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雇用保険の特定求職者雇用開発助成金の支給が適正でなかったもの[12労働局](47)


会計名及び科目
労働保険特別会計(雇用勘定) (項)高齢者等雇用安定・促進費
部局等
12労働局
支給の相手方
22事業主
不当と認める特定求職者雇用開発助成金
(1) 特定就職困難者雇用開発助成金
(2) 高年齢者雇用開発特別奨励金
(3) 被災者雇用開発助成金
特定求職者雇用開発助成金の支給額の合計
(1) 88,093,835円(平成23年度~26年度)
(2) 1,050,000円(平成25、26両年度)
(3) 3,350,085円(平成24、25両年度)
計 92,493,920円
不当と認める支給額
(1) 26,310,191円(平成24年度~26年度)
(2) 600,000円(平成25、26両年度)
(3) 1,804,026円(平成24、25両年度)
計 28,714,217円

1 保険給付の概要

(1) 特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金は、雇用保険(後掲202ページの「雇用保険の失業等給付金の支給が適正でなかったもの」参照)で行う事業のうちの雇用安定事業の一環として、雇用保険法(昭和49年法律第116号)等に基づき、特定の求職者(60歳以上65歳未満の高年齢者や障害者等の就職が特に困難な者(以下「就職困難者」という。)、65歳以上の離職者、東日本大震災(平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(同月12日に発生した長野県北部を震源とする地震を含む。)及びこれに伴う原子力発電所の事故による災害をいう。)による離職者等をいう。)の雇用機会の増大及び雇用の安定を図るために、特定の求職者を雇い入れた事業主に対して、当該雇用労働者の賃金の一部に相当する額を助成するもので、特定就職困難者雇用開発助成金(以下「就職困難者助成金」という。)、高年齢者雇用開発特別奨励金(以下「高年齢者奨励金」という。)及び被災者雇用開発助成金(以下「被災者助成金」という。)の三つがある。

(2) 特定求職者雇用開発助成金の支給

ア 就職困難者助成金の支給要件は、事業主が就職困難者を公共職業安定所等(以下「安定所等」という。)の紹介により新たに継続して雇用する労働者として雇い入れることなどとなっている。

イ 高年齢者奨励金の支給要件は、事業主が雇入れ日における満年齢が65歳以上の離職者を安定所等の紹介により、新たに1週間の所定労働時間が20時間以上かつ1年以上継続して雇用する労働者として雇い入れることなどとなっている。

ウ 被災者助成金の支給要件は、事業主が東日本大震災の被災地域における被災離職者等を安定所等の紹介により、新たに1年以上継続して雇用することが見込まれる労働者として雇い入れることなどとなっている。

そして、支給額は、就職困難者助成金の場合、原則として、表1に記載のとおりとなっていて、高年齢者奨励金及び被災者助成金の場合、原則として、表2に記載のとおりとなっている。

表1 就職困難者助成金の支給額

  区分 企業規模 第1期
支給額
第2期
支給額
第3期
支給額
第4期
支給額
支給総額 支給回数
短時間労働者以外 60歳以上65歳未満の高年齢者等 中小企業事業主以外の事業主 25万円 25万円 50万円 2回
中小企業事業主 45万円 45万円 90万円 2回
身体障害者及び知的障害者 中小企業事業主以外の事業主 25万円 25万円 50万円 2回
中小企業事業主 45万円 45万円 45万円 135万円 3回
重度障害者等 中小企業事業主以外の事業主 33万円 33万円 34万円 100万円 3回
中小企業事業主 60万円 60万円 60万円 60万円 240万円 4回
短時間労働者 下記の区分に該当しない、労働時間が週20時間以上30時間未満の短時間労働者 中小企業事業主以外の事業主 15万円 15万円 30万円 2回
中小企業事業主 30万円 30万円 60万円 2回
労働時間が週20時間以上30時間未満の障害者 中小企業事業主以外の事業主 15万円 15万円 30万円 2回
中小企業事業主 30万円 30万円 30万円 90万円 3回
(注)
雇入れ日から起算した最初の6か月を第1期、以後6か月ごとに第2期、第3期、第4期とする。

表2 高年齢者奨励金及び被災者助成金の支給額

区分 企業規模 第1期
支給額
第2期
支給額
支給総額 支給回数
下記の区分に該当しない者 中小企業事業主以外の事業主 25万円 25万円 50万円 2回
中小企業事業主 45万円 45万円 90万円 2回
労働時間が週20時間以上30時間未満の短時間労働者 中小企業事業主以外の事業主 15万円 15万円 30万円 2回
中小企業事業主 30万円 30万円 60万円 2回
(注)
雇入れ日から起算した最初の6か月を第1期、次の6か月を第2期とする。

特定求職者雇用開発助成金の支給を受けようとする事業主は、当該助成金に係る支給申請書及び支給要件を満たした労働者に係る出勤簿等の添付書類を都道府県労働局(以下「労働局」という。)に提出することとなっている。そして、労働局は、支給申請書等に記載されている当該労働者の氏名、生年月日、雇用年月日、賃金の支払、事業主の過去の不正受給の有無等を審査した上で、支給決定を行い、これに基づいて特定求職者雇用開発助成金の支給を行うこととなっている。また、労働局は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない支給を受け、又は受けようとした事業主に対して、支給決定の取消しを行い、又は不支給とすることなどとなっている。

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、事業主に対する特定求職者雇用開発助成金の支給決定が適正に行われているかに着眼して、全国47労働局のうち、17労働局において会計実地検査を行い、22年度から26年度までの間に特定求職者雇用開発助成金の支給を受けた事業主から286事業主を選定して、特定求職者雇用開発助成金の支給の適否について検査した。

検査に当たっては、事業主から提出された支給申請書等の書類により会計実地検査を行い、適正でないと思われる事態があった場合には、更に当該労働局に調査及び報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、12労働局管内において23年度から26年度までの間に特定求職者雇用開発助成金の支給を受けた22事業主は、既に雇い入れている者又は事実上雇入れが決定している者に形式的に公共職業安定所の紹介を受けさせて、その紹介により雇い入れたこととして、特定求職者雇用開発助成金の支給を申請するなどしており、これら22事業主に対する特定求職者雇用開発助成金の支給額計92,493,920円(就職困難者助成金88,093,835円、高年齢者奨励金1,050,000円、被災者助成金3,350,085円)のうち計28,714,217円(就職困難者助成金26,310,191円、高年齢者奨励金600,000円、被災者助成金1,804,026円)は支給の要件を満たしていなかったもので支給が適正でなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったり、制度を十分に理解していなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違していたのに、上記の12労働局において、これに対する調査確認が十分でないまま支給決定を行っていたことによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

北海道労働局は、事業主Aから、就職困難者Bを平成24年6月に旭川公共職業安定所の紹介を受けて同年7月に雇い入れたとする支給申請書の提出を受けて、これに基づき、就職困難者助成金2,400,000円を事業主Aに支給していた。

しかし、実際には、就職困難者Bは同年3月から既に就労しており、事業主Aは就職困難者Bに形式的に同公共職業安定所の紹介を受けさせていたことから、就職困難者Bは就職困難者助成金の対象とならず、就職困難者助成金2,400,000円の全額が支給の要件を満たしていなかった。

なお、これらの適正でなかった支給額については、本院の指摘により、全て返還の処置が執られた。

これらの適正でなかった支給額を労働局ごとに示すと次のとおりである。

労働局名 本院の調査に係る事業主数 不適正受給事業主数 左の事業主に支給した特定求職者雇用開発助成金 左のうち不当と認める特定求職者雇用開発助成金
      千円 千円
北海道 21 1 3,300 2,400
青森 15 1 2,865 900
茨城 23 1 1,950 600
3,350 1,804
埼玉 27 6 48,002 9,772
大阪 10 3 7,455 4,078
1,050 600
兵庫 8 1 1,800 900
奈良 7 1 2,080 900
和歌山 34 1 2,400 1,800
香川 18 1 2,700 600
福岡 13 1 1,800 900
長崎 20 4 8,420 2,559
大分 8 1 5,319 900
204 22 88,093 26,310
1,050 600
3,350 1,804
合計     92,493 28,714
(注)
「左の事業主に支給した特定求職者雇用開発助成金」及び「左のうち不当と認める特定求職者雇用開発助成金」の上段は就職困難者助成金に係る分、中段は高年齢者奨励金に係る分、下段は被災者助成金に係る分である。