環境本省は、平成22年度に、平成22年度国際生物多様性年クロージング式典開催等業務(以下「クロージング式典業務」という。)を一般競争契約により、また、平成22年度国際生物多様性年国内委員会運営等業務(以下「国内委員会業務」という。)及び平成22年度国際生物多様性年及び生物多様性条約COP10普及促進業務(以下「普及促進業務」という。)を随意契約により、いずれも株式会社電通(以下「会社」という。)との間で、それぞれ契約額75,600,000円、50,000,000円、42,000,000円、計167,600,000円で請け負わせて実施している。
クロージング式典業務は、生物多様性条約第10回締約国会議(以下「COP10」という。)開催国である日本における国際生物多様性年のクロージング式典(以下「式典」という。)の開催に当たり、国内外から関係者を招致して、関係者の一部については旅費等を負担して招へいするなどの業務である。また、国内委員会業務は、国際生物多様性年国内委員会を運営し、各種イベントを開催するなどして、生物多様性の保全等に取り組むことを促進するなどのために、地球生きもの委員会幹事会(以下「幹事会」という。)を運営するなどの業務である。そして、普及促進業務は、国際連合が任命した日本在住のCOP10名誉大使(以下「名誉大使」という。)を活用したCOP10及び国際生物多様性年に関連するイベントの企画・運営を行うなどの業務である。
本件3契約の契約書によれば、会社は仕様書等に基づき業務を行うものとされているほか、環境本省は、必要があると認めるときは、仕様書等の変更内容を会社に通知して、仕様書等を変更することができるとされており、この場合において、環境本省は、必要があると認められるときは履行期間又は契約額を変更しなければならないとされている。
そして、環境本省は、本件3契約の仕様書において、会社に対して、実際に行った業務内容を取りまとめた報告書(以下「報告書」という。)を成果物として提出させることとしている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、契約は仕様書のとおり履行されているか、仕様書の内容を変更する必要が生じたときは適切な事務手続がとられているかなどに着眼して、前記の3契約を対象として、環境本省において、契約書、仕様書、予定価格調書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
ア クロージング式典業務について、仕様書、予定価格調書等によれば、国外から招致する者(以下「招へい者」という。)は13名、また、式典で発言する機会がある者(以下「発言者」という。)は招へい者を含めて20名とされていた。そして、招へい者13名に係る旅費と、発言者の案内・接遇を行う者(以下「接遇者」という。)20名に係る旅費、人件費等として計24,914,841円が計上されていた。
しかし、報告書によれば、実際に来日した招へい者は5名であり、また、発言者は13名で、これに係る接遇者も13名となっていて、これらに要する旅費、人件費等を計算すると計12,939,996円であった。
イ 国内委員会業務について、仕様書、予定価格調書等によれば、幹事会の開催回数は7回とされ、幹事会の幹事に係る国内旅費等として計8,620,267円が計上されていた。
しかし、報告書によれば、幹事会は実際には3回しか開催されておらず、これらに要する旅費等を計算すると計3,833,043円であった。
ウ 普及促進業務について、仕様書、予定価格調書等によれば、名誉大使と国際連合の関係者との対談(以下「国連関係者との対談」という。)はニューヨーク及びモントリオールで計2回行われることとされ、名誉大使等に係る日本からの旅費として計4,817,334円が計上されていた。
しかし、報告書によれば、国連関係者との対談は、1回は仕様書どおりニューヨークで行われていたものの、残りの1回は、モントリオールではなく、東京で行われており、これに要する旅費を計算すると計2,434,667円であった。
前記のとおり、ア、イ、ウいずれにおいても、環境本省は、仕様書等で予定していた業務内容の重要な項目である招へい者等の人数、幹事会の開催回数、国連関係者との対談の場所等について変更していたのに、本件3契約の契約額の変更を行わないままその全額を会社に支払っていた。
したがって、本件3契約に係る旅費、人件費等について、契約額の変更を適切に行ったとして適正な契約額を算定すると、計144,886,453円となり、前記の契約額計167,600,000円との差額22,713,547円が過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、環境本省において、仕様書等で予定していた業務内容の重要な項目を変更したことに伴い契約額の変更を行うことに対する認識が欠けていたことなどによると認められる。