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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 国土交通省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(7)火山観測装置の簡易点検の実施に当たり、具体的な点検内容等を定めた要領を作成して管区気象台に通知することなどにより、簡易点検が適切に実施されるよう改善させたもの


会計名
一般会計
部局等
気象庁本庁、東京管区気象台
単独観測点における簡易点検の概要
常時観測火山の単独観測点において、テレメータ装置等の機能及び性能を維持することなどを目的として、テレメータ装置等の点検を行うもの
単独観測点数及び設置されている火山観測装置の物品管理簿価格
98か所 6億9135万余円(平成28年3月末現在)
東京管区気象台の単独観測点数及び設置されている火山観測装置の物品管理簿価格
20か所 1億2038万余円(平成28年3月末現在)
上記のうち簡易点検を実施していなかった単独観測点数及びテレメータ装置等の物品管理簿価格
18か所 8044万円

1 常時観測火山等の概要等

(1) 常時観測火山の概要

気象庁は、気象業務の健全な発達を図り、災害の予防、交通の安全の確保等に寄与することなどを目的として、気象業務法(昭和27年法律第165号)等に基づき気象、地象等の観測を行い、一般の利用に適合する予報及び警報等を迅速に提供するための業務を実施している。そして、気象庁は、全国110の活火山について火山活動の監視、観測等を行っており、このうち、「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として選定された47火山については、常時観測火山として、火山活動の監視、観測等を24時間体制で行っている。

そして、気象庁は、平成21年度以降、噴火警報等の精度向上を図るために、常時観測火山において火山観測体制の強化及び既存の地震計、傾斜計、空振計(以下、これらを合わせて「地震計等」という。)等の機能強化により、地震計等を用いたより詳細かつ精密な監視、観測等を行う観測点(以下「総合観測点」という。)を硫黄島を除く46火山に整備しており、また、総合観測点以外の29火山の観測点においても地震計等による監視、観測等を行っている(以下、総合観測点以外の観測点を「単独観測点」という。)。

これらの観測点において観測されたデータは、観測点及び中継点に設置しているテレメータ装置(注1)(以下、テレメータ装置と無線アンテナ等の周辺機器を合わせて「テレメータ装置等」という。)を経由して、専用回線を通じて気象庁本庁及び福岡管区気象台にそれぞれ設置された火山監視・情報センターシステム(以下「システム」という。)に送信されている(以下、地震計等及びテレメータ装置等を合わせて「火山観測装置」という。)。

(注1)
テレメータ装置  常時観測を行っている火山において、地震計等による観測データをシステムに送信するための装置

また、札幌、仙台、福岡各管区気象台は、各管内に所在する常時観測火山について火山活動の監視、観測等を行っているが、東京管区気象台管内に所在する常時観測火山については同管区気象台ではなく気象庁本庁が火山活動の監視、観測等を行っている(表の(1)参照)。

(2) 火山観測装置の維持管理等

気象庁は、火山観測装置が積雪等の影響により機器の劣化や観測環境の悪化が起こりやすい環境に設置されている場合が多いことを踏まえて、観測精度の維持、劣化の有無の確認等を目的として作動状況を確認するなどの点検、調整等を行っている。

そして、札幌、仙台、東京、福岡各管区気象台(以下「4管区気象台」という。)は、各管内に所在する総合観測点及び単独観測点に設置した火山観測装置について、気象庁本庁が維持管理を行う硫黄島を除き、点検、調整等の維持管理を行っている(表の(2)参照)。

表 各管区気象台管内に所在する常時観測火山等

管区気象台 各管区気象台管内に所在する常時観測火山(47火山) (1) 監視、観測等を行う官署 (2) 維持管理を行う官署
札幌管区気象台 アトサヌプリ雌阿寒岳、大雪山、十勝岳樽前山、倶多楽、有珠山北海道駒ヶ岳恵山(9火山) 札幌管区気象台 札幌管区気象台
仙台管区気象台 岩木山、秋田焼山、岩手山秋田駒ヶ岳、鳥海山、栗駒山、蔵王山、吾妻山安達太良山磐梯山(10火山) 仙台管区気象台 仙台管区気象台
東京管区気象台 那須岳、日光白根山、草津白根山浅間山、新潟焼山、焼岳、乗鞍岳、御嶽山白山、富士山、箱根山、伊豆東部火山群伊豆大島、新島、神津島、三宅島、八丈島、青ヶ島(18火山) 気象庁本庁 東京管区気象台
硫黄島(1火山) 気象庁本庁
福岡管区気象台 鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山雲仙岳霧島山桜島薩摩硫黄島口永良部島諏訪之瀬島(9火山) 福岡管区気象台 福岡管区気象台
注(1)
下線を付した28火山は、総合観測点と単独観測点の両方が設置されている火山である。
注(2)
下線を付していない19火山のうち、硫黄島は単独観測点のみ設置されている火山であり、残りの18火山は総合観測点のみ設置されている火山である。

気象庁本庁は、総合観測点について、21、22両年度に集中的に整備を行い、その後、23、24両年度に火山観測装置の通信機能強化等を実施しており、また、単独観測点について、21、22両年度に、総合観測点の整備と合わせて火山観測装置の通信機能強化等を実施している。気象庁本庁は、これにより遠隔操作によって地震計等の作動状況を確認することが可能となったが、火山観測装置が観測環境の悪化が起こりやすい環境にあることを考慮して、従来毎年実施していた点検、調整等について最低限2年に1度実施する必要があると判断して、隔年で点検業者と請負契約を締結して点検、調整等を実施することにしている。

また、気象庁本庁は、総合観測点について、より詳細かつ精密な監視、観測等を行うために全ての火山観測装置を対象として点検、調整等を行うものの、単独観測点については、観測データの送信等に重要なテレメータ装置等のみを対象として、作動状況の確認等の点検、調整等を実施することにしている(以下、単独観測点においてテレメータ装置等のみを対象として行う点検等を「簡易点検」という。)。そして、気象庁本庁は、札幌、福岡両管区気象台においては24年度から、仙台、東京両管区気象台においては25年度から、それぞれ隔年で簡易点検を実施することにしている。

また、気象庁本庁は、単独観測点における簡易点検の実施に係る所要額について、24、25両年度分は業者から見積りを徴するなどして、26年度分以降は前年度の実績を参考としてそれぞれ算定した後、4管区気象台に対して当該所要額を示している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

27年度において、観測データが1週間以上送信されなかった障害は、通信事業者が提供する通信回線の途絶や発生原因が不明なものなども含めて、総合観測点及び単独観測点で計23件発生しており、火山観測装置を適切に維持管理することが必要である。

そこで、本院は、有効性等の観点から、火山活動の監視、観測等を確実に行うために必要な火山観測装置の維持管理が適切に実施され、維持管理の実施状況を把握する体制が整備されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、28年3月末現在において総合観測点(46火山における計56か所)に設置されている火山観測装置(物品管理簿価格計9億9789万余円)及び単独観測点(29火山における計98か所)に設置されている火山観測装置(物品管理簿価格計6億9135万余円)を対象として、気象庁本庁及び札幌、仙台、東京各管区気象台において、契約書、仕様書、物品管理簿等の関係書類及び火山観測装置の維持管理の状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、福岡管区気象台については、気象庁本庁を通じて関係書類を徴するなどして検査した。

(検査の結果)

検査したところ、簡易点検について、次のような事態が見受けられた。

すなわち、4管区気象台のうち、東京管区気象台においては、単独観測点(8火山(注2)における計20か所)に設置されている火山観測装置(物品管理簿価格計1億2038万余円)のうち、有線により観測データをシステムに送信している白山を除く7火山における計18か所の単独観測点に設置されている全てのテレメータ装置等(物品管理簿価格計8044万余円)について、気象庁本庁から簡易点検の具体的な点検内容等が文書により指示されなかったため、25、27両年度に隔年で実施することとされていた簡易点検を実施していなかった。このため、東京管区気象台管内の単独観測点のテレメータ装置等は、火山観測装置による観測データをシステムに確実に送信できなくなるおそれがある事態となっていた。

(注2)
8火山  那須岳、草津白根山、浅間山、御嶽山、白山、伊豆東部火山群、伊豆大島、三宅島

一方、札幌、福岡両管区気象台は24年度以降、仙台管区気象台は25年度以降それぞれ隔年で簡易点検を実施しており、簡易点検によって発見された、ケーブル接続ボックス内の結露や通信ケーブル等の被覆の損傷等に対処して、適切な対応がなされるなど簡易点検を行った効果が発現していた。

また、気象庁本庁は、火山観測装置による観測データをシステムに確実に送信できるように、4管区気象台における簡易点検の実施状況を把握する必要があったのに、これを報告させることとしておらず、東京管区気象台が簡易点検を実施していない状況を把握していなかった。

このように、簡易点検を適切に実施しておらず観測データをシステムに確実に送信できなくなるおそれがある事態及び気象庁本庁において簡易点検の実施状況について把握していなかった事態は、火山観測装置による観測データを確実に把握する上で、ひいては国民に対して火山に関する情報を提供する上で適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、気象庁本庁において、単独観測点のテレメータ装置等の簡易点検について、4管区気象台に対して具体的な点検内容等を文書により的確に通知することの認識が欠けていたこと、4管区気象台が行う簡易点検の実施状況を把握する体制が整備されていなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、気象庁本庁は、28年8月に、火山観測装置の簡易点検に関する具体的な点検内容等を定めた点検調整実施要領を作成して4管区気象台に通知するとともに、簡易点検の実施状況について報告させその実施状況を把握する体制を整備する処置を講じた。