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  • 第3章 個別の検査結果|
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介護給付費に係る国の負担が不当と認められるもの[7都県、4市](219)


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省
(項)介護保険制度運営推進費(平成19年度以前は、(項)老人医療・介護保険給付諸費、(項)国民健康保険助成費)
(項)介護納付金年金特別会計へ繰入(平成19年度以前は、(項)社会保険国庫負担金)
(項)生活保護等対策費(平成26年度以前は、(項)生活保護費)
部局等
7都県、4市
国の負担の根拠
介護保険法(平成9年法律第123号)、健康保険法(大正11年法律第70号)、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)、生活保護法(昭和25年法律第144号)
実施主体
市66、区18、町24、村5、広域連合4、計117実施主体
事業者
22事業者
過大に支払われた介護給付費に係る介護サービスの種類
通所介護、介護福祉施設サービス等
過大に支払われた介護給付費の件数
14,428件(平成18年度~27年度)
過大に支払われた介護給付費の額
72,374,264円(平成18年度~27年度)
不当と認める国の負担額
21,700,361円(平成18年度~27年度)

1 介護給付の概要

(1) 介護保険

介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)となった者に対して、必要な保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)に係る保険給付を行うものであり、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者、当該市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者等が被保険者となっている。

(2) 介護サービス

被保険者が介護保険法に基づき受ける介護サービスには、居宅サービス(注1)、施設サービス及び地域密着型サービス(注2)並びに居宅の要介護状態となった者が利用する居宅サービス等の種類等を定めた計画(以下「居宅サービス計画」という。)の作成等を行う居宅介護支援等がある。また、居宅サービスには通所介護(注3)等が、施設サービスには介護福祉施設サービス(注4)等がある。

そして、被保険者が介護サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。

① 要介護状態等にあること及びその該当する要介護状態等の区分について、市町村の認定を受ける(以下、市町村から要介護状態にあるものとして認定を受けた者を「要介護者」といい、要支援状態にあるものとして認定を受けた者と合わせて「要介護者等」という。)。

② 都道府県知事等の指定を受けた居宅介護支援事業者等が、居宅サービス計画等の介護サービス計画を作成する。

③ 介護サービス計画に基づいて、都道府県知事等の指定等を受けた居宅サービス事業者若しくは介護保険施設又は市町村長の指定を受けた地域密着型サービス事業者(以下、これらと居宅介護支援事業者等を合わせて「介護サービス事業者」という。)において介護サービスを受ける。

(注1)
居宅サービス  居宅サービスには介護予防サービスを含む。
(注2)
地域密着型サービス  地域密着型サービスには地域密着型介護予防サービスを含む。
(注3)
通所介護  居宅の要介護者が、指定通所介護事業所において入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を受けるもの
(注4)
介護福祉施設サービス  指定介護老人福祉施設に入所している要介護者が、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練等を受けるもの

(3) 介護報酬の算定

介護サービス事業者が介護サービスを提供して請求することができる報酬の額(以下「介護報酬」という。)は、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)及び「指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第21号)(以下、両者を合わせて「算定基準」という。)等に基づき、介護サービスの種類の別に定められた単位数に単価(10円から11.26円)を乗ずるなどして算定することとなっている。

(4) 介護給付費

市町村は、介護保険法に基づき、要介護者等が居宅サービス、施設サービス又は地域密着型サービスの提供を受けたときは、原則として、介護報酬の100分の90に相当する額を、また、居宅介護支援等の提供を受けたときは、介護報酬の全額をそれぞれ介護サービス事業者に支払うこととなっている(以下、市町村が支払う介護報酬の額を「介護給付費」という。)。

介護給付費の支払手続は、次のとおりとなっている(図参照)。

① 介護サービス事業者は、要介護者等に提供した介護サービスの内容、金額等を記載した介護給付費請求書等を、市町村から介護給付費に係る審査及び支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)に送付する。

② 国保連合会は、介護サービス事業者から送付された介護給付費請求書等の審査点検を行い、介護給付費を市町村に請求する。

③ 請求を受けた市町村は、金額等を確認した上で、国保連合会を通じて介護サービス事業者に介護給付費を支払う。

図 介護給付費の支払の手続

図 介護給付費の支払の手続 画像

(5) 国の負担

介護給付費は、介護保険法に基づき、100分の50を公費で、100分の50を被保険者の保険料でそれぞれ負担することとなっている。

そして、公費負担として、介護給付費のうち、施設等分(注5)については国が100分の20、都道府県が100分の17.5及び市町村が100分の12.5を負担し、施設等以外の分については国が100分の25、都道府県及び市町村がそれぞれ100分の12.5を負担している。

また、国は、健康保険法(大正11年法律第70号)及び国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づき、社会保険診療報酬支払基金が介護保険の保険者に交付する介護給付費交付金等の財源として医療保険者(注6)が同基金に納付する介護給付費納付金に要する費用の額の一部を負担している。

(注5)
施設等分  施設介護サービス費、指定施設サービス等に係る特定入所者介護サービス費、特定施設入居者生活介護費、介護予防特定施設入居者生活介護費等
(注6)
医療保険者  医療保険各法の規定により医療に関する給付を行う市町村、全国健康保険協会、国民健康保険組合等

2 検査の結果

(1) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、合規性等の観点から、介護報酬の算定が適正に行われているかに着眼して、13都道県及び9市において、144事業者に対する介護給付費の支払について、介護給付費請求書等により会計実地検査を行った。そして、介護給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(2) 検査の結果

検査の結果、7都県及び4市に所在する22事業者に対して17都道府県の117市区町村等の実施主体が行った平成18年度から27年度までの間における介護給付費の支払が計14,428件、計72,374,264円過大となっていて、これに対する国の負担額21,700,361円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。

これらの事態について、介護サービスの種類の別に示すと次のとおりである。なお、同一の事業者が複数の事態に該当しているものがある。

ア 通所介護

算定基準等によれば、通所介護については、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数による事業所規模が300人以内の場合は小規模型通所介護費、300人超750人以内(20年度までは300人超900人以内)の場合は通常規模型通所介護費、750人超900人以内の場合は大規模型通所介護費(I)及び900人超の場合は大規模型通所介護費(II)とし、それぞれの事業所規模ごとの区分等に応じて、小規模の事業所については大規模の事業所よりも高く定められた単位数等により介護報酬を算定することとされている。

しかし、9事業者は、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人を超えていたのに、通常規模型通所介護費の区分によらずに小規模型通所介護費の区分により単位数を算定していた。また、3事業者は、750人を超えていたのに、大規模型通所介護費(I)の区分によらずに通常規模型通所介護費の区分により算定していた。さらに、2事業者は、900人を超えていたのに、大規模型通所介護費(II)の区分によらずに大規模型通所介護費(I)の区分により算定していた。

このため、9,160件の請求に対して55市区町村等が支払った介護給付費が計46,461,193円過大となっていて、これに対する国の負担額14,292,662円は負担の必要がなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

事業者Aは、平成20年1月に静岡県から通所介護事業所の指定を受けて通所介護を提供している。そして、22年4月から23年3月までの間に提供した通所介護に係る介護報酬について、前年度の1月当たりの平均利用延べ人員数が300人以内であるとして、小規模型通所介護費の区分により算定していた。しかし、事業者Aの前年度における1月当たりの平均利用延べ人員数は、実際には319人となっていた。したがって、22年4月から23年3月までの間に提供した通所介護に係る介護報酬については、通常規模型通所介護費の区分により算定する必要があった。

このため、601件の請求に対して3市が支払った介護給付費計7,524,772円が過大となっていた。

イ 介護福祉施設サービス

算定基準等によれば、介護福祉施設サービスについては、多床室に入所させるとその者の著しい精神症状等により同室の他の要介護者の心身の状況に重大な影響を及ぼすおそれがあるとして個室への入所が必要であるとの医師の判断により個室を利用する要介護者であるなどの場合には、個室の単位数よりも単位数が高く定められた多床室の単位数により介護報酬を算定することとされている。

しかし、4事業者は、医師の判断によらずに施設の都合等で個室を利用した場合においても多床室の単位数により介護報酬を算定していた。

このため、529件の請求に対して9市町等が支払った介護給付費が計8,975,566円過大となっていて、これに対する国の負担額2,393,540円は負担の必要がなかった。

ウ その他の介護サービス

ア及びイの介護サービスのほか、介護療養施設サービス、介護保健施設サービス、短期入所生活介護、通所リハビリテーション及び短期入所療養介護の5介護サービスについて、7事業者は、単位数の算定を誤り、介護報酬を過大に算定していた。

このため、4,739件の請求に対して60市区町村等が支払った介護給付費が計16,937,505円過大となっていて、これに対する国の負担額5,014,159円は負担の必要がなかった。

このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市区町村、広域連合及び国保連合会において介護給付費の請求に対する審査点検が十分でなかったこと、都県等において事業者に対して算定基準等の内容を十分に周知していないなど指導が十分でなかったことなどによると認められる。

以上を事業者の所在する都県等別に示すと次のとおりである。

都県等名 実施主体
(事業者数)
年度 過大に支払われた介護給付費の件数 過大に支払われた介護給付費 不当と認める国の負担額 摘要
      千円 千円  
札幌市 2市町(1) 26、27 647 2,373 726
福島県 22市町村(3) 25~27 3,735 7,237 2,204 ア、ウ
いわき市 6市町(1) 25、26 185 6,088 1,907
埼玉県 11市区(2) 24、25 1,426 4,482 1,372
東京都 40市区町(1) 23~25 956 3,349 1,143
静岡県 8市町(3) 22~24 2,680 12,860 3,970
三重県 15市町等(6) 18~22 2,345 20,621 5,672 イ、ウ
滋賀県 8市町(1) 24、25 196 3,233 987
大阪市 1市(1) 24、25 341 3,959 1,209
和歌山市 5市町(1) 26 486 5,364 1,641
沖縄県 3市等(2) 23、24 1,431 2,803 863
117実施主体(22) 18~27 14,428 72,374 21,700  
注(1)
計欄の実施主体数は、都県等の間で実施主体が重複することがあるため、各都県等の実施主体数を合計したものとは一致しない。
注(2)
摘要欄のア、イ及びウは、2(2)検査の結果の介護サービスの種類の別に対応している。