国土交通省は、同省が設置し、及び管理している20空港(注1)において、航空機の離着陸に必要な滑走路、着陸帯、誘導路等から構成される空港基本施設のほか、灯光により航空機の航行を援助するための施設等の国有財産等を管理している。また、国土交通省は、防衛省等が設置し、及び管理している7飛行場(注2)において、一般公衆の利用に供する目的で整備し、かつ、専ら一般公衆の利用に供する施設の国有財産等も管理している(以下、これらの空港及び飛行場を「空港」という。)。
東京、大阪両航空局(以下、両局を合わせて「地方航空局」という。)は、国有資産等所在市町村交付金法(昭和31年法律第82号。以下「交付金法」という。)等に基づき、上記27空港の国有財産等のうち、空港の用に供する固定資産(以下「空港財産」という。)が所在する市町(特別区にあっては東京都)に対して、国有資産等所在市町村交付金(以下「交付金」という。)を毎年度交付している。
交付金法によれば、空港財産に係る交付金の交付額は、交付金算定標準額として交付年度の前々年度の末日における空港財産の国有財産台帳価格等を集計した額の2分の1又は4分の1相当額に100分の1.4を乗じて得た額とすることとされている。
一方、交付金法等によれば、空港財産のうち国有財産法施行細則(昭和23年大蔵省令第92号)別表第1国有財産区分種目表に規定する照明装置等に該当するものについては交付金を交付しないこととされている(以下、交付金の交付対象とならない空港財産を「非該当財産」という。)。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性等の観点から、空港財産に係る交付金の交付は適切に行われているかなどに着眼して、地方航空局が平成26、27両年度に交付した交付金計130億0428万余円を対象に、国土交通本省及び地方航空局において、地方航空局が作成した交付金の算定調書等の関係書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
国土交通省は、非該当財産に含まれる空港財産の具体的な範囲を地方航空局に対して示していなかった。このため、地方航空局では、交付金の交付に当たり、各担当職員が、国有財産台帳等に記載された空港財産に係る種目、図面等により各空港財産が非該当財産に含まれるかどうかを判断していた。そして、地方航空局の担当職員が、航空機を誘導するための灯器(以下「進入灯」という。)を据え付けるために空港の滑走路端に設置された橋りょう(以下「進入灯橋りょう」という。)等の空港財産が非該当財産に含まれないと判断して交付金の交付対象としていたものが、7空港において16件見受けられた。
しかし、上記16件の進入灯橋りょう等は、進入灯のために設置され、進入灯と一体で照明装置として機能する空港財産であることから、非該当財産である照明装置の一部であり、交付金の交付対象とならないものと認められた。
したがって、表のとおり、26、27両年度における空港財産に係る交付金のうち、前記の16件に係る交付金計5781万余円(26年度2967万余円、27年度2814万余円)は過大に交付されていると認められた。
空港名 | 件数 | 平成26年度交付金交付額
(円) |
27年度交付金交付額
(円) |
---|---|---|---|
東京国際 | 2 | 3,756,700 | 3,587,100 |
広島 | 5 | 299,000 | 279,900 |
高松 | 3 | 3,795,800 | 3,610,000 |
福岡 | 1 | 4,200 | 3,700 |
北九州 | 2 | 10,746,800 | 10,209,400 |
長崎 | 1 | 7,995,100 | 7,595,300 |
那覇 | 2 | 3,078,000 | 2,858,500 |
計 | 16 | 29,675,600 | 28,143,900 |
上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
東京航空局は、東京国際空港において、A、B、C、D各滑走路端に設置された四つの進入灯橋りょうを管理している。これらの進入灯橋りょうは、進入灯と一体で照明装置として機能するものであり、東京航空局は、A、B、C各滑走路の進入灯橋りょうについては非該当財産に含まれるものとして交付金の交付対象としていなかった。しかし、D滑走路の進入灯橋りょうについては非該当財産に含まれないと判断して交付金の交付対象としていたため、D滑走路の進入灯橋りょうに係る交付金計734万余円(平成26年度375万余円、27年度358万余円)が過大に交付されていた。
このように、交付金が過大に交付されていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、国土交通省において非該当財産に含まれる空港財産の範囲を明確に示していなかったこと、地方航空局において非該当財産に含まれる空港財産の範囲についての理解が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、国土交通省は、28年8月に地方航空局に対し事務連絡を発して、非該当財産に含まれる空港財産の範囲を明確に示して、交付金の交付を適切に行うよう指導する処置を講じた。