9件 不当と認める国庫補助金 147,381,614円
緊急雇用創出事業臨時特例交付金は、厚生労働省が定めた「平成20年度緊急雇用創出事業臨時特例交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130003号)等に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、緊急雇用創出事業臨時特例基金(以下「緊急雇用創出基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、平成20年度から25年度までに計1兆5798億余円が交付されている。
また、ふるさと雇用再生特別交付金は、同省が定めた「平成20年度ふるさと雇用再生特別交付金交付要綱」(平成21年厚生労働省発職第0130002号)に基づき、各都道府県が、同交付金を原資として、ふるさと雇用再生特別基金(以下「ふるさと基金」という。)を造成するために国が交付するものであり、20年度に2500億円が交付されている。
そして、各都道府県及び各市町村等(以下「都道府県等」という。)は、同省が定めた「緊急雇用創出事業実施要領」(平成21年職発第0130008号)等に基づき、緊急雇用創出基金を財源として失業者に対する原則として1年以内の短期の雇用・就業機会を創出して提供するなどの緊急雇用創出事業を、また、同省が定めた「ふるさと雇用再生特別基金事業実施要領」(平成21年職発第0130005号)等に基づき、ふるさと基金を財源として地域の求職者等を雇い入れて、原則として1年以上の長期的な雇用機会を創出するふるさと雇用再生特別基金事業を、それぞれ実施している(以下、緊急雇用創出事業とふるさと雇用再生特別基金事業とを合わせて「基金事業」といい、また、緊急雇用創出事業実施要領とふるさと雇用再生特別基金事業実施要領を合わせて「実施要領」という。)。なお、ふるさと雇用再生特別基金事業の実施は23年度に終了している。
基金事業では、都道府県等が企画した事業を民間企業等に委託して、当該民間企業等(以下「受託者」という。)が公募により失業者を雇い入れて行う事業(以下「委託事業」といい、また、公募により雇用された失業者を「新規雇用者」という。)等が実施されている。都道府県は、自らが委託事業等を実施する場合は、委託費相当額等をそれぞれの基金から取り崩して受託者に支払い、管内の市町村等が委託事業等を実施する場合は、当該市町村等に対して基金を財源とした補助金(補助率10分の10以内)を交付している。
実施要領等によれば、基金事業の対象となる経費は、新規雇用者、既に受託者等に雇用されている者等(以下「既存雇用者」という。)が基金事業に従事した分に係る賃金等の人件費及び基金事業の実施に必要なその他の経費とされている。
本院が、9県(注1)において、9県及びこれらの県から補助金の交付を受けた管内の127市町村が実施した基金事業を対象に会計実地検査を行った結果、8県(注2)及び25市町(注3)が実施した基金事業において、受託者等が、基金事業の対象とならない経費を計上したり、新規雇用者に係る人件費の算出を誤ったりなどしていたため、計147,381,614円(交付金相当額同額)が9県に造成されたそれぞれの基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、上記の9県及び25市町において市町又は受託者から提出された委託事業等に係る実績報告書等の審査が十分でなかったこと、9県において25市町に対する指導監督が十分でなかったこと、厚生労働省において9県に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
宮城県は、緊急雇用創出基金を財源とした委託事業として、平成24年度に、市町村におけるシステム管理の効率化等のために指導や助言を継続的に実施する事業等を行う「市町村クラウド導入等支援業務」を契約金額18,270,000円でA社に委託していた。そして、A社は、本件委託事業に要した経費を18,332,717円とする実績報告書を同県に提出し、これにより同県は、委託費の額を上記の契約金額と同額で確定し、A社に対して同額を支払っていた。
A社は、上記の実績報告書に計上した既存雇用者1名に係る人件費について、本件委託事業に従事した日数を115日とし、これに1日当たりの人件費単価47,250円を乗じて5,433,750円と算出していた。
しかし、業務実績報告書、賃金台帳等により確認したところ、同人が本件委託事業に実際に従事した日数は66.8日であり、また、同人に実際に支払われた給与額に基づく1日当たりの人件費単価は23,625円となっていた。このため、これらを基に同人に係る適正な人件費を算出すると1,578,150円となり、上記の5,433,750円には本件委託事業の対象とならない人件費3,855,600円が計上されていた。また、これに伴い人件費以外の経費についても421,431円が過大に計上されていた。
したがって、上記の過大計上額計4,277,031円を控除して本件委託事業に要した経費を算定すると14,055,686円となり、前記委託費の支払額18,270,000円との差額4,214,314円は基金事業の対象とは認められず、同額が緊急雇用創出基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていた。
以上を事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 | 補助事業者 (事業主体) |
補助事業 | 年度 | 基金造成額 | 左に対する交付金交付額 | 不当と認める基金使用額 | 不当と認める交付金相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(196) | 厚生労働本省 | 宮城県 | 緊急雇用創出基金 | 20~25 | 144,715,600 | 144,715,600 | 9,601 | 9,601 |
(197) | 同 | 秋田県 | 同 | 20~25 | 19,425,000 | 19,425,000 | 22,192 | 22,192 |
(198) | 同 | 埼玉県 | 同 | 20~25 | 34,052,500 | 34,052,500 | 31,214 | 31,214 |
ふるさと基金 | 20 | 5,420,000 | 5,420,000 | 2,474 | 2,474 | |||
小計 | 39,472,500 | 39,472,500 | 33,689 | 33,689 | ||||
(199) | 同 | 石川県 | 緊急雇用創出基金 | 20~25 | 17,856,800 | 17,856,800 | 12,702 | 12,702 |
(200) | 同 | 長野県 | 同 | 20~25 | 25,042,593 | 25,042,593 | 3,659 | 3,659 |
(201) | 同 | 島根県 | 同 | 20~25 | 13,047,600 | 13,047,600 | 7,049 | 7,049 |
ふるさと基金 | 20 | 4,110,000 | 4,110,000 | 5,189 | 5,189 | |||
小計 | 17,157,600 | 17,157,600 | 12,239 | 12,239 | ||||
(202) | 同 | 愛媛県 | 緊急雇用創出基金 | 20~25 | 16,799,100 | 16,799,100 | 18,884 | 18,884 |
(203) | 同 | 福岡県 | 同 | 20~25 | 44,523,400 | 44,523,400 | 10,006 | 10,006 |
(204) | 同 | 沖縄県 | 同 | 20~25 | 22,329,600 | 22,329,600 | 20,347 | 20,347 |
ふるさと基金 | 20 | 7,460,000 | 7,460,000 | 4,058 | 4,058 | |||
小計 | 29,789,600 | 29,789,600 | 24,405 | 24,405 | ||||
(196)―(204)の計 | 354,782,193 | 354,782,193 | 147,381 | 147,381 |