ページトップ
  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第9 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)国立更生援護施設において利用者等の食費等負担額が基準費用額等に基づいた適切なものとなるように、食費等の単価の算定方法を見直すよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (部)雑収入 (款)諸収入 (項)雑入
部局等
厚生労働本省
検査の対象
厚生労働本省、国立障害者リハビリテーションセンター、国立更生援護施設
食費等負担額の概要
国立更生援護施設における食費及び光熱水費について、利用者等が国立更生援護施設に支払うもの
国立更生援護施設が利用者等に請求した食費等負担額(1)
2億4686万余円(平成26、27両年度)
基準費用額等に基づいて算定した食費等負担額により試算した収入額(2)
2億9309万余円(平成26、27両年度)
(1)と(2)との差額
4623万円

1 国立更生援護施設における食費等に係る利用者等の負担額等の概要

(1) 国立更生援護施設の概要

厚生労働省は、障害者の自立及び社会参加を支援するために、医療から職業訓練まで一貫した体系の下に、障害者の生活機能全体の維持・回復のための先進的・総合的な保健・医療・福祉サービスの提供等を行う施設等機関として、国立障害者リハビリテーションセンター(以下「センター」という。)を設置している。センターには、医学的リハビリテーション等を提供する病院のほか自立支援局があり、自立支援局に設置された7施設(注1)(以下「国立更生援護施設」という。)は、障害福祉サービス等のうちの自立訓練、就労移行支援、施設入所支援及び障害児入所支援を提供している。

(注1)
7施設  国立更生援護施設7施設のうち、埼玉県所沢市に設置されている施設の名称は「国立障害者リハビリテーションセンター」であるが、センターの名称と同一であることから、両者を区別するために、所沢市の国立更生援護施設については、以下「所沢センター」と表記する。

国立更生援護施設には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号。以下「障害者総合支援法」という。)に基づく指定障害者支援施設に区分される6施設(所沢センター、函館、神戸、福岡各視力障害センター、伊東、別府両重度障害者センター)と、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に基づく指定障害児入所施設に区分される1施設(秩父学園)がある。そして、施設入所支援は、施設に通所して自立訓練等の提供を受けることが困難な障害者に対して、宿舎を提供し、主として夜間において、入浴、排せつ又は食事の介護等を供与するものであり、障害児入所支援は、障害児に対して保護、日常生活の指導及び独立自活に必要な知識技能の付与等を行うものである。

(2) 指定障害者支援施設等における食費等に係る利用者等の負担額

指定障害者支援施設及び指定障害児入所施設は、都道府県知事の指定を受けて、社会福祉法人、地方公共団体等が運営するものである。

 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害者支援施設等の人員、設備及び運営に関する基準」(平成18年厚生労働省令第172号)等によれば、指定障害者支援施設又は指定障害児入所施設は、施設入所支援又は障害児入所支援を提供した場合、市町村から介護給付費等の支給決定を受けた障害者(以下「支給決定障害者」という。)又は都道府県から入所給付決定を受けた障害児の保護者(以下、支給決定障害者と合わせて「利用者等」という。)から食費及び光熱水費(以下、これらを合わせて「食費等」という。)の支払を受けることができるなどとされている。そして、「食事の提供に要する費用、光熱水費及び居室の提供に要する費用に係る利用料等に関する指針」(平成18年厚生労働省告示第545号)等によれば、食費に係る利用者等の負担額は、指定障害者支援施設等における食材料費及び調理等に係る費用に相当する額を基本とすること、また、光熱水費に係る利用者等の負担額は、光熱水費に相当する額とすることなどとされている。

このように、支給決定障害者等が指定障害者支援施設等に入所して施設入所支援等を受ける場合には、原則として、利用者等が食費等を負担することとなっている。

また、利用者等の食費等に係る負担額(以下「食費等負担額」という。)については、障害者総合支援法等に基づき、市町村から支給決定障害者のうち低所得者等に対して、利用者等の経済的負担を軽減するための給付費を支給することとなっているが、利用者等が指定障害者支援施設等に対して食費等負担額として指定障害者支援施設等における食事の提供及び居住に要する平均的な費用の額を勘案して厚生労働大臣が定める費用の額(注2)(以下「基準費用額」という。)を超える金額を支払った場合には、当該給付費を支給しないこととなっている。

(注2)
厚生労働大臣が定める費用の額  「障害者自立支援法施行令第21条の3第1項の規定に基づき食費等の基準費用額として厚生労働大臣が定める費用の額」(平成18年厚生労働省告示第531号)等に基づき、平成18年10月以降は月額58,000円となっていたが、その後、27年度の障害福祉サービス等の報酬改定の際に、指定障害者支援施設等における食費等の実態調査等を踏まえた見直しが行われて、27年4月以降は月額53,500円となっている。

(3) 国立更生援護施設における食費等に係る利用者等の負担額

厚生労働本省は、前記の基準等を受けて、国立更生援護施設における利用者等の食費等負担額の算定方法について定めており、平成19年に示した「国立更生援護施設における食費・光熱水費の考え方について」等によれば、支給決定障害者等が国立更生援護施設から施設入所支援等の提供を受ける場合における利用者等の食費等負担額は、実費相当額とされていて、その月額は、所定の食費等の単価(食費については朝食、昼食、夕食別)に、それぞれ当該月の食事の実食数及び施設入所支援等の利用日数を乗じて算定するなどとされている。

そして、原則として毎年7月に、食費と光熱水費それぞれの前年度の支出実績に基づき、施設ごとに食費の試算額(月額)及び光熱水費の試算額(月額)が算定されていて、これらを合計した試算額(月額)が基準費用額を超過する場合には、利用者等の食費等負担額は、基準費用額を限度とすることとされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性、効率性等の観点から、センターが設置する国立更生援護施設において算定されている利用者等の食費等負担額は適切なものとなっているかなどに着眼して、26、27両年度の食費等に係る収入及び支出を対象として、厚生労働本省、センター(所沢センターを含む。)及び4施設(注3)において関係書類等により会計実地検査を行うとともに、2施設(注4)については関係書類の提出を受けるなどして検査した。

(注3)
4施設  函館視力障害センター、福岡視力障害センター、別府重度障害者センター、秩父学園
(注4)
2施設  神戸視力障害センター、伊東重度障害者センター(平成28年6月30日をもって、所沢センターに統廃合された。)

(検査の結果)

検査したところ、国立更生援護施設における26、27両年度の食費等に係る収支の状況をみると、表1のとおり、いずれの国立更生援護施設も支出額が収入額を大きく超過しており、支出額に対する収入額の比率は20.5%から68.4%となっていた。

表1 平成26、27両年度の国立更生援護施設における食費等に係る収支の状況

(単位:千円)
施設名 年度 収入額
a
支出額
b
収支差額
a-b
比率
a/b
所沢センター 平成26年度 51,030 123,414 △72,384 41.3%
27年度 54,025 128,814 △74,788 41.9%
函館視力障害センター 26年度 7,129 22,054 △14,924 32.3%
27年度 5,898 20,409 △14,510 28.9%
神戸視力障害センター 26年度 8,554 31,512 △22,958 27.1%
27年度 6,551 31,910 △25,359 20.5%
福岡視力障害センター 26年度 12,630 31,235 △18,604 40.4%
27年度 11,307 23,617 △12,310 47.8%
伊東重度障害者センター 26年度 13,248 28,514 △15,265 46.4%
27年度 7,706 22,563 △14,857 34.1%
別府重度障害者センター 26年度 22,753 42,283 △19,530 53.8%
27年度 20,042 37,399 △17,356 53.5%
秩父学園 26年度 20,533 29,979 △9,445 68.4%
27年度 16,654 25,453 △8,798 65.4%
26年度 135,880 308,995 △173,114 43.9%
27年度 122,185 290,167 △167,982 42.1%
合計 258,066 599,163 △341,096 43.0%

そこで、その原因についてみると、次のような状況となっていた。

すなわち、国立更生援護施設は、25年度から27年度まで(注5)の食費等の単価の算定に当たり、前記の「国立更生援護施設における食費・光熱水費の考え方について」に基づき、それぞれ24年度から26年度までの支出実績に基づく試算額(月額)を算定していたが、24年度の所沢センター及び秩父学園の試算額(月額)以外の各試算額(月額)は基準費用額を超えていた。

(注5)
各年度の食費等の単価の適用期間は、当該年度の7月から翌年度の6月までとなっていることから、平成26、27両年度の収入額は、25年度から27年度までの食費等の単価によるものである。

そして、国立更生援護施設は、食費等の単価を基準費用額又は試算額(月額)のいずれか低い方の額(以下、この額を「基準費用額等」という。)に基づき算定することとしていたほか、次のような取扱いをしていた。

すなわち、国立更生援護施設は、19年6月に厚生労働本省が追加して示した「各センターにおける実費負担額(食費・光熱水費)の取扱いについて」(以下「実費負担額の取扱い」という。)により、各施設の基準費用額等に基づき算定した食費(朝食、昼食、夕食の別)及び光熱水費の単価とそれぞれの前年度の単価とを比較して、基準費用額等に基づき算定した食費(朝食、昼食、夕食の別)及び光熱水費の単価が前年度の単価より高くなる場合には、当年度の単価を前年度の額に据え置き、前年度の単価より低くなる場合には、当年度の単価を当該額に減額することなどとしていた。

このため、国立更生援護施設における25年度から27年度までの食費等の単価は、19年度と同額又は19年度よりも低額となっていた。そして、表2のとおり、25年度から27年度までの国立更生援護施設における朝食、昼食、夕食及び光熱水費の各単価の合計額(以下「日額単価」という。)は、いずれも基準費用額等を日額に換算した額を下回っていて、1日当たり最小で29円、最大で487円の開差額が生じていた。

表2 食費等の日額単価と基準費用額等を日額に換算した額との比較

(単位:円)
施設名 年度 適用期間 朝食 昼食 夕食 食費計 光熱水費 日額単価 前年度単価との比較 基準費用額等
(日額換算)
差額
a b c d=a+b+c e f=d+e g f-g
所沢センター 平成25年度 25年7月~
26年6月
300 400 540 1,240 180 1,420 据置き 1,766 △346
26年度 26年7月~
27年3月
300 400 540 1,240 180 1,420 据置き 1,907 △487
27年4月~
27年6月
300 400 540 1,240 180 1,420 据置き 1,759 △339
27年度 27年7月~
28年6月
300 400 540 1,240 180 1,420 据置き 1,759 △339
函館視力障害センター 25年度 25年7月~
26年6月
430 570 560 1,560 120 1,680 据置き 1,907 △227
26年度 26年7月~
27年3月
430 570 560 1,560 120 1,680 据置き 1,907 △227
27年4月~
27年6月
400 530 520 1,450 120 1,570 一部減額 1,759 △189
27年度 27年7月~
28年6月
400 530 520 1,450 120 1,570 据置き 1,759 △189
神戸視力障害センター 25年度 25年7月~
26年6月
340 580 580 1,500 130 1,630 据置き 1,907 △277
26年度 26年7月~
27年3月
340 580 580 1,500 130 1,630 据置き 1,907 △277
27年4月~
27年6月
340 580 580 1,500 130 1,630 据置き 1,759 △129
27年度 27年7月~
28年6月
340 580 580 1,500 130 1,630 据置き 1,759 △129
福岡視力障害センター 25年度 25年7月~
26年6月
410 600 600 1,610 90 1,700 一部減額 1,907 △207
26年度 26年7月~
27年3月
410 600 600 1,610 90 1,700 据置き 1,907 △207
27年4月~
27年6月
410 600 600 1,610 90 1,700 据置き 1,759 △59
27年度 27年7月~
28年6月
410 600 600 1,610 90 1,700 据置き 1,759 △59
伊東重度障害者センター 25年度 25年7月~
26年6月
510 510 510 1,530 150 1,680 据置き 1,907 △227
26年度 26年7月~
27年3月
510 510 510 1,530 150 1,680 据置き 1,907 △227
27年4月~
27年6月
470 470 470 1,410 150 1,560 一部減額 1,759 △199
27年度 27年7月~
28年6月
450 450 450 1,350 150 1,500 一部減額 1,759 △259
別府重度障害者センター 25年度 25年7月~
26年6月
360 590 590 1,540 290 1,830 一部減額 1,907 △77
26年度 26年7月~
27年3月
360 590 590 1,540 290 1,830 据置き 1,907 △77
27年4月~
27年6月
340 550 550 1,440 290 1,730 一部減額 1,759 △29
27年度 27年7月~
28年6月
340 520 520 1,380 290 1,670 一部減額 1,759 △89
秩父学園 25年度 25年7月~
26年6月
300 610 610 1,520 90 1,610 据置き 1,758 △148
26年度 26年7月~
27年3月
300 610 610 1,520 90 1,610 据置き 1,907 △297
27年4月~
27年6月
300 610 610 1,520 90 1,610 据置き 1,759 △149
27年度 27年7月~
28年6月
300 610 610 1,520 90 1,610 据置き 1,759 △149
注(1)
平成26年度の単価については、27年4月1日に基準費用額が改定されたため、27年4月にも見直しが行われている。
注(2)
「基準費用額等(日額換算)」欄は、基準費用額を日額に換算した額となっている。なお、平成25年度の所沢センター及び秩父学園の金額は、24年度の支出実績に基づく試算額(月額)が基準費用額を下回っていたことから、試算額(月額)を日額に換算した額となっている。

このように、国立更生援護施設において、前記のとおり、厚生労働本省が食費等の単価の据置き又は減額を行うなどの「実費負担額の取扱い」を追加して示したことを受けて、利用者等の食費等負担額を算定していたことから、食費等の日額単価がいずれも基準費用額等を日額に換算した額を下回っていて、利用者等の食費等負担額が基準費用額等に基づいたものとなっていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(基準費用額等に基づく利用者等の食費等負担額とした場合の収入額の試算)

25年度から27年度までの食費等の単価について前記の据置き又は減額を行わずに、基準費用額等に基づいて利用者等の食費等負担額を算定した場合の収入額を試算すると、26、27両年度の合計で2億9309万余円となり、同期間における実際の請求額計2億4686万余円と比較して4623万余円の増となると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、食費等の日額単価が基準費用額等を日額に換算した額を下回っている状況が継続しているのに、これを十分に考慮しておらず、食費等の単価の算定方法を適時に見直していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、28年8月、センターに対して事務連絡を発して「実費負担額の取扱い」を廃止し、国立更生援護施設における利用者等の食費等負担額が基準費用額等に基づいた適切なものとなるように、食費等の単価の算定方法を見直し、同年10月からこれを適用することとする処置を講じた。