(1件 不当と認める国庫補助金 8,142,000円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(243) | 東北農政局 | 福島県 | 農事組合法人平石野菜生産組合 (事業主体) |
農山漁村6次産業化対策整備交付金 | 25 | 17,098 | 8,142 | 17,098 | 8,142 |
この交付金事業は、農事組合法人平石野菜生産組合(以下「組合」という。)が、いわき市において、いちごを使った加工品の製造及び販売を目的として、農林水産物の加工及び直売施設(以下「加工直売施設」という。)並びに加工品の製造に必要なガステーブル等の機器(以下「機器」という。)の整備を事業費17,098,200円(交付対象事業費16,284,000円)で実施したものである。
加工直売施設は、加工品の製造及び販売を行う木造部分、その周囲に椅子や机を配置した不特定多数の者が利用する飲食スペース等並びにこれら全体を覆う鉄骨ハウスで構成されている(参考図参照)。
「園芸用施設に関する建築確認上の取扱いについて(通知)」(平成14年14住第669号福島県土木部長通知。以下「園芸通知」という。)等によれば、野菜、花きなどの園芸作物の栽培を目的として設置される鉄骨ハウス等の園芸用施設等については、建築基準法(昭和25年法律第201号)に規定する建築物に該当しないものとして取り扱うこととされており、組合は、加工直売施設について、園芸通知等に定められている鉄骨ハウスに該当し、同法に規定する建築物には該当しないとして設計し、これにより施工していた。
しかし、加工直売施設は、園芸作物の栽培を目的としたものではないことから、園芸通知等に定められている鉄骨ハウスには該当せず、全体として同法に規定する建築物に該当すると認められた。
同法によれば、加工直売施設は、安全な構造のものとして政令で定める技術的基準(以下「技術的基準」という。)に適合するものでなければならず、建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)等によれば、木造部分にあっては、地震等により生ずる全ての方向の水平力に対して安全であるように、柱と柱との間に筋交いなどを設置した耐力壁を釣合い良く配置しなければならないなどとされている。そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号)等に基づき、筋交いの向きや種類、柱の位置等に応じて、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して、梁(はり)、土台等と接合することとなっている。
そして、組合は、前記のとおり、加工直売施設について、同法に規定する建築物に該当しないと誤認していたため、その設計に当たり、技術的基準に適合する建築物とするための検討を全く行っていなかった。そこで、加工直売施設が技術的基準に適合するものとなっているか確認したところ、木造部分の壁を構成する柱と梁、土台等が必要な引抜耐力を有する金物等で接合されていないなどしていた。このため、木造部分の壁は耐力壁として機能しない状態となっており、加工直売施設は、木造部分に耐力壁が全く設置されていない状態となっていた。
したがって、加工直売施設は、設計が適切でなかったため、技術的基準に適合しない違法な建築物となっており、加工品の製造及び販売を行うことができない状態になるなどしていて、加工直売施設及び機器は、交付金事業の目的を達していないなどしており、これらに係る交付金相当額8,142,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、組合において関係法令についての理解が十分でなかったこと、福島県において本件交付金事業に係る審査及び確認並びに組合に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
加工直売施設の概念図