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  • 平成27年度|
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  • (7)工事の施工が適切でなかったもの

集塵庫の施工が適切でなかったもの[農林水産本省](245)


(1件 不当と認める国庫補助金 8,584,899円)

  部局等 補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等 年度 事業費 左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(245) 農林水産本省 北海道 夕張郡栗山町 農業・食品産業強化対策整備交付金 25 647,311 287,830 17,169 8,584
      そらち南農業協同組合
(事業主体)
           

この交付金事業は、そらち南農業協同組合(以下「組合」という。)が、栗山町において、既存の米の乾燥調製貯蔵施設の能力の増強等を図る取組として集塵庫(建物高さ7.3m、延べ面積20.6m2)、穀物貯蔵庫等を整備するなどしたものである。

組合は、本件事業の実施に当たり、ホクレン農業協同組合連合会(以下「連合会」という。)との間で、設計業務、建設工事等の施工管理業務を行わせる施主代行委任契約を締結しており、これに基づき連合会は、予定期日までに設計図書に基づく工事を完成して、組合に引き渡すこととしていた。そして、連合会は、施主代行業務の一環として、建設工事等を施工業者に請け負わせていた。

本件集塵庫は、米の乾燥・調製作業を行った際に発生する種々の異物を風力によって収集し排出するための施設であり、その基礎の設計及び施工については、設計図書等によれば、基礎杭として地中に外径300mm、杭長10.0mの既製コンクリート杭(以下「PHC杭」という。)6本を施工し、PHC杭とフーチングを6か所でそれぞれ接合する構造とされていた(参考図参照)。また、本件PHC杭の施工に当たっては、掘削機を用いて地盤を支持層まで掘削して、その掘削孔にPHC杭を埋設し支持層に定着させることとされていた。さらに、施工業者は、掘削の際に掘削機先端にかかる抵抗から掘削機の先端が支持層へ到達したか推定するため、掘削機の先端を回転させるモーターに流れる電流値を記録した紙(以下「記録紙」という。)の写しを杭打工事施工報告書に添付して連合会に提出することとされていた。

しかし、施工業者は、地中に埋設されている高圧電線が支障となったため、6本のうちの2本のPHC杭を施工できないと判断し、連合会の承認を得ることなく、4本のみを施工し、残りの2本を施工しなかった(参考図参照)。そして、施工業者は、2本のPHC杭を施工しなかったことを隠ぺいするため、施工した4本のPHC杭の記録紙を複写するなどして、6本のPHC杭全てを施工したとする虚偽の内容の杭打工事施工報告書等を作成して連合会に提出していた。組合は、連合会を通じてこれを受領し、集塵庫の引渡しを受けていた。

そこで、実際の施工状況に基づいて、本件集塵庫のような規模の工作物の設計に適用される小規模建築物基礎設計指針(一般社団法人日本建築学会編集)により、集塵庫の構造計算を行ったところ、PHC杭を施工していない2か所のフーチング下部における鉛直荷重(注)が許容鉛直支持力度(注)をそれぞれ上回っており、鉛直荷重は最大で282.0kN/m2となり、許容鉛直支持力度57.9kN/m2を大幅に上回っていて、構造計算上安全であるとされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件集塵庫(工事費相当額17,169,797円)は、施工が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額8,584,899円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、施工業者による施工が著しく粗雑であったのに、連合会において適切に施工管理を実施していなかったこと、また、組合において連合会に対する監督及び集塵庫の引渡しの際の確認が十分でなかったこと、北海道及び栗山町において組合に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
鉛直荷重・許容鉛直支持力度  「鉛直荷重」とは、構造物の自重等が地盤に対し鉛直方向に働く単位面積当たりの力をいう。その数値が設計上許される上限を「許容鉛直支持力度」という。

(参考図)

集塵庫の概念図

集塵庫の概念図 画像