ページトップ
  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 不当事項|
  • 補助金

(8)身体障害者体育等振興費補助金が過大に交付されていたもの[厚生労働本省](177)


1件 不当と認める国庫補助金 29,957,000円

身体障害者体育等振興費補助金は、障害者スポーツの振興を図ることなどを目的として、公益財団法人日本障害者スポーツ協会(平成23年11月30日以前は財団法人日本障害者スポーツ協会、26年8月6日以降は公益財団法人日本障がい者スポーツ協会。以下「協会」という。)が行う総合国際競技大会指定強化事業(以下「指定強化事業」という。)等に要する経費に対して、その一部を国が補助するものである。

指定強化事業に係る国庫補助金の交付額は、「身体障害者体育等振興費の国庫補助について」(平成18年厚生労働省発障第0614002号)によれば、指定強化事業に係る基準額と指定強化事業に必要な委託料等の補助対象経費の実支出額とを比較して少ない方の額を選定して、選定された額と、指定強化事業の総事業費からその他の収入額を控除した額とを比較して少ない方の額とすることとされている。

協会は、指定強化事業の一環として、指定強化選手・競技団体国内外強化活動費助成事業(以下「選手強化事業」という。)を、日本パラリンピック委員会に加盟する障害者競技団体(以下「スポーツ団体」という。)に委託するなどして実施している。その際、協会は、各スポーツ団体との間で委託契約及び委託料の対象費目等を定めた協定をそれぞれ締結しており、スポーツ団体は、委託契約書、協定書及び協会がスポーツ団体の担当者向けに作成した「指定強化選手・競技団体国内外強化活動費助成事業(国庫補助事業)事務の手引き」(以下、これらを合わせて「委託契約書等」という。)に基づいて受託した選手強化事業を実施することとなっている。

委託契約書等によれば、選手強化事業に必要な委託料は、選手等の渡航費、滞在費(海外における宿泊費。以下同じ。)、国内交通費、宿泊費等の対象費目について実際に要した費用等の額とすることとされ、費目によっては限度額が設けられるなどしている。そして、スポーツ団体は、実際に要した費用の根拠となる精算明細を明らかにすることとされており、業者が発行した領収書、旅費等の受領者が書いた領収書等の証拠書類の写し、その他協会が求める書類等を助成事業完了報告書(以下「完了報告書」という。)に添付して提出することとされている。

本院が、協会において、13スポーツ団体に対する選手強化事業の委託に係る書類等により会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

  部局等 補助事業者
(事業主体)
補助事業 年度 国庫補助金交付額 不当と認める国庫補助金 摘要
          千円 千円  
(177) 厚生労働本省 公益財団法人日本障害者スポーツ協会 総合国際競技大会指定強化 22~24 1,059,047 29,957 補助対象経費を過大に算定していたもの

5スポーツ団体(注)は、平成22年度から24年度までの間に協会から受託した選手強化事業に係る委託契約計18件において、旅行会社や選手等に対して渡航費、宿泊費、滞在費等を支払ったとする領収書等に基づき計165,827,889円を実際に要した費用とした上で、限度額を超えるなどしていて委託料の対象とならない額を控除するなどした額計150,394,700円を委託料相当額であるとして、協会に完了報告書を提出していた。そして、協会は、これに基づいて同額の委託料計150,394,700円を5スポーツ団体に支払っていた。

(注)
5スポーツ団体  日本ブラインドサッカー協会(平成27年10月27日以降は特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会)、特定非営利活動法人日本視覚障害者柔道連盟、日本車椅子バスケットボール連盟(25年8月20日以降は一般社団法人日本車椅子バスケットボール連盟)、特定非営利活動法人日本障害者スキー連盟、一般社団法人日本デフバレーボール協会

しかし、5スポーツ団体は、上記の実際に要した費用としていた計165,827,889円に、(ア)選手等に係る渡航費等を旅行会社に対して支払った後に、一部の選手等が勤務している会社等が渡航費等を旅行会社に対して別途支払ったことから、旅行会社から当該会社等の支払額と同額の返金を受けていて、その結果、自らが実際には負担していない額計23,486,412円を含めたり、(イ)宿泊費等を直接宿泊施設等に支払っていたにもかかわらず、それよりも高額の宿泊費等を選手等の個人に対して支払ったとするなど事実と異なる領収書に基づき、自らが実際には負担していない額計12,643,091円を含めたりなどしていた。

そこで、実際に要した費用に基づくなどして協会が5スポーツ団体に対して支払うべき適正な委託料を修正計算すると、のとおり、計120,429,312円となり、計29,965,388円が過大に支払われていた。

表 委託契約18件に係る支払われていた委託料及び適正な委託料

スポーツ団体名 件数 支払われていた委託料(A) 適正な委託料
(B)
差額
(A)-(B)
主な態様
日本ブラインドサッカー協会 3件 9,220,510円 6,395,800円 2,824,710円 (イ)
特定非営利活動法人日本視覚障害者柔道連盟 3件 24,809,081円 22,992,640円 1,816,441円 (イ)
日本車椅子バスケットボール連盟 2件 27,177,787円 26,755,333円 422,454円 (イ)
特定非営利活動法人日本障害者スキー連盟 3件 41,113,120円 19,436,664円 21,676,456円 (ア)
一般社団法人日本デフバレーボール協会 7件 48,074,202円 44,848,875円 3,225,327円 (イ)
5スポーツ団体計 18件 150,394,700円 120,429,312円 29,965,388円
(注)
態様について、(ア)は旅行会社から返金を受けていて実際には負担していない額を含めていたもの、(イ)は宿泊費等を選手等の個人に支払ったとするなど事実と異なる領収書に基づき、実際には負担していない額を含めていたものである。

したがって、5スポーツ団体に対する適正な委託料に基づくなどして、協会に交付されるべき適正な国庫補助金の額を修正計算すると、計1,029,090,000円となり、国庫補助金計29,957,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、5スポーツ団体が事実に即した証拠書類等に基づく適正な完了報告書を提出していなかったのに、協会において、完了報告書の審査及び確認が十分でなかったり、5スポーツ団体に対して、委託契約書等を遵守し、事実に即した証拠書類等に基づいて完了報告書を提出する必要があることについての指導等が十分でなかったりしたことなどによると認められる。