(1件 不当と認める国庫補助金 20,710,500円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(239) | 農林水産本省 | 静岡県 (事業主体) |
― | 地域自主戦略交付金 | 24、25 | 40,467 | 20,233 | 40,467 | 20,233 |
関東農政局 | 同 | ― | 農山漁村活性化プロジェクト支援交付金 | 25 | 954 | 477 | 954 | 477 | |
計 | 41,421 | 20,710 | 41,421 | 20,710 |
この交付金事業は、静岡県が、静岡市清水区尾羽地区内において、かんがい用水を人為的に制御し、畑に適切な水分補給を行う用水管理を目的として、ファームポンド(注)(高さ5.7m、全幅11.3m、全長16.0m、容量688m3。以下「新設ファームポンド」という。)を地区内の既設のファームポンド2基に加えて新たに設置する工事を地域自主戦略交付金及び農山漁村活性化プロジェクト支援交付金により実施したものである。
同県は、新設ファームポンドの設置に係る事業計画等を「土地改良事業計画設計基準 計画「農業用水(畑)」」(農林水産省構造改善局監修)等に基づき作成している。この設計基準等によれば、ファームポンドの容量及び水源からの揚水量については、10年に1回程度の干ばつ時に対応できるように算出することとされている。
そして、同県は、事業計画の作成に当たり、新設ファームポンドを含むファームポンド3基にかんがい用水を供給して貯留するために必要となる水源からのポンプの揚水量について、1.01m3(1分当たりの揚水量。以下同じ。)と算定し、既設のポンプ1基(0.10m3)に加え、新たにポンプ4基(計0.91m3)を設置することとしていた(参考図参照)。
また、同県は、平成22年度に、事業の実施に当たり、事業計画として全体の実施スケジュールを示した工程表等を作成していた。この工程表等によれば、同県は、事業を23年度から25年度までの整備(以下「1期事業」という。)と26年度から28年度までの整備(以下「2期事業」という。)の2期に分割して実施することとし、1期事業として新設ファームポンド1基、新設ポンプ1基(0.20m3)等を、2期事業として残りの新設ポンプ3基(計0.71m3)等をそれぞれ整備することとしていた。このうち、2期事業で整備する新設ポンプ3基については、本件事業の受益地外の水源3か所に設置することとして、これらの水源の所有者3名との交渉を地元の土地改良区に任せ、26年度からの2期事業の開始に先立って、水源を譲り受けることとしていた。
しかし、27年11月の会計実地検査時点においても、同県は、水源の所有者から水源を譲り受けることができていなかったにもかかわらず、水源の所有者との交渉を地元の土地改良区に任せきりにしていたばかりでなく、代替となる水源を自ら確保するなどの他の方策を全く講じていなかったことから、2期事業に着手できる状況となっていなかった。
したがって、2期事業に着手する前提となる水源が確保されていなかったため、新設ファームポンド(交付対象事業費41,421,000円)は、干ばつ時に所要の用水量を貯留できる見込みが立っていない状況となっていて、補助の目的を達成しておらず、これに係る交付金相当額計20,710,500円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、事業の実施に当たり、水源を確保することの重要性についての認識が欠けていたことなどによると認められる。
(参考図)
事業計画の全体の概念図