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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

(1)物品管理簿に記録されていないなどの電気通信設備について物品管理簿に適切に記録するために必要な措置を講ずるよう適宜の処置を要求し、今後取得する電気通信設備について適切な管理を行うために、物品管理簿に必要事項を正確かつ速やかに記録する体制を整備するよう是正改善の処置を求めたもの


会計名
一般会計
部局等
国土交通本省、6地方整備局等、24河川国道事務所等
電気通信設備の概要
道路や河川の管理業務及び台風や局地的な集中豪雨等に対する防災業務に資するための無線通信設備等
検査の対象とした電気通信設備の台数及び重要物品の取得価格
18,818台(うち重要物品8,737台) 807億0182万余円
(平成27年度末)
物品管理簿に記録していない電気通信設備の台数及び重要物品の取得価格(1)
3,262台(うち重要物品1,962台) 83億3933万円
(平成27年度末)
国有財産である道路附属物等となったため物品に該当しないこととなった電気通信設備について、物品管理簿の数量等を減ずることなく記録したままとしていたなどの電気通信設備の台数及び重要物品の取得価格(2)
593台(うち重要物品 163台) 11億8312万円
(平成27年度末)
(1)及び(2)の計
3,855台(うち重要物品2,125台) 95億2246万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求めたものの全文】

道路事業、河川事業及び砂防事業において取得した電気通信設備の物品管理簿への記録について

(平成28年10月28日付け 国土交通大臣宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求める。

1 電気通信設備の管理等の概要

(1) 電気通信設備の概要

貴省は、道路事業、河川事業及び砂防事業(以下、河川事業と砂防事業を合わせて「河川等事業」という。)の一環として、道路や河川の管理業務及び防災業務に資することを目的とした気象観測施設、CCTVシステム(注1)、無線通信設備等(以下「電気通信設備」という。)を多数取得しており、これらの電気通信設備は貴省本省、地方整備局等及び河川国道事務所等が管理している。

(注1)
CCTVシステム  地方整備局等管内の回線内において、CCTVカメラから取得する画像情報等を共有するシステム。CCTVはClosed Circuit Tele Vision(閉回路テレビ)の略

(2) 国における物品の管理等

物品管理法(昭和31年法律第113号)等によれば、国の物品については、各省各庁の長が物品の取得、保管、供用及び処分を行い、各省各庁の長からその管理に関する事務の委任を受けた職員が物品管理官として当該事務を行うこととされている。そして、物品管理官は、物品管理簿を備えて、その管理する物品の分類及び品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項等を記録することとされており、取得価格が50万円以上の機械及び器具(以下「重要物品」という。)については、その取得価格を記録することとされている。

各省各庁の長は、重要物品について、物品管理簿に基づいて、毎会計年度間における増減及び毎会計年度末における現在額の報告書(以下「物品報告書」という。)を作成することとなっており、物品報告書に基づいた物品の現在額等は内閣から国会に報告されている。

(3) 貴省における物品の管理等

貴省は、国土交通省所管物品管理事務取扱規則(平成13年国土交通省訓令第63号)により、貴省本省における物品の管理については大臣官房会計課長を、地方整備局等における物品の管理については地方整備局総務部長等を、それぞれ物品管理官に指定しており、河川国道事務所等における物品の管理については、当該河川国道事務所等の長を、物品管理官の事務の一部を分掌する分任物品管理官に指定している。

(4) 道路法等に基づく管理等

道路法(昭和27年法律第180号)によれば、道路の構造の保全、安全かつ円滑な道路の交通の確保その他道路の管理上必要な施設又は工作物は道路の附属物とされ、電気通信設備のうち、道路区域内に設置された道路情報提供装置等はこれに当たるとされている。また、電気通信設備のうち、水位観測や水門制御のための装置等は河川法(昭和39年法律第167号)に規定する河川管理施設に、治水上砂防のために砂防指定地内に設置された装置等は砂防法(明治30年法律第29号)に規定する砂防設備に、それぞれ当たるとされている。そして、これらの道路の附属物、河川管理施設及び砂防設備(以下、これらを合わせて「道路附属物等」という。)は、国有財産法(昭和23年法律第73号)に規定する国有財産に該当するものであり、その管理については、道路法、河川法又は砂防法に基づき行われることとなる。

そして、電気通信設備のうち国有財産に該当しないものについては、物品管理法等に基づき物品として管理されることとなる。

2 本院の検査結果

(検査の観点及び着眼点)

貴省は、前記のとおり、道路や河川の管理業務及び台風や局地的な集中豪雨等に対する防災業務に資するために、各種の電気通信設備を取得し管理しており、その数は多数に上っている。

そこで、本院は、正確性、合規性等の観点から、物品管理法等に基づき物品として管理されている電気通信設備について、物品管理簿に正確に記録されているか、道路附属物等となった電気通信設備について、物品管理簿から適切に数量等が減じられているかなどに着眼して検査した。

(検査の対象及び方法)

検査に当たっては、平成27年度末現在、貴省本省、10地方整備局等(注2)及び28河川国道事務所等(注3)(以下、地方整備局等と河川国道事務所等を合わせて「事務所等」という。)が、道路事業及び河川等事業において取得し管理している電気通信設備(道路事業13,061台(注4)(うち重要物品6,056台、取得価格計517億4322万余円)、河川等事業5,757台(うち重要物品2,681台、取得価格計289億5860万余円)、計18,818台(うち重要物品計8,737台、取得価格合計807億0182万余円))を対象として、貴省本省、10地方整備局等及び28河川国道事務所等において、関係書類及び電気通信設備の現況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、調書の作成及び提出を求め、その内容を集計、分析するなどして検査した。

(注2)
10地方整備局等  東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州各地方整備局、北海道開発局、沖縄総合事務局
(注3)
28河川国道事務所等  南部、常総、宇都宮、岐阜、名四、滋賀、広島各国道事務所、湯沢、酒田、羽越、金沢、福井、豊岡、浜田、福山、香川、松山、大分、佐伯、延岡各河川国道事務所、多治見砂防国道事務所、中部、近畿、四国、九州各技術事務所、網走、留萌、稚内各開発建設部
(注4)
電気通信設備の数量の単位は、テレメータ観測局装置のように「台」を用いるもの、道路情報表示設備のように「基」を用いるものなど様々であるため、表記上「台」で統一している。また、台数については、国土交通省制定の電気通信施設点検基準(案)に基づく点検実績等により把握したものである。

(検査の結果)

検査したところ、次のとおり、電気通信設備3,855台(うち重要物品2,125台、取得価格計95億2246万余円)について、物品管理簿の記録が適切でなく、このため物品報告書が重要物品の現況を正確に反映したものとなっていない事態が見受けられた。

(1) 物品管理簿に記録していない事態

貴省本省及び30事務所等(注5)は、表1のとおり、庁舎内等に設置して管理している物品であるCCTVシステム等の電気通信設備18,818台のうち3,262台(道路事業2,675台、河川等事業587台。うち重要物品1,962台、取得価格計83億3933万余円)について、物品管理簿に記録していなかった。これらの中には、長期間未記録となっているものや取得日が不明となっているものが多数見受けられた。

表1 物品管理簿に記録していない事態(平成27年度末現在)

(単位:台、円)
物品管理簿に記録していない事態
  うち重要物品
台数 台数 取得価格
道路 2,675 1,565 6,502,142,823
河川等 587 397 1,837,195,986
3,262 1,962 8,339,338,809
(注)
平成27年度末現在で取得から3か月以内のものを除いている。

<事例1>

福井河川国道事務所は、庁舎内等に設置された電気通信設備のうち、道路情報表示装置の制御装置等516台(道路事業510台、河川等事業6台。うち重要物品366台、取得価格計10億0219万余円)について、手続に対する理解が十分でなかったことにより、これらの電気通信設備を物品管理簿に記録しておらず、その全てが取得日不明となっていた。

(注5)
30事務所等  東北、北陸、中部、近畿、四国各地方整備局、北海道開発局、南部、岐阜、滋賀、広島各国道事務所、湯沢、酒田、羽越、金沢、福井、豊岡、浜田、福山、香川、松山、大分、佐伯、延岡各河川国道事務所、多治見砂防国道事務所、中部、近畿、四国各技術事務所、網走、留萌、稚内各開発建設部

(2) 国有財産である道路附属物等となったため物品に該当しないこととなった電気通信設備について、物品管理簿の数量等を減ずることなく記録したままとしていたなどの事態

12事務所等(注6)は、表2のとおり、道路区域内、砂防指定地内等に設置して管理しているテレメータ観測局装置等の電気通信設備593台(道路事業526台、河川等事業67台。うち重要物品163台、取得価格計11億8312万余円)について、国有財産である道路附属物等となったため物品に該当しないこととなったのに、物品管理簿に記録したままとするなどしていた。

表2 国有財産である道路附属物等となったため物品に該当しないこととなった電気通信設備について、物品管理簿の数量等を減ずることなく記録したままとしていたなどの事態(平成27年度末現在)

(単位:台、円)
国有財産である道路附属物等となったため物品に該当しないこととなった電気通信設備について、物品管理簿の数量等を減ずることなく記録したままとしていたなどの事態
  うち重要物品
台数 台数 取得価格
道路 526 120 851,950,310
河川等 67 43 331,172,920
593 163 1,183,123,230
(注)
平成27年度末現在で取得から3か月以内のものを除いている。

<事例2>

滋賀国道事務所は、テレメータ観測局装置等の道路事業に係る電気通信設備86台(うち重要物品29台、取得価格計1億3748万余円)について、物品として取得し物品管理簿に記録した。その後、これらの電気通信設備を道路区域内にある中継所等に設置したことから、これらの電気通信設備は国有財産である道路法上の道路附属物となったため物品に該当しないこととなったのに、物品管理簿から減ずることなく記録したままとしていた。

(注6)
12事務所等  南部、滋賀両国道事務所、金沢、福井、豊岡、浜田、福山、松山各河川国道事務所、多治見砂防国道事務所、網走、留萌、稚内各開発建設部

(是正及び是正改善を必要とする事態)

物品である電気通信設備を物品管理簿に記録していなかったり、道路附属物等となった電気通信設備について、物品管理簿の数量等を減ずることなく記録したままとしていたりなどしていて、物品管理簿、ひいては物品報告書が物品の現況を正確に反映したものとなっていない事態は適切ではなく、是正及び是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、事務所等において、電気通信設備について、物品管理簿に数量等を正確に記録することについて理解が十分でないこと、また、物品管理簿に必要事項を正確かつ速やかに記録する体制が十分でないことなどにもよるが、貴省本省において、次のことなどによると認められる。

  • ア 電気通信設備を物品として取得するなどした際に、物品管理簿に速やかに記録することについての事務所等に対する指導が十分でないこと
  • イ 電気通信設備について、管理する物品が道路附属物等となった際に、速やかに物品管理簿の数量等を減ずることなどについての事務所等に対する周知が十分でないこと

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置

物品管理簿は、国の物品を適切に管理するための基本的な帳簿であり、各省各庁の長は、物品管理簿の記録内容に基づいて、毎年度、物品報告書を作成している。そして、物品報告書に基づき毎会計年度末における重要物品の現在額等を内閣から国会に報告することは、国民に対して重要物品の現況を明らかにするという性格を有するものとなっている。したがって、物品の数量等及び重要物品の取得価格を正確に記録することは、極めて重要である。

ついては、貴省において、前記の物品管理簿に記録されていないなどの電気通信設備について物品管理簿に適切に記録するために必要な措置を講ずるよう是正の処置を要求するとともに、今後取得する電気通信設備について適切な管理を行うために、物品管理簿に必要事項を正確かつ速やかに記録する体制を整備するよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

  • ア 電気通信設備を物品として取得するなどした際に、物品管理簿に速やかに記録することについて、事務所等を指導すること
  • イ 電気通信設備が道路附属物等となった際に、速やかに物品管理簿の数量等を減ずることなどについて、事務所等に周知すること