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  • 平成27年度|
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  • (5)工事の設計及び施工が適切でなかったなどのもの

木造建築物の設計及び施工が適切でなかったなどのもの[関東農政局、水産庁](241)(242)


(2件 不当と認める国庫補助金 22,063,934円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(241) 関東農政局 長野県 大北地区猟友会
(事業主体)
鳥獣被害防止総合対策交付金 26 48,049 24,024 20,241 10,120
(242) 水産庁 五島市 五島漁業協同組合
(事業主体)
産地水産業強化支援 24 36,468 17,365 25,081 11,943
(241)(242)の計 84,517 41,389 45,323 22,063

これらの交付金事業は、2事業主体が、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により木造施設(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである。

木造建築物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に筋交いなどを設置した耐力壁を張り間方向(注)及び桁行方向(注)に配置し、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回るなど設計計算上安全な構造のものでなければならないこととなっている。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)等に基づき、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して、梁(はり)、土台、基礎コンクリート等と接合することとなっている(参考図参照)。

しかし、2事業主体において、誤って引抜耐力が不足している金物により柱と梁、土台等とを接合することとして設計し、これにより施工するなどしたり、請負人が設計と相違して、梁、土台等との接合箇所の一部に金物を使用せずに施工するなどしたりしていた事態が見受けられた。

このように、梁、土台等との接合が適切でない柱で構成された壁は耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向及び桁行方向のそれぞれにおいて、水平力に対して必要な耐力壁の長さを大幅に下回っていて、木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計22,063,934円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、2事業主体において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったり、請負人が設計図書、法令等についての理解が十分でないまま施工していたのに、これに対する監督及び検査が十分でなかったりなどしていたこと、長野県及び五島市において、2事業主体に対する指導及び監督が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

大北地区猟友会(長野県大町市所在。以下「猟友会」という。)は、大町市大町字中山地内において、鳥獣被害防止に資する狩猟者の射撃技能向上を図ることなどを目的として、射撃場の射屋(木造平屋建て)の建築等を行った。

しかし、たすき掛け筋交い等を取り付けた耐力壁を構成する34か所の柱のうち25か所の柱について、猟友会は、誤って引抜耐力が不足している金物により柱と梁、土台等とを接合することとして設計していた。また、施工の際に、上記25か所の柱のうち6か所の柱について、請負人は、誤って引抜耐力が更に下回る金物を用いて柱と梁、土台等とを接合していた。

このように、梁、土台等との接合が適切でない柱で構成された壁は耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向で9.10m、桁行方向で12.75mとなり、両方向とも水平力に対して必要な耐力壁の長さ37.20mを大幅に下回っていた。

したがって、本件射屋(工事費相当額計20,241,720円、交付金相当額計10,120,860円)は、設計及び施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。

(注)
張り間方向・桁行方向  一般的に建物の短辺方向を張り間方向といい、長辺方向を桁行方向という。

(参考図)

耐力壁概念図

耐力壁概念図 画像