(4件 不当と認める国庫補助金 51,355,200円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(269) | 秋田県 | 北秋田市 | 社会資本整備総合交付金 (公営住宅等整備) |
27 | 23,738 (23,738) |
10,682 | 23,636 (23,636) |
10,636 |
(270) | 岡山県 | 瀬戸内市 | 同 | 25 | 196,398 (135,400) |
67,700 | 15,260 (10,521) |
5,260 |
(271) | 愛媛県 | 上浮穴郡久万高原町 | 同 | 26 | 72,963 (48,652) |
24,326 | 70,238 (47,097) |
23,548 |
(272) | 長崎県 | 長崎県 | 同 (都市公園) |
25 | 30,174 (30,174) |
15,087 | 23,820 (23,820) |
11,910 |
(269)―(272)の計 | 323,275 (237,965) |
117,795 | 132,956 (105,074) |
51,355 |
これらの交付金事業は、1県2市1町が、公営住宅等整備事業及び都市公園事業の一環として、柱、土台、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により公営住宅、公園のトイレ棟等の木造施設(以下「木造建築物」という。)の建築等を実施したものである。
木造建築物は、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に筋交い、構造用合板、国土交通大臣の認定を受けた耐力壁用パネル(以下「耐力壁用パネル」という。)等を設置した耐力壁を張り間方向(注1)及び桁行方向(注1)に配置し、設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さをそれぞれ上回るなど設計計算上安全な構造のものでなければならないこととなっている。
そして、同法等によれば、耐力壁の配置に偏りがあると一部分に変形が集中して壊れやすくなることがあるため、設計に当たっては、耐力壁を釣合い良く配置しなければならないとされている(参考図1参照)。耐力壁の配置については、同法等に基づく告示「木造建築物の軸組の設置の基準を定める件」(平成12年建設省告示第1352号)によれば、張り間方向及び桁行方向共に、両端からそれぞれ4分の1の部分(以下「側端部分」という。)における、設計計算上の耐力壁の長さを水平力に対して必要とされる耐力壁の長さで除した数値(以下「壁量充足率」という。)を算出することとされている。さらに、各側端部分の壁量充足率のいずれかが1.0以下となる場合には、張り間方向及び桁行方向ごとに壁量充足率の小さい方を大きい方で除した数値(以下「壁率比」という。)が0.5以上となるようにしなければならないとされている。
そして、耐力壁を構成する柱については、水平力により生ずる引抜力に抵抗するために、同法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)等に基づき、耐力壁の種類や強度、柱の位置等に応じて、告示に定める表(以下「告示の表」という。)又は所定の係数を用いるなどした設計計算により、必要な引抜耐力を有する金物等を選定して、梁(はり)、土台、基礎コンクリート等と接合することとなっている(参考図2参照)。また、筋交いについても、告示に基づき、筋交いの厚さなどに応じて定められた接合方法又はこれと同等以上の引抜耐力を有する接合方法により柱等と接合することとなっている。
しかし、次のとおり、木造建築物の設計が適切でなかった。
すなわち、北秋田市において、出隅の柱(注2)について、告示の表の適用を誤って金物を選定していたり、瀬戸内市において、出隅の柱について、出隅の柱以外の柱に適用する係数を用いて設計計算を行って金物を選定していたり、久万高原町において、耐力壁用パネルを取り付けた柱について、耐力壁用パネルより壁倍率(注3)の低い構造用合板に対応する金物を告示の表から選定していたりしたため、いずれも必要な引抜耐力を下回る金物を使用して施工している事態が見受けられた。また、長崎県において、一部の柱について、金物を使用すべきことを設計図書に示していなかったため、金物を取り付けずに施工しているなどの事態が見受けられた。
このように、梁、土台等との接合方法が適切でない柱で構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、北秋田市及び久万高原町の木造建築物について、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出したところ、張り間方向及び桁行方向において、有効な設計計算上の耐力壁の長さが水平力に対して必要な長さを大幅に下回っていた。また、瀬戸内市及び長崎県の木造建築物について、改めて壁量充足率及び壁率比を計算したところ、耐力壁の側端部分における壁量充足率が1.0以下であるのに必要とされる壁率比0.5を大幅に下回っていた。したがって、いずれも木造建築物の所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額計51,355,200円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業主体において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
久万高原町は、公営住宅等整備事業の一環として、久万高原町東明神地内において、本組団地(間取りと構造が同じ木造平屋建て2棟)の建築等を行った。
同町は、壁倍率4.2倍及び3.7倍の耐力壁用パネル等を取り付けた耐力壁を配置することとしており、耐力壁を構成する柱については、告示の表から金物を選定するなどして、土台等と接合することとしていた。
しかし、耐力壁用パネルを取り付けた柱については、耐力壁用パネルが告示の表に記載されていないことから、設計計算により金物を選定する必要があるのに、同町は、設計計算を行わずに、告示の表から必要な引抜耐力を下回る壁倍率2.5倍の構造用合板に対応する金物を選定するなどし、これにより施工していた。
このように、必要な引抜耐力を下回る金物で接合された柱で構成される壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、改めて有効な設計計算上の耐力壁の長さを算出すると、張り間方向で11.40m、桁行方向で3.80mとなり、水平力に対して必要な長さ38.63m及び22.13mを大幅に下回っていた。
したがって、本件住宅2棟(工事費相当額計70,238,630円、交付対象工事費計47,097,000円、交付金相当額計23,548,500円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっていた。
(参考図1)
耐力壁の釣合いがとれていない場合の変形の概念図
(参考図2)
耐力壁の概念図