1件 不当と認める国庫補助金 5,027,300円
文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)(以下「補助金」という。)は、地域の多様で豊かな文化遺産の活用を図ることにより、文化振興とともに地域活性化に資することを目的として、市町村等が策定する実施計画に基づき官民が一体となって取り組むなどして実施される地域の文化遺産の情報発信、普及啓発、継承等の事業に対して国が補助するものである。
文化芸術振興費補助金(文化遺産を活かした地域活性化事業)交付要綱(平成25年文化庁長官決定)等によれば、補助事業者は、地域の文化遺産の所有者、保護団体等によって構成される実行委員会等とすることとされている。そして、補助金の交付額は、予算の範囲内において定額とすることとされており、その補助対象経費は、地域の文化遺産に関する総合的な情報を発信するための映像、パンフレット等の制作等に係る委託費、請負費等の経費とすることとされている。
また、平成26年度の補助金交付の対象となる事業期間(以下「補助事業期間」という。)は、26年4月1日から27年3月31日までの間とされており、補助事業期間外の期間に実施した事業に係る経費は、補助の対象とならないこととされている。
本院が、132補助事業者において会計実地検査を行ったところ、1補助事業者において次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
部局等 | 補助事業者 (所在地) |
補助事業 | 年度 | 事業費 (補助対象経費) |
左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金 | 摘要 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(30) | 文化庁 | 天龍村霜月神楽等資産化実行委員会 (長野県下伊那郡天龍村) 〈事業主体〉 |
天龍村霜月神楽等資産化 | 26 | 6,994 (6,186) |
6,186 | 5,027 | 5,027 | 補助事業期間経過後に納品された成果品に係る経費を補助対象経費に含めていたもの |
天龍村霜月神楽等資産化実行委員会は、平成26年度に実施した補助事業において、長野県下伊那郡天龍村の霜月神楽等の祭りについての調査、記録映像の作成等を事業費6,994,972円で実施しており、このうち6,186,592円を補助対象経費として実績報告書を提出し、同額の補助金の交付を受けていた。
しかし、同実行委員会は、26年度に業者に発注した記録映像の作成業務(4,284,800円)及び調査報告書の作成業務(742,500円)に係る成果品が、翌年度の27年10月15日及び11月10日に納品されていたにもかかわらず、それぞれ実際の納品日より前の日付である同年3月25日及び3月30日を納品日とする事実と異なる納品書等に基づき、補助事業期間中に成果品が納品されたこととして、上記の業務に係る経費計5,027,300円を補助対象経費に含めていた。
したがって、上記補助の対象とならない経費計5,027,300円を除いて適正な補助対象経費を算定すると1,159,292円となり、これに対する補助金は1,159,292円となることから、前記の補助金6,186,592円との差額5,027,300円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同実行委員会において適正な会計経理を行うことの認識が欠けていたこと、文化庁において補助金の適正な執行についての周知徹底が十分でなかったこと、実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。