(1件 不当と認める国庫補助金 6,429,500円)
部局等 | 補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 (国庫補助対象事業費) |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 (国庫補助対象事業費) |
不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(277) | 三重県 | 三重県 | 社会資本整備総合交付金 (道路) |
23、24 | 20,401 (20,401) |
11,220 | 11,690 (11,690) |
6,429 |
この交付金事業は、三重県が、伊賀市三田地区において、一般国道422号三田坂バイパスの新設に伴い、道路の左右両側の切土法面6か所(面積計3,175.3m2)に雨水による侵食を防止することなどを目的として植生工を実施したものである。
同県は、植生工の設計及び管理を「道路土工 切土工・斜面安定工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づき行うこととしている。そして、指針によれば、植生工の設計に当たっては、植物の選定、施工時期等の検討に必要な気温、降水量、日照等や法面の形状、規模、高さ、方位、勾配等についての調査を行うこととされている。また、植生工の工法選定に当たっては、植物の発芽及び生育は、温度、水分、光量、肥料等の影響を大きく受けるため、立地条件等に適した植物等の材料及び工法を用いることとされており、さらに、施工後の管理に当たっては、植生工の施工後の成績判定を行い、植物の生育状況を確認し、生育不良が見受けられた場合にはその原因等も確認し、必要な対応策を検討することとされている。そして、同県は、上記の調査を実施した上で、本件工事の立地条件等に適合する工法として、種子、基盤材(堆肥及び土壌改良資材)、肥料等を混合した植生基材(厚さ6cm)を切土法面に吹き付けて緑化する工法を選定して、これにより施工していた(参考図参照)。
しかし、植生工を施工した6か所の法面のうち、南向きの法面1か所(面積1,822.0m2。以下「本件法面」という。)は、高さ33mを超える長大法面であり、山頂部を含めて切土したことなどにより法面上部からの雨水の浸透水が少なくなっていること、南向きの法面であることなどのため非常に乾燥しやすい条件となっていた(参考図参照)。このような立地条件等から、本件法面に吹き付ける植生基材については、より保水力の高い配合としたり、播種量を割増ししたりするなどの措置を執るべきであったのに、同県は、これらの措置を執ることなく上記の植生基材の配合を決定していた。また、指針によれば、植生工の施工時期の目安は日平均気温が10℃から25℃までの期間であるとされているのに、同県は、本件工事の施工時期を日平均気温の平年値が3.6℃(近隣の気象観測地の値)である2月に決定して施工していた。さらに、同県は、指針に定められた植生工施工後の成績判定、植物が生育不良の場合の原因等の確認や対応策の検討を実施していなかった。このことなどのため、本件法面は、平成27年12月の会計実地検査時点において、植生工施工後2年9か月を経過しているにもかかわらず種子の発芽や生育がほとんど見受けられず、植生基材が流出して地山が露出している状態となっていた。
したがって、本件法面における植生工(工事費相当額11,690,000円)は、設計及び管理が適切でなかったため、雨水による侵食を防止するなどの効果が期待できないものとなっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る交付金相当額6,429,500円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、本件法面における植生工の設計及び管理についての検討が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
植生工及び切土の状況