自立支援給付は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。平成25年3月31日以前は障害者自立支援法)に基づき、障害者及び障害児が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、市町村(特別区を含む。以下同じ。)が必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行うものである。
自立支援給付のうち、障害福祉サービスに係る給付費の支給には、介護給付費及び訓練等給付費(以下、これらを合わせて「介護給付費等」という。)があり、介護給付費の支給の対象には生活介護(注1)、施設入所支援等がある。
そして、障害者及び障害児が障害福祉サービスを受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。
① 障害者又は障害児の保護者は、居住地の市町村から介護給付費等を支給する旨の決定を受ける。
② 支給決定を受けた障害者又は障害児の保護者(以下、これらを合わせて「支給決定障害者等」という。)は、支給決定の有効期間内に都道府県知事等の指定を受けた指定障害福祉サービス事業者(以下「事業者」という。)の事業所において、障害福祉サービスを受ける。
事業者が障害福祉サービスを提供して請求することができる費用の額は、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成18年厚生労働省告示第523号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害福祉サービスの種類ごとに定められた単位数に単価(10円から11.32円)を乗じて算定することとなっている。
そして、生活介護等の各サービスに係る介護給付費等は、事業者が過度に利用者を受け入れることを未然に防止して、適正な障害福祉サービスの提供を確保するために、算定基準等に基づき、サービスの利用定員が12人以上の事業所において、直近の過去3か月間のサービスの利用者の延べ人数が当該サービスの利用定員に開所日数を乗じて得た数に100分の125を乗じて得た数等(以下「受入可能人数」という。)を超えるなどの場合には、各種加算がなされる前の基本報酬の単位数に100分の70を乗じて得た単位数により算定することとなっている。
また、手厚い人員配置を行う事業所を評価するために、算定基準等に基づき、常勤換算方法(注2)による従業者の員数が前年度の利用者数の平均値を所定の区分に応じて定められた値で除して得た数以上であるなどの場合には、当該区分に応じた人員配置体制加算の単位数を基本報酬の単位数に合算した単位数により算定することとなっている。
市町村は、支給決定障害者等が事業者から障害福祉サービスの提供を受けたときは、これに係る介護給付費等を事業者に支払うこととなっており、介護給付費等は、障害福祉サービスに要した費用の額から当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。
介護給付費等の支払手続については、①事業者が介護給付費等を記載した介護給付費・訓練等給付費等請求書等(以下「請求書等」という。)を市町村から介護給付費等に係る支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会に送付し、②同連合会は、事業者から送付された請求書等の点検を行い、介護給付費等を市町村に請求して、③請求を受けた市町村は、金額等を算定基準等に照らして審査した上で、同連合会を通じて事業者に介護給付費等を支払うこととなっている。
そして、国は、障害福祉サービスに要した費用について市町村が支弁した介護給付費等の100分の50を負担している。
本院は、合規性等の観点から、介護給付費等の算定が適正に行われているかに着眼して、26都道府県において、1,366事業者に対する介護給付費等の支払について、介護給付費等の請求に係る関係書類等により会計実地検査を行った。そして、介護給付費等の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査の結果、2県及び1市に所在する5事業者は、事業所における直近の過去3か月間のサービスの利用者の延べ人数が受入可能人数を超えるなどしていたのに基本報酬の単位数に100分の70を乗ずることなく単位数を算定していたり、常勤換算方法による従業者の員数が前年度の利用者数の平均値を所定の区分に応じて定められた値で除して得た数を下回っていたのに適切な区分によらない人員配置体制加算の単位数を算定していたりしていた。このため、22年度から26年度までの間に、上記の5事業者に対して18市区町が行った介護給付費の支払が計1,238件、計21,326,080円過大となっていて、これに対する国の負担額10,663,039円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市区町において介護給付費の算定について審査が十分でなかったこと、県等において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
奈良県奈良市に所在する事業者Aは、生活介護の提供を行った事業所において、平成25年6月から26年3月までの間のうち25年8月を除く9か月に、常勤換算方法による従業者の員数が前年度の利用者数の平均値を所定の区分に応じて定められた値で除して得た数を下回っていたのに、その間に障害福祉サービスの提供を受けた利用者に係る395件について、適切な区分によらない人員配置体制加算の単位数を基本報酬の単位数に合算した単位数により介護給付費を算定していた。
このため、395件の請求に対して3市が支払った介護給付費が計8,170,884円過大となっていて、これに対する国の負担額4,085,442円は負担の必要がなかった。
以上を事業者の所在する県等別に示すと次のとおりである。
県等名 | 実施主体 (事業者数) |
年度 | 過大に支払われた介護給付費の件数 | 過大に支払われた介護給付費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
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件 | 千円 | 千円 | ||||
埼玉県 | 13市区町(2) | 25、26 | 88 | 4,776 | 2,388 | 生活介護 |
奈良県 | 2市町(2) | 22~26 | 755 | 8,378 | 4,189 | 同 |
奈良市 | 3市(1) | 25、26 | 395 | 8,170 | 4,085 | 同 |
計 | 18市区町(5) | 22~26 | 1,238 | 21,326 | 10,663 |