厚生労働省は、国民健康保険法(昭和33年法律第192号)に基づく国民健康保険制度を所管しており、国民健康保険の保険者である市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)に対して、療養給付費負担金(以下「負担金」という。)及び財政調整交付金を交付している。厚生労働省は、市町村が自らの財政負担で被保険者の一部負担金相当額を当該被保険者に代わって医療機関等に支払う措置(以下「負担軽減措置」という。)を講じている場合には、一般に、当該市町村において医療機関における受診等が増えて、医療給付費が増加する傾向があるとして、負担金及び財政調整交付金のうち普通調整交付金(以下、これらを合わせて「国庫負担金」という。)の交付額算定に当たり、負担軽減措置の対象となる被保険者(以下「負担軽減措置対象者」という。)に係る医療給付費に所定の減額調整率を乗じて医療給付費を減額することとしている(以下、この減額調整率を乗じて行う医療給付費の減額を「減額調整」という。)。そして、被保険者の一部負担金が一定の限度額を超える場合に、当該超過額が高額療養費として被保険者に支給されるが、負担軽減措置対象者に対する高額療養費については、市町村の国民健康保険の担当部門からの支払が、先に医療機関等に高額療養費相当額を含む負担軽減額を支払った当該市町村の負担軽減措置の担当部門に対して行われる方法(以下「償還払い」という。)又は医療機関等に対して直接行われる方法(以下「現物給付」という。)のいずれによる場合であっても、原則として、減額調整の対象とする必要があるとしている。しかし、負担軽減措置を講じている市町村において、国庫負担金の交付額の算定に当たり、当該市町村の国民健康保険の担当部門が、償還払いにより支払ったものを減額調整の対象としていなかったり、現物給付により支払ったものを減額調整の対象としていなかったりしていたため、国庫負担金が過大に算定され、交付されている事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、都道府県に対して減額調整の対象となる高額療養費及びその集計方法等を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に対して周知徹底することにより、国庫負担金の交付額の算定が適正なものとなるよう、厚生労働大臣に対して平成27年10月に、会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めた。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年12月に都道府県に対して通知を発して、負担軽減措置を講じている市町村において、負担軽減措置対象者に係る高額療養費の支給があったときは、当該高額療養費の支払が償還払い又は現物給付のいずれによる場合であってもその支給額については減額調整の対象となること及びその集計方法等を具体的に示して、これを都道府県を通じて市町村に対して周知徹底する処置を講じていた。