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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1)工事の設計が適切でなかったなどのもの

橋りょうの補強工事に用いる炭素繊維シートの選定が適切でなかったため工事費が過大となっていたもの[熊本県](279)


(1件 不当と認める国庫補助金 2,076,900円)

  部局等 補助事業者等
(事業主体)
補助事業等 年度 事業費
(国庫補助対象事業費)
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
(国庫補助対象事業費)
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(279) 熊本県 球磨郡球磨村 防災・安全交付金(道路) 26 25,193 
(25,193)
17,627 2,967 
(2,967)
2,076

この交付金事業は、球磨村が、球磨村渡地区において、村道渡大槻線の橋りょう(橋長19.2m、幅員3.6m、3径間)の補強を行うために、床版補強工、防護柵取替工、伸縮装置設置工等を実施したものである。

このうち、床版補強工は、本件工事で施工する防護柵の取替え及び地覆の改良に伴って、鉄筋コンクリート製の床版にかかる荷重が増加することから、これを補強するために、床版上面に炭素繊維シート(以下「シート」という。)を接着することにより所要の安全度を確保するものである。

同村は、床版上面に接着するシートの種類等については、目付量(シート1m2当たりの炭素繊維の重量)900g/m2の高弾性シート(注1)を選定し、当該シートを計52m2床版上面に1層接着することとすれば、床版の鉄筋に生ずる引張応力度(注2)が66.14N/mm2、コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度(注3)が6.02N/mm2となり、鉄筋の許容引張応力度(注2)140N/mm2、コンクリートの許容曲げ圧縮応力度(注3)8N/mm2をそれぞれ下回ることから応力計算上安全であるとして設計し、これにより施工していた。

しかし、本件床版補強工の設計に当たっては、汎用性のある複数のシートの種類等の中から、引張強度が高いという特性を有する高強度シート(注1)を選定すべきであったのに、同村は、シートの特性等を踏まえた比較を行わないまま、剛性が高いという特性を有する高価な目付量900g/m2の高弾性シート(設計に用いた単価55,000円/m2(見積り価格))を選定していた。

そこで、改めて、本件橋りょうの床版補強に用いるのに所要の安全度が確保でき、かつ、経済的なシートの種類等を選定して応力計算を行ったところ、市販の積算参考資料に掲載されている目付量450g/m2、単価7,210円/m2の高強度シートを計52m2床版上面に1層接着することとすれば、床版の鉄筋に生ずる引張応力度は131.94N/mm2、コンクリートに生ずる曲げ圧縮応力度は7.82N/mm2となり、それぞれの許容値を下回り所要の安全度が確保でき、かつ、最も経済的な設計になったと認められる。

したがって、上記のシートを用いることとして本件工事費を修正計算すると、22,225,320円となり、本件工事費25,193,216円はこれに比べて2,967,000円が過大となっていて、これに係る交付金相当額2,076,900円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同村において、所要の安全度が確保でき、かつ、経済的なシートを選定することについての検討が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
高弾性シート・高強度シート  「高弾性シート」とは、大きなひずみの発生が許されないような箇所で、より大きな荷重をシート側に分担させるために用いられる特に高い剛性を有するシートをいい、「高強度シート」とは、主材料である炭素繊維の持つ高強度の特性を生かした、橋りょうの補強等に幅広く用いられる、高い引張強度を有するシートをいう。
(注2)
引張応力度・許容引張応力度  「引張応力度」とは、材に外から引張力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容引張応力度」という。
(注3)
曲げ圧縮応力度・許容曲げ圧縮応力度  「曲げ圧縮応力度」とは、材に外から曲げようとする力がかかったとき、そのために材の内部に生ずる力のうち圧縮側に生ずる力の単位面積当たりの大きさをいう。その数値が設計上許される上限を「許容曲げ圧縮応力度」という。