(1件 不当と認める国庫補助金 14,553,825円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(229) | 農林水産本省 | 全国土地改良事業団体連合会 | 岐阜県土地改良事業団体連合会 | 土地改良施設維持管理適正化 | 26 | 62,542 | 17,400 | 51,175 | 14,553 |
可児土地改良区 (事業主体) |
この補助事業は、土地改良施設の機能の保持と耐用年数の確保に資することなどを目的として、農林水産省が全国土地改良事業団体連合会(以下「全土連」という。)に対して土地改良施設維持管理適正化資金(以下「資金」という。)を造成させるために、国庫補助金を交付するものである。
土地改良施設維持管理適正化事業実施要綱(昭和52年52構改B第600号農林事務次官依命通知)等によれば、全土連は、土地改良区等が実施する土地改良施設の定期的な整備補修の実施に要する経費の全部又は一部について、農林水産省から交付された国庫補助金等により造成した資金を取り崩して都道府県土地改良事業団体連合会(以下「地方土連」という。)に交付金として交付し、交付を受けた地方土連が当該事業を実施する土地改良区等に当該交付金を交付することとされている。そして、地方土連が土地改良区等に交付金を交付するに当たっては、工事の実施状況の検査を実施することとされている。
可児土地改良区は、岐阜県可児郡御嵩町伏見地区において、上記事業の一環として、揚水機を制御する主ポンプ盤、高圧受電盤、変圧器盤及び補器盤(以下、これらを「主ポンプ盤等」という。)の更新等をするために、新たに主ポンプ盤等の製作及び据付けを実施して、岐阜県土地改良事業団体連合会(以下「岐阜土連」という。)の検査を経て交付金52,200,000円(国庫補助金相当額17,400,000円)の交付を受けていた。
本件工事の設計については、「電気設備計画設計技術指針(高低圧編)」(農林水産省農村振興局整備部設計課監修)、「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(一般財団法人日本建築センター編)等(以下、これらを「指針等」という。)に基づき行っている。指針等によれば、機器を据え付けるためのアンカーボルトは、必ずく体コンクリートに埋め込むこととされ、構造用としての強度が期待できないラフコンクリート(注)等には埋め込まないこととされている。
請負人は、指針等に基づき、アンカーボルトについて耐震設計計算を行い、主ポンプ盤等を据え付けるための架台(以下「据付架台」という。)とく体コンクリートである床面とを主ポンプ盤等の機器ごとにそれぞれアンカーボルト(埋込長さ90mm)4本を使用して固定し、据付架台の上に主ポンプ盤等を緊結して固定することとしていた。そして、耐震設計計算の結果や図面等を記載した耐震計算書(以下「提出図書」という。)を作成して同土地改良区に提出し、同土地改良区は提出図書を審査するなどした上で承諾し、請負人はこれにより施工していた。
しかし、アンカーボルトを埋め込むこととしていた床面は、く体コンクリートでなく建屋建設時に打設した厚さ300mmのラフコンクリートであった(参考図参照)。このため、本件工事で使用したアンカーボルトは、地震時に生ずる引抜力に抵抗するための耐力が確保されていない状態となっていた。
したがって、主ポンプ盤等(工事費相当額51,175,771円)は、設計が適切でなかったため、地震時に転倒するなどして破損するおそれがあり、地震時における機能の維持が確保されていない状態となっており、これに係る交付金相当額42,712,753円(国庫補助金相当額14,553,825円)が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同土地改良区において提出図書に誤りがあったのにこれに対する審査が十分でなかったこと、岐阜土連において工事の検査等が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
アンカーボルトがラフコンクリートに埋め込まれた据付概念図