九州森林管理局宮崎森林管理署(以下「宮崎署」という。)は、平成26年6月に、軍谷(いくさだに)2024林道新設及び改良工事に係る請負契約を、一般競争契約により、株式会社丸山工務店(以下「会社」という。)との間で契約額54,540,000円で締結している。この工事は、宮崎署が、既設の軍谷2024林道(以下「軍谷林道」という。)の延伸(延長660.0m)及び改良(延長80.5m)のために、切土工、盛土工、残土処理工等を行うものである。
宮崎署は、本件工事の残土処理工の設計に当たり、軍谷林道の延伸に伴い発生する残土8,247m3を、残土の発生現場から近い順に、まず、軍谷林道沿いの地点(残土の平均運搬距離1,008.9m)に盛土して処理(残土処理予定量2,295.9m3)し、次に、軍谷林道に近接している橋(はし)満(みつ)林道31支線(以下「橋満支線」という。)沿いの地点(残土の平均運搬距離4,357.3m。以下「橋満処理場」という。)に盛土して処理(残土処理予定量5,950.7m3)することとしていた。そして、この設計に基づき、残土の平均運搬距離を3,420mと算定するなどして、上記残土処理工の工事費(以下「残土処理費」という。)を9,731,000円と算定していた。
一方、宮崎署は、同年8月に、橋満支線周辺の国有林野において、本件工事とは別の間伐等を行うなどの森林整備事業に係る契約を会社とは別の業者と締結して、この間伐等で生産される丸太を林内から橋満支線へ搬出等するための森林作業道(注)を開設するために、当該業者に森林作業道と橋満支線との接続位置を検討させた。その結果、宮崎署は、橋満支線沿いの土地の傾斜等の現地条件や林業機械が走行可能な勾配を考慮すると、橋満処理場の予定地以外の場所での接続は困難であるとして、橋満処理場の予定地に、橋満支線と接続する森林作業道(以下「接続道」という。)及び接続道の途中から分岐する別の森林作業道(以下「分岐道」という。)を開設することとした(参考図参照)。
このため、宮崎署は、橋満処理場で残土を処理することができなくなったとして、同年11月に、橋満処理場に代わる残土処理場を、本件工事現場からの距離が橋満処理場より更に遠方となる地点(残土の平均運搬距離11,657.3m。以下「新処理場」という。)に設けることとし、橋満処理場に盛土して処理することとしていた残土処理予定量5,950.7m3の全量を新処理場に盛土して処理することとする設計変更を行っていた。そして、27年3月に、この設計変更により残土の平均運搬距離が当初の3,420mから8,700mに変更となったことなどに伴い、残土処理費を17,414,000円と算定するなどして、契約額を54,540,000円から64,044,000円に増額する変更を行っていた。
本院は、経済性等の観点から、残土処理工の設計等が適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、宮崎署において、契約書、設計図書、予定価格の積算書等の書類、現地の状況等を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
すなわち、宮崎署は、前記のとおり、橋満処理場の予定地に本件工事とは別の森林整備事業の実施に必要な接続道及び分岐道を開設することとしたことから、残土処理予定量5,950.7m3の全量について、新処理場に盛土して処理することにする設計変更を行っていた。
しかし、設計図書、現地の状況等によれば、接続道は橋満処理場の予定地に開設せざるを得なかったものの、分岐道は周辺の傾斜が比較的緩やかであることなどのため、その位置を大きく変更することなく橋満処理場の予定地と重ならないように開設することができることから、上記残土処理予定量5,950.7mの一部は3新処理場に運搬せず橋満処理場に盛土して経済的に処理することができたと認められる(参考図参照)。
したがって、新処理場に盛土して処理することとしていた5,950.7m3のうち、上記のとおり橋満処理場で処理することができた残土処理量を算出すると4,268.1m3となり、これらを橋満処理場に、残りの1,682.6m3を新処理場にそれぞれ盛土して処理することとすれば、残土の平均運搬距離は4,920m、残土処理費は12,303,000円となる。これにより本件工事費を修正計算すると55,844,640円となることから、変更後の契約額64,044,000円はこれに比べて約810万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、宮崎署において、本件工事における残土処理場の選定に当たり、本件工事とは別の森林整備事業で開設する森林作業道の位置等を調整して経済的な設計を行うことについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
橋満処理場の概念図