【是正改善の処置を求め及び意見を表示したものの全文】
高等学校等就学支援金の受給資格の認定等について
(平成28年10月27日付け 文部科学大臣宛て)
標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求め、及び同法第36条の規定により意見を表示する。
記
貴省は、高等学校、中等教育学校の後期過程、特別支援学校の高等部等(以下「高校等」という。)の生徒又は学生(以下「生徒」という。)が授業料に充てるために高等学校等就学支援金(以下「就学支援金」という。)の支給を受けることができることとすることにより、高校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与することを目的として、高等学校等就学支援金制度を実施している。この制度は、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律」(平成22年法律第18号。以下「支援金法」という。)、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行令」(平成22年政令第112号。以下「支援金法施行令」という。)、「高等学校等就学支援金の支給に関する法律施行規則」(平成22年文部科学省令第13号。以下「支援金法施行規則」という。)等に基づき実施することとなっており、支援金法によれば、就学支援金は、都道府県知事(当該高校等が地方公共団体の設置するものである場合は都道府県教育委員会。以下、これらを合わせて「知事等」という。)が生徒に支給することとされている。また、国は、就学支援金の支給に要する費用の全額に相当する金額を高等学校等就学支援金交付金(以下「交付金」という。)として都道府県に交付することとされている。
この制度は、平成22年度に公立高等学校に係る授業料不徴収制度とともに設けられたが、低所得世帯の生徒に対する一層の支援と公立私立間の教育費負担の格差是正を図る必要があり、厳しい財政状況の下で限られた財源を有効活用する観点から、25年度に「公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部を改正する法律」(平成25年法律第90号。以下「改正法」という。)が制定された。そして、改正法が施行された26年度からは、公立高等学校の生徒も就学支援金の支給の対象となるとともに、保護者等の収入の状況に照らして就学支援金を支給しないこととする所得制限が設けられた。また、この改正法の法律案の議決に際しては、衆議院及び参議院において、改正法の施行から3年を経過した後、教育の機会均等を図る観点から、政策の効果を検証した上で、必要な措置を講ずるものとすること、就学支援金を受給できる資格(以下「受給資格」という。)の認定に当たって地方公共団体や学校現場に相応の事務量が発生することに鑑み、そのための条件整備に努めることなどについて、特段の配慮をするよう附帯決議が行われている。
支援金法等によれば、受給資格を有する者は、生徒で日本国内に住所を有する者とされている。ただし、高校等を卒業するなどしていたり、高校等の在学期間が通算して36か月を超えるなどしていたりする者については、就学支援金を支給しないこととされている。また、「保護者等の収入の状況に照らして、就学支援金の支給により当該保護者等の経済的負担を軽減する必要があるとは認められない者」として支援金法施行令において定める保護者等の地方税法(昭和25年法律第226号)の規定による市町村民税の所得割額(保護者等が2人以上いるときはその全員の合算額。以下「所得割額」という。)が304,200円以上である者(以下「所得制限対象者」という。)についても、就学支援金を支給しないこととされている。
そして、就学支援金は、生徒が高校等に在学する月について月を単位として支給され、その額は支給限度額の範囲内で生徒の在学する高校等の授業料の月額に相当する額となっている。この支給限度額は、支援金法施行令において、表1のとおり、生徒の在学する高校等の区分に応じて一律に定められている(以下、この額を「一律額」という。)。また、私立高等学校等(以下「私立高校等」という。)に在学する生徒で、「その保護者等の収入の状況に照らして特に保護者等の経済的負担を軽減する必要があるもの」(以下、この者を「加算対象者」という。)については、一律額に保護者等の所得割額に応じた加算額を加算した額を支給限度額とすることとなっている。なお、生徒の履修単位数に応じて授業料の額を定める制度(以下「単位制」という。)を採用している高校等に在学する生徒については、上記とは別に、履修単位数や履修期間に応じて支給限度額を算定することとなっている。
表1 就学支援金の支給限度額
高校等の区分
\
保護者等の所得割額 |
私立高校等 | 公立高等学校 | ||
---|---|---|---|---|
一律額 (ア) |
加算額 (イ) |
支給限度額 (ア)+(イ) |
支給限度額 (一律額) |
|
304,200円以上[年収910万円以上] | 支給されない | 支給されない | ||
154,500円以上304,200円未満 [年収590万円以上910万円未満] |
9,900円 | ― | 9,900円 | 9,900円 |
51,300円以上154,500円未満 [年収350万円以上590万円未満] |
9,900円 | 4,950円 | 14,850円 | (ただし、 定時制の場合は2,700円 通信制の場合は520円 特別支援学校高等部の場合は400円) |
0円超51,300円未満 [年収250万円以上350万円未満] |
9,900円 | 9,900円 | 19,800円 | |
0円[年収250万円未満] (市町村民税が非課税の場合を含む。) |
9,900円 | 14,850円 | 24,750円 |
就学支援金の支給手続は、支援金法等によれば、次のとおりとすることとされている(図参照)。
生徒が就学支援金を受給しようとするときは、その在学する高校等の設置者(以下「学校設置者」という。)を通じて知事等に対し、当該高校等における就学について受給資格を有することについての認定を申請し受給資格の認定及び支給額の決定を受けなければならないこととなっている。この申請は、生徒の氏名、住所、高校等の在学期間等を記入した受給資格認定申請書に保護者等の所得割額を示す課税証明書等を添付して、当該学校設置者を通じて、知事等に提出することによって行われなければならないこととなっており、多くの場合、当該高校等への入学時に行われている。
また、この所得割額は、各年度の4月から6月までの就学支援金の支給にはその前年度の所得割額(前々年の収入に対する所得割額)を、7月以降の支給には当年度の所得割額(前年の収入に対する所得割額)を用いることとなっている。このため、前年度以前の所得割額により既に受給資格の認定を受けた者(以下「受給権者」という。)であっても、当年度の7月以降も引き続き受給しようとするときは、7月頃に、当年度の課税証明書等を添付した収入状況届出書を学校設置者を通じて知事等に提出しなければならないこととなっている(以下、受給資格認定申請書と収入状況届出書(いずれも添付書類を含む。)を合わせて「申請書等」という。)。
そして、知事等は、受給資格認定申請書を審査して受給資格の認定を行い、また、収入状況届出書を審査して生徒が引き続き受給資格を有していることの確認を行い、その上で支給額の決定を行う(以下、これらを合わせて「受給資格の認定等」という。)こととなっている。
就学支援金の支給は、受給権者である生徒に対し行うこととなっているが、学校設置者は、受給権者に代わって就学支援金を受領(以下「代理受領」という。)して、当該高校等が有する当該受給権者に対する授業料に係る債権の弁済に充てるものとすることとなっている。
また、支援金法施行規則によれば、知事等は、就学支援金の支給に関する事務の一部を学校設置者その他当該事務を適正かつ確実に実施することができると認められるものに委託することができることとされている。
図 就学支援金の支給手続
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
高等学校等就学支援金制度により都道府県に交付される交付金の額は、毎年度多額に上っている。また、前記のとおり、衆議院及び参議院において、改正法の施行から3年を経過した後に、政策の効果を検証した上で必要な措置を講ずるなどするよう附帯決議が行われている。
そこで、本院は、合規性、効率性、有効性等の観点から、受給資格の認定等が適切に行われているか、生徒の教育に係る経済的負担の軽減が十分に図られているか、所得制限の制度が保護者等の収入の状況を適切かつ公平に反映したものとなっているかなどに着眼して、貴省及び24都府県(注1)において、26年度に24都府県に所在する高校等の生徒約60万名に就学支援金を支給するために交付された交付金計760億3611万余円を対象として、受給資格の認定等の事務等について説明を聴取し、申請書等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、学校設置者における事務の実施状況等を聴取したり、学校設置者が保有する生徒の在学期間や授業料についての資料を確認したりするなどの方法により検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
知事等は、前記のとおり、申請書等を審査して受給資格の認定等を行うこととなっているが、就学支援金の支給に関する事務の一部を学校設置者等に委託することができることとなっていて、貴省が26年4月に就学支援金の支給事務の標準的な手順等について記載して都道府県に配布した「高等学校等就学支援金事務処理要領(新制度)」(以下「事務処理要領」という。)によれば、保護者等の所得を証明する書類の実質的な確認作業等について委託することなどは可能とされている。このため、都道府県以外の者が学校設置者となっている高校等の生徒の受給資格の認定等に当たり、前記24都府県のうち、市区町村立の高校等(以下「市立高校等」という。)が設置されている17都府県のうち16都府県が、私立高校等が設置されている24都府県のうち23府県が、生徒の高校等の在学期間や保護者等の課税証明書等の実質的な確認作業等を学校設置者に委託している。これらの都府県が学校設置者へ委託する事務の内容は都府県により異なっているが、いずれも学校設置者の確認した情報又は確認結果を都府県に提出させることとしている。
そこで、上記の16都府県及び23府県の純計である24都府県における受給資格の認定等についての審査の状況をみたところ、表2のとおり、19都府県(市立高校等については11都府県、私立高校等については17府県)においては、学校設置者の確認した情報又は確認結果を用いながら、申請書等を学校設置者から受領するなどして、申請書等に記された受給資格の認定等に必要な情報を入手して、受給資格の認定等を行っていた。
一方、8府県(市立高校等については5県(注2)、私立高校等については6府県(注3))においては、表2のとおり、26年度に支給された就学支援金計140億1620万余円(交付金同額)について、就学支援金を支給された生徒が在学する470高校等の学校設置者が申請書等を知事等からの委託に基づき保管していて、知事等は、各学校設置者に生徒の受給資格の有無等の確認結果を記した一覧表(以下「確認結果表」という。)を提出させ、これを用いて受給資格の認定等を行っていた。
しかし、上記の8府県は、確認結果表が申請書等に記された情報を支援金法等の法令等にのっとって適切に確認したものとなっているか抽出して調査するなど学校設置者の確認結果の妥当性についての検証を行っていなかった。
表2 生徒の高校等の在学期間や保護者等の課税証明書等の実質的な確認作業を学校設置者に委託している24都府県における受給資格の認定等の方法
受給資格の認定等の方法 | 市立高校等の生徒分 | 私立高校等の生徒分 | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
都府県数 | 就学支援金の支給額 | 都府県数 | 就学支援金の支給額 | 都府県数 | 就学支援金の支給額 | ||
申請書等に記された受給資格の認定等に必要な情報を入手していた都府県 | 11 | 1,699,521 | 17 | 14,139,310 | 19 | 15,838,831 | |
申請書等を学校設置者から受領して、その内容を審査していた都府県 | 10 | 1,685,542 | 14 | 11,673,151 | 18 | 13,358,693 | |
職員を学校設置者に派遣するなどして、申請書等の内容を審査していた都府県 | 1 | 13,978 | 3 | 2,466,159 | 4 | 2,480,137 | |
学校設置者に確認結果表を提出させていたが、確認結果の妥当性についての検証を行っていなかった都府県 | 5 | 1,195,335 | 6 | 12,820,872 | 8 | 14,016,208 | |
計 | 16 | 2,894,856 | 23 | 26,960,183 | 24 | 29,855,039 |
そこで、前記8府県の会計実地検査の際に、8府県において就学支援金を支給された生徒が在学する470高校等のうち61高校等を選定し、当該高校等の生徒の一部を抽出して、学校設置者が保管していた当該生徒の申請書等や、高校等に赴いて学校設置者が保有している当該生徒の在学期間や授業料についての資料を確認するなどして検査した。その結果、学校設置者が就学支援金を受給できる月数の確認を誤っていたり、学校設置者が事実と相違した内容の確認結果表を提出するなどしたりしていたのに、学校設置者の提出した確認結果表に基づき受給資格の認定等が行われていた事態が見受けられ、生徒計5名に係る就学支援金が過大(計46万余円)に支給されていたり、受給資格を有しない生徒59名について受給資格の認定等が行われたままとなっていたり(支給決定額計752万余円)などしていた。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例1>
兵庫県は、平成26年度に私立高校等の生徒に係る就学支援金計17億4492万余円を交付している。同県は、課税証明書等の実質的な確認作業等を各学校設置者に委託し、各学校設置者に確認結果表を提出させて、これを用いて受給資格の認定等を行っていた。
そこで、この確認結果表と学校設置者が保管する申請書等とを確認したところ、確認結果表では就学支援金を受給できる月数が誤って算定されるなどしていたが、同県はこれをそのまま用いて受給資格の認定等を行っていたため、生徒2名に対して就学支援金が計23万余円過大に支給されたり、生徒3名に対して計40万余円が過小に支給されたりしていた。また、保護者等の一方の課税証明書等が添付されていないなど必要な書類が不足していた生徒14名について、受給資格の認定等を行っていた。
さらに、確認結果表には、学校設置者が受給資格の有無等を確認していない生徒108名及び入学を辞退していた生徒6名が含まれていたり、申請書等を提出した生徒48名が含まれていなかったりして、事実と相違した内容となっていたが、同県は、この確認結果表をそのまま用いていたため、受給資格を有しない生徒59名について受給資格の認定等をしていたり(支給決定額計752万余円)、生徒48名について支給額を誤って受給資格の認定等をしていたり(過大に支給決定していた額計260万余円、過小に支給決定していた額計2万余円)などしていて、計117名について誤った受給資格の認定等を行うなどしていた。なお、上記の117名への就学支援金については、学校設置者が申請書等の内容を後日確認して、その確認結果に基づく額を受給資格を有する者に支給して同県に報告していたが、同県では、28年7月時点で、この報告を踏まえて誤った受給資格の認定等を取り消すなどの手続が執られていなかった。
就学支援金は、前記のとおり、学校設置者が都道府県から代理受領し、当該生徒に係る授業料債権に充てることとなっている。また、都道府県は学校設置者への就学支援金の支給を、四半期ごとなど年に数回に分けて行うこととしている。
しかし、単位制を採用している高校等で、年度の始めなど単位を登録する時に授業料の全額を納入させることとしている場合、学校設置者が就学支援金を代理受領した時は、就学支援金を充てるべき授業料債権は存在しない。この場合、教育に係る経済的負担の軽減を図るというこの制度の目的に照らして、学校設置者は受領した就学支援金を速やかに受給権者である生徒に支給する必要があり、事務処理要領によれば、学校設置者は、当然に受給権者である生徒に就学支援金を引き渡す義務を負うことになるとされている。なお、この場合における生徒への実際の引渡しの状況について、知事等が学校設置者から報告を受けることにはなっていない。
そこで、単位制を採用している13都府県の26高校等において、これらを設置する25学校設置者の就学支援金の引渡し状況についてみたところ、このうち5県(注4)の生徒1,390名に係る就学支援金計2億0788万余円(交付金同額)について、学校設置者は、生徒に対し、単位登録時に授業料を全額納入させていたのに、26年度に就学支援金を代理受領した後、生徒が就学支援金の速やかな引渡しを希望しないなど特段の事情がなかったにもかかわらず、当該生徒が翌年度に新たに単位登録して発生した授業料債権と相殺するなどするまで預かり続けていて、26年度中に生徒への引渡しを行っていなかった。そして、これらの中には、生徒が退学等した後も就学支援金を預かり続けていた事態も見受けられた。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例2>
沖縄県は、平成26年度に単位制を採用する高等学校の生徒593名に係る就学支援金計8508万余円について受給資格の認定等を行い、同校の学校設置者はこれを代理受領している。そして、同校は、原則として、生徒から、年度の始めなど単位を登録する時に授業料を全額納付させることとしている。
そこで、同県が26年度に同校の生徒に支給した就学支援金が生徒に引き渡されているかについてみたところ、573名に係る就学支援金計8160万余円については、就学支援金を充てるべき授業料債権がないのに、生徒が就学支援金の速やかな引渡しを希望しないなど特段の事情がなかったにもかかわらず、26年度中に生徒に引き渡されていなかった。
そして、このうち495名に係る就学支援金計6988万余円については、当該生徒が27年度に新たに単位登録して発生した授業料債権と相殺されていた。また、26年度末に同校を退学等した生徒のうち、12名(保護者等の26年度の所得割額(25年の収入に対する所得割額)が0円として受給資格の認定等が行われていた生徒5名を含む。)に係る就学支援金計176万余円については、生徒の退学等の後も当該生徒に係る就学支援金を預かり続けて28年1月以降に生徒に引き渡されていた。
受給資格の認定等に用いる保護者等の所得割額は、課税証明書等の発行時期を考慮して、各年度の4月から6月までの就学支援金の支給にはその前年度の所得割額(前々年の収入に対する所得割額)、7月以降の支給には当年度の所得割額(前年の収入に対する所得割額)となっている。ただし、各年の1月1日に国外に在住している保護者等(以下「国外在住保護者」という。)は、市町村民税の課税対象者とならず、所得割額が存在しないことから、このような保護者等をもつ生徒は、支援金法施行令等の定める所得制限対象者や加算対象者には該当せず、一律額を支給限度額として受給資格の認定等が行われ、就学支援金が支給されることとなる。
そして、前記の24都府県が26年度に就学支援金を支給した生徒約60万名のうち、26年4月から6月までの支給又は26年7月から27年3月までの支給に係る申請書等に保護者等が国外に在住と記載されていて25年度又は26年度の課税証明書等の提出がなかった生徒計4,552名についてみたところ、24都府県は、支援金法施行令等の規定に基づき、課税証明書等の提出がなくても受給資格の認定等を行っており、これにより就学支援金を計4億3452万余円(交付金同額)支給していた。
しかし、国外在住保護者であっても、その在住先において給与等の収入がある場合が多く、在住先の税制や為替の影響等の事情があるため単純には比較できないものの、国内在住時と同等程度の収入がある場合が一般的と考えられる。そこで、上記4,552名の保護者等の国外在住の状況別の受給資格の認定等の方法についてみると、表3のとおり、保護者等が25年1月1日に国内に在住し25年中に国外在住となった生徒888名及び国外在住保護者が25年中に帰国し26年1月1日に国内に在住していた生徒641名については、保護者等の25年度又は26年度のいずれかの所得割額が存在し当該保護者等の収入の状況が確認可能となっていた。
表3 平成26年4月から6月までの支給又は26年7月から27年3月までの支給に係る申請書等に保護者等が国外に在住と記載されていて25年度又は26年度の課税証明書等の提出がなかった生徒の保護者等の国外在住の状況別の受給資格の認定等の方法
保護者等の国外在住の状況 | 生徒数 | 受給資格の認定等の方法 | |
---|---|---|---|
平成26年4月から6月までの支給 | 26年7月から27年3月までの支給 | ||
① 保護者等が25年1月1日に国内に在住し25年中に国外在住となった生徒 | 888名 | 25年度の所得割額が存在することから、25年度の課税証明書等を用いて受給資格の認定等を行う。 | 26年度の所得割額が存在しないことから、課税証明書等の提出がなくても、一律額を支給限度額として受給資格の認定等を行う。 |
② 国外在住保護者が25年中に帰国し26年1月1日に国内に在住していた生徒 | 641名 | 25年度の所得割額が存在しないことから、課税証明書等の提出がなくても、一律額を支給限度額として受給資格の認定等を行う。 | 26年度の所得割額が存在することから、26年度の課税証明書等を用いて受給資格の認定等を行う。 |
③ ①②以外の生徒(25年1月1日、26年1月1日とも保護者等が国外に在住していたなどの生徒) | 3,023名 | 25年度の所得割額が存在しないことから、課税証明書等の提出がなくても、一律額を支給限度額として受給資格の認定等を行う。 | 26年度の所得割額が存在しないことから、課税証明書等の提出がなくても、一律額を支給限度額として受給資格の認定等を行う。 |
計 | 4,552名 | / | / |
そして、これらの生徒の保護者等の所得割額の状況についてみたところ、次のような事態が見受けられた。
前記4,552名のうち、23都府県の888名は、25年1月1日には保護者等が国内に在住していたが25年中に国外在住となったため、26年7月から27年3月までの間の就学支援金については、26年度の所得割額(25年の収入に対する所得割額)が存在しないことから、課税証明書等の提出がなくても、受給資格の認定等を受けて就学支援金が支給されていた。そして、この67%に当たる598名については、この間に就学支援金計5220万余円が支給されていた一方で、26年4月から6月までの間は就学支援金が支給されていなかった。
しかし、この598名のうち、少なくとも429名(26年7月から27年3月までの間の就学支援金の支給額計3772万余円)については、保護者等の25年度の所得割額(24年の収入に対する所得割額)が304,200円以上であったため、受給資格の認定等を申請しなかったり、申請したが不認定となったりしたことにより、26年4月から6月までの間の就学支援金は支給されていなかった。
上記について、事例を示すと次のとおりである。
<事例3>
東京都は、平成25年1月1日には保護者等が国内に在住していたが、25年中に国外在住となった生徒267名に対して、26年度に就学支援金計2415万余円を支給していた。
都は、この267名のうち246名(92%)については、保護者等の25年度の所得割額(24年の収入に対する所得割額)が304,200円以上であったことから、生徒が受給資格の認定等を申請しなかったり、申請したが不認定となったりしていたため、26年4月から6月までの間の就学支援金を支給していなかったが、25年中に保護者等が国外在住となったため26年度の所得割額(25年の収入に対する所得割額)が存在しないことから、26年7月から27年3月までの間の就学支援金について、課税証明書等の提出がなくても受給資格の認定等を行い就学支援金計2162万余円を支給していた。
25年の国外在住保護者の収入は24年の国内での収入がそのまま反映されるものではないものの、国外在住保護者の中には、25年においても就学支援金の所得制限を上回る収入を得ている者が多数存在していたと考えられるが、これらの保護者等を持つ生徒に対しても、支援金法施行令等の規定に基づき、就学支援金が支給されていた。
国外在住保護者が帰国した場合、市町村民税は、その帰国した年の国外での給与等の収入には課税されず帰国後の国内の所得について課税されることとなる。このため、帰国の時期が年末に近い場合は、帰国後から年末までの期間が短期間となることから、所得割額が著しく低い額となる場合がある。
そこで、前記4,552名のうち、25年1月1日には保護者等が国外に在住していたため25年度の課税証明書等の提出がなかった生徒であって、保護者等が25年中に帰国していた21都府県の641名についてみたところ、表4のとおり、399名(62%)は、26年度の所得割額が304,200円未満であったとして、当該所得割額に基づき26年7月から27年3月までの間に就学支援金計4271万余円(交付金同額)が支給されていた。そして、この641名のうち、保護者等の帰国時期が確認できた120名の帰国時期と就学支援金の支給状況の関係についてみたところ、帰国の時期が遅くなるほど、所得割額が低くなり、所得制限対象者が少なくなって、就学支援金が支給された生徒の割合が高くなっていた。このように、国外在住保護者の帰国した年の収入に対する所得割額については、保護者等の経済状況が必ずしも適切に反映されたものとなっていないが、就学支援金はこの所得割額に基づき支給されている。
表4 国外在住保護者が平成25年中に帰国していた生徒への26年7月から27年3月までの間の就学支援金の支給状況等
就学支援金の支給状況 | 生徒数(割合) | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
うち、保護者等の帰国時期が確認できた生徒120名 | ||||||
25年1月から3月までの間 | 25年4月から6月までの間 | 25年7月から9月までの間 | 25年10月から12月までの間 | |||
生徒数(割合) | 生徒数(割合) | 生徒数(割合) | 生徒数(割合) | |||
就学支援金が支給されていた生徒
保護者等の所得割額の平均額 |
399(62%) | 27(65%) | 25(89%) | 28(96%) | 22(100%) | |
107,365円 | 180,078円 | 146,290円 | 82,498円 | 27,186円 | ||
就学支援金が支給されていなかった生徒 | 242(37%) | 14(34%) | 3(10%) | 1(3%) | 0(0%) | |
うち、保護者等の所得割額が304,200円以上であるとして就学支援金の支給の申請をしなかったり、申請して不認定となったりしていた生徒 | 186 | 14 | 3 | 1 | 0 | |
計 | 641 | 41 | 28 | 29 | 22 |
(是正改善及び改善を必要とする事態)
就学支援金の支給に当たり、受給資格の認定等を行う際に学校設置者が行った確認結果の妥当性についての検証を行っていない事態及び就学支援金を充てるべき授業料債権が存在しないのに生徒に就学支援金が速やかに引き渡されていない事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。また、国外在住保護者の収入を考慮することなく受給資格の認定等を行っている事態は、在住先の税制や為替の影響等の事情があるとしても、生徒の保護者等が国内に在住している場合と国外に在住している場合との間の公平性及び厳しい財政状況の下で限られた財源を有効活用するために所得制限を設けた支援金法等の趣旨に鑑みて適切ではなく、改善の要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、学校設置者における高等学校等就学支援金制度への理解が十分でないことにもよるが、次のことなどによると認められる。
高等学校等就学支援金制度は、改正法の施行により公立高等学校に在学する生徒も支給の対象となるなど支給の対象が拡大しており、高校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与するため、就学支援金を適切かつ公平に支給することの重要性は一層高まっている。また、引き続き多くの保護者等が国外に在住することが見込まれる。そして、29年4月には改正法の施行から3年が経過することから、貴省において、衆議院及び参議院での附帯決議により、政策の効果を検証した上で必要な措置を講ずることが求められている。
ついては、貴省において、就学支援金の支給が適切かつ公平に行われるよう、次のとおり是正改善の処置を求め、及び意見を表示する。