーネットで新しいグループウェア等を利用するために必要な権利であるExchange Server CAL(以下「ECAL」という。)及びWindows Server CAL(以下「WCAL」という。)各15,000ライセンス等を調達する契約を、日本電気株式会社と契約額190,920,240円(26年4月変更後の契約額193,344,624円)で締結していた。
本省が19年11月に各矯正施設等の長に対して発した「矯正情報ネットワークシステムの取扱要領について(通達)」(平成19年法務省矯総第6804号)によれば、各矯正施設等は、コーネットライセンス管理台帳を作成し、コーネットPC等に係る各種使用権の取得状況等を適正に管理することとされている。
本院は、経済性等の観点から、コーネットPCに係る権利やソフトウェア等の調達が適切に行われているかなどに着眼して、本件契約を対象として、本省において、契約書、仕様書、コーネットライセンス管理台帳等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
各矯正施設等は、従前のグループウェア等を利用するために必要なECAL及びWCALを保有しており、この中には新しいグループウェア等も利用することができるECAL2,555ライセンス及びWCAL6,643ライセンスが含まれていた。そして、各矯正施設等は、保有していたECAL及びWCALをコーネットライセンス管理台帳により管理していたことから、本省は、各矯正施設等が新しいグループウェア等も利用することができるECAL及びWCALを上記のとおり既に保有していたことを、コーネットライセンス管理台帳により確認することができる状況にあった。
しかし、本省は、本件調達に当たり、上記のような状況にあったにもかかわらず、コーネットライセンス管理台帳を確認することなく調達数量を決定して、前記のとおり、ECAL及びWCAL各15,000ライセンスを新たに調達していた。
したがって、前記のとおり、各矯正施設等が新しいグループウェア等も利用することができるECAL2,555ライセンス及びWCAL6,643ライセンスを既に保有していたことから、本件契約締結後に各矯正施設等がコーネットPCを増設したことによりECAL及びWCALが新規に必要となり各1,058ライセンスを活用したことを考慮しても、本件契約で調達したECAL及びWCALのうちECAL1,497ライセンス及びWCAL5,585ライセンスが過大に調達されていて、これに係る支払額26,196,732円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、本省において、ECAL及びWCALの調達に当たり、各矯正施設等が既に保有しているECAL及びWCALの状況を確認することの必要性について認識が欠けていたことなどによると認められる。