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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
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(3)緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](101)


1件 不当と認める国庫補助金 29,169,000円

緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた平成21年度緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発能第0605001号)等に基づき、中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)が、同交付金を原資として、緊急人材育成・就職支援基金(以下「基金」という。)を造成し、緊急人材育成・就職支援基金事業(以下「基金事業」という。)を実施するために国が交付するものである。

協会は、同省が定めた緊急人材育成・就職支援基金事業実施要領(平成25年厚生労働省発能0306第1号)に基づき、基金事業の一つとして若者育成支援事業を実施している。

上記の若者育成支援事業において支給される若年者人材育成・定着支援奨励金(以下「奨励金」という。)は、若年者人材育成・定着支援奨励金(若者チャレンジ奨励金)業務実施要領(平成25年職発0307第2号、能発0307第1号。以下「実施要領」という。)等に基づき、若年者の正規雇用労働者としての就職等の雇用の安定化等を図ることを目的として、非正規雇用の若年者に対して職業能力の向上を目指した実践的な職業訓練(以下「訓練」という。)を実施した事業主等を助成するものである。そして、協会は、基金を取り崩して事業主に奨励金を支給している。

奨励金には訓練奨励金と正社員雇用奨励金がある。このうち、訓練奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若年者に対して、事業主が、訓練実施時間数等についてあらかじめ管轄の都道府県労働局(以下「労働局」という。)の確認を受けた訓練実施計画に基づき、訓練終了後に自社の正社員として雇用することを前提として、労働者に仕事をさせながら行う訓練と、通常の業務を離れて行う訓練とを組み合わせて実施した場合に、訓練実施期間に訓練受講者1人につき1月当たり15万円を事業主に支給するものである。

実施要領等によれば、訓練奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練の終了後、訓練実施時間数、実施内容等を記載した実施状況報告書、訓練受講者に係る雇用契約書、出勤簿、賃金台帳等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとされている。そして、事業主から支給申請書の提出を受けた労働局は、事業主の申請内容が訓練奨励金の支給要件を満たしているかなどについて審査を行い、その審査結果を協会に送付し、協会は、労働局の審査結果に基づいて訓練奨励金の支給決定を行い、基金から支給決定額を取り崩して訓練奨励金を支給することとされている。

そして、訓練奨励金の支給要件は、訓練が実施されていること、期間の定めのある労働契約を締結する者(以下「有期契約労働者」という。)を訓練の対象者とすることなどとされている。

また、協会は、偽りその他不正の行為により本来受けることのできない奨励金の支給を受け、又は受けようとした事業主であると労働局が認める者については、労働局からの通知に基づき、奨励金を不支給とし又はその支給を取り消すこととされている。

本院が、15労働局(注1)において、平成25年度から27年度までの間に、協会の支給決定に先立ち支給申請書等の記載内容について各労働局が審査を行った訓練奨励金を対象に会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
交付金の交付年度 支給要件確認庁
(労働局)
訓練奨励金の支給年度 不適正な訓練奨励金支給額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
            千円 千円 千円
(101) 厚生労働本省 中央職業能力開発協会 21、22、24 4労働局 25、26 29,169 29,169 29,169

4労働局(注2)は、6事業主から、所定の訓練を実施したとする支給申請書及び関係書類の提出を受け、訓練奨励金の支給の要件を満たしているとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、平成25、26両年度に訓練奨励金計29,169,000円を6事業主に支給していた。

しかし、6事業主は、訓練を実施していないのに実施したこととしたり、正社員として雇用している者を有期契約労働者であるとしたりする虚偽の内容の関係書類を支給申請書に添付して労働局に提出するなどしていた。したがって、上記訓練奨励金の支給は適正なものではなく、計29,169,000円(交付金相当額同額)が基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主が誠実でなかったり、制度を十分に理解していなかったりしていたため、支給申請書等の記載内容が事実と相違するなどしていたのに、協会の支給決定に先立ち4労働局が行った調査確認が十分でなかったことによると認められる。

(注1)
15 労働局  北海道、群馬、千葉、東京、神奈川、新潟、福井、愛知、三重、大阪、岡山、広島、福岡、長崎、鹿児島各労働局
(注2)
4労働局  千葉、愛知、大阪、福岡各労働局