厚生労働省及び都道府県は、高齢者の医療の確保に関する法律(昭和57年法律第80号)に基づき、医療に要する費用の適正化(以下「医療費適正化」という。)を総合的かつ計画的に推進するための計画(以下「医療費適正化計画」という。)を定めて、医療費適正化計画に掲げる目標の達成状況及び施策の実施状況並びに当該施策に要した費用に対する効果に係る調査及び分析を行い、医療費適正化計画の実績に関する評価を行うことなどとなっている。そして、同省は、全ての医療保険者等から全ての特定健康診査及び特定保健指導(以下「特定健診等」という。)の内容等に関する電子情報(以下「特定健診等データ」という。)及び全てのレセプトの内容等に関する電子情報(以下「レセプトデータ」という。)を収集し保存した上で、生活習慣病予防対策として実施されている特定健診等が医療費適正化に及ぼす効果等について適切な分析を行うことなどを目的として、レセプト情報・特定健診等情報データベースシステム(以下「NDBシステム」という。)を構築している。しかし、被保険者の個人情報の入力形式等が両データで異なるものとなっていたり、電算処理システムにおいて被保険者等の個人情報の入力形式等を同じものとする処理(以下「置換処理」という。)が特定健診等データに関する電算処理システムとレセプト電算処理システムとで異なるものとなっていたり、匿名化・提供システムにおける置換処理機能が限定的なものとなっていたりするなどしているため、多数の保険者の特定健診等データをレセプトデータと突合できない事態が見受けられた。
したがって、厚生労働省において、NDBシステムの運用状況を大幅に改善し、第2期医療費適正化計画の実績に関する評価に当たっては、生活習慣病予防対策として実施されている特定健診等が医療費適正化に及ぼす効果について、収集され保存されている特定健診等データ及びレセプトデータを十分に活用した適切な評価を行うことができるようにするために、両データの不突合の原因等を踏まえたシステムの改修等を行うなどするよう、厚生労働大臣に対して平成27年9月に、会計検査院法第36条の規定により意見を表示した。
本院は、厚生労働本省において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。
検査の結果、厚生労働省は、本院指摘の趣旨に沿い、27年度に、特定健診等データとレセプトデータの不突合の原因等を踏まえて、今後NDBシステムに収集され保存される両データ及び既にNDBシステムに収集され保存されている両データについて、被保険者の個人情報の入力形式等が異なるなどしている場合であっても突合できるようにするために匿名化・提供システムの改修を行うなどの処置を講じていた。