農林水産本省(以下「本省」という。)は、日本産の農林水産物及び食品の輸出を拡大するなどのために、平成21年度に、特定非営利活動法人日本食レストラン海外普及推進機構(以下「推進機構」という。)、24、25両年度に、一般社団法人日本フードサービス協会(25年3月31日以前は社団法人日本フードサービス協会。以下「協会」といい、推進機構と合わせて「2法人」という。)との間で、「平成21年度海外日本食優良店調査・支援委託事業」等5件(推進機構1件、協会4件)の委託契約を締結して事業を実施させて、委託費計181,783,719円(推進機構107,070,000円、協会74,713,719円)を支払っている。
本省は、21年度から26年度までに、農林水産物等輸出促進支援事業補助金交付要綱(平成18年17国際第1419号農林水産事務次官依命通知。以下「交付要綱」という。)等に基づき、2法人が実施した海外で開催される食関連見本市への出展等の補助事業に対して、農林水産物・食品輸出促進対策費補助金等14件(推進機構13件、協会1件)、計844,659,862円(推進機構830,664,862円、協会13,995,000円)を交付している。
また、本省は、日本産農林水産物・食品の輸出拡大、日本食・食文化の魅力を発信する取組等を支援するために、食品流通構造改善緊急対策事業費等補助金交付要綱(平成4年4食流第2350号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、23、24両年度に、公益財団法人食品流通構造改善促進機構(25年3月31日以前は財団法人食品流通構造改善促進機構。以下「食流機構」という。)に対して、農山漁村6次産業化対策事業費補助金を交付して、基金を造成させている。そして、食流機構は、24、25両年度に、農山漁村6次産業化対策事業に係る公募要領(平成24年24食流機構第51号)等に基づき、推進機構が上記の取組として実施した海外外食事業者に対する研修会等の事業(以下「基金補助事業」という。)に対して、基金を取り崩すなどして補助金(以下「基金補助金」という。)2件、計163,636,721円を交付している。
前記の委託契約によれば、委託費の額は、委託事業に要した経費の実支出額と委託契約書に記載された委託費の限度額のいずれか低い額とされている。また、交付要綱等によれば、国庫補助金及び基金補助金(以下、これらを合わせて「補助金」という。)の額は、交付決定された金額の範囲で補助事業及び基金補助事業(以下、これらを合わせて「補助事業等」といい、委託事業と合わせて「委託事業等」という。)の実施に必要な経費を定額で補助することとされている。
そして、「委託事業における人件費の算定等の適正化について」(平成22年22経第961号農林水産省大臣官房経理課長通知)等によれば、人件費は、各委託事業等に直接従事する者(以下「従事者」という。)ごとに算出した時間単価に当該従事者が当該委託事業等に従事した作業時間数を乗じて算定することなどとされている。
また、補助事業等に係る公募要領等によれば、補助金の交付決定前に発生した経費は、事業の実施に必要なものであっても補助金の対象事業費に含めることができないとされている。そして、本省及び食流機構は、交付決定後に支払われた経費であっても、交付決定前に契約を締結していたものは、上記の「交付決定前に発生した経費」に該当し、対象事業費に含めることができないとしており、委託事業においても同様の取扱いとするとされている。
さらに、委託契約、公募要領等によれば、当該委託事業等の実施に要した経費であることを証明できない経費は対象事業費に含めることができないとされている。
本省及び食流機構は、上記の委託契約、交付要綱等に基づき、委託事業等が終了し、2法人から委託事業等の成果が記載された実績報告書等の提出を受けたときは、当該委託事業等が委託契約や補助金の交付決定の内容等に適合するものであるかどうかについて審査及び確認を行い、その結果、適合すると認めたときは、委託費又は補助金の額を確定して2法人に支払うこととしている。
本院は、合規性等の観点から、委託事業等に係る経費の算定は適正かなどに着眼して、前記の委託事業5件、補助事業14件及び基金補助事業2件の委託事業等計21件を対象として、本省、食流機構及び2法人において、実績報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。
2法人は、委託事業1件、補助事業10件及び基金補助事業2件において、従事者が委託事業等に従事した日数に日額単価を乗ずるなどして算定した額を人件費として実績報告書に計上していた。
しかし、2法人は、委託事業等に従事した日数の算定に当たり、従事者が委託事業等に全く従事していない日や1日のうち一部の時間しか従事していない日を終日従事したとするなどしていて、これに係る人件費の額24,600,854円を含めていた。
2法人は、委託事業4件、補助事業9件及び基金補助事業1件において、見本市、商談会、研修会等を実施するための会場の借上費及びこれに関連する経費を委託事業等の対象事業費として実績報告書に計上していた。
しかし、2法人は、委託契約前又は補助金の交付決定前に会場借上げ等に係る契約を締結していて、対象事業費に含めることができないとされている委託契約等の前に発生した経費計51,915,146円を委託事業等の対象事業費に含めていた。
このほか、2法人は、前記の委託事業等21件に係る実績報告書に委託事業等に必要のない経費や当該委託事業等の実施に要した経費であることを証明できない経費計111,198,116円を含めていた。
したがって、各従事者が実際に委託事業等に従事した時間数等に基づき適正な人件費を算定するとともに、対象事業費に含めることができない経費を除外して適正な対象事業費を算定すると、委託事業計136,974,869円、補助事業計722,142,162円、基金補助事業計143,249,155円となることから、前記の委託費支払額、国庫補助金交付額及び基金補助金交付額との差額44,808,850円(推進機構14,275,287円、協会30,533,563円)、122,517,700円(推進機構119,537,679円、協会2,980,021円、国庫補助金相当額同額)及び20,387,566円(推進機構、国庫補助金相当額同額)、計187,714,116円(推進機構154,200,532円、協会33,513,584円)が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2法人において委託事業等に係る経費を適正に算定することなどについての認識が欠けていたこと、食流機構において基金補助事業の実績報告書等の審査及び確認並びに推進機構に対する指導が十分でなかったこと、本省において委託事業等の実績報告書等の審査及び確認並びに食流機構及び2法人に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。