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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 環境省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)委託業務の実施に必要な設備等をリースにより調達する場合において、合理的な基準に基づいてリース期間を設定することなどを基本方針等に明示することにより、委託費の対象経費となる設備等のリース料を適切に算定させるなどするよう改善させたもの


会計名及び科目
エネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)
(項)エネルギー需給構造高度化対策費
部局等
環境本省
契約の概要
調査、測定等に係る業務を他の機関等に委託して実施するもの
契約の相手方
12会社等
検査の対象とした委託契約件数及び委託費
35契約 42億9575万余円(平成23年度~26年度)
委託業務の終了後に設備等を継続して使用することとしていた委託契約件数及び委託費
18契約 20億0624万余円(平成23年度~26年度)
上記委託費のうち過大に算定されていたリース料(1)
2億0357万円
委託業務の終了後に設備等を継続して使用しないこととしていたのに継続して使用していた委託契約件数及び委託費
9契約 16億6360万余円(平成23年度~26年度)
上記委託費のうち過大に算定されていたリース料(2)
3億3297万円
(1)及び(2)の計
5億3655万円

1 委託業務等の概要

(1) 委託業務の概要

環境省は、事務、事業等の効率的な執行等のために、他の機関等と委託契約を締結して調査、測定等に係る業務を実施しており、委託業務に要する経費として委託費を受託者に支払うこととしている。

環境省委託契約事務取扱要領(平成13年1月環境省訓令第27号。以下「取扱要領」という。)によれば、支出負担行為担当官等は、契約に当たって、委託業務仕様書又は委託業務実施要領に、業務の目的、業務実施期間等を定めなければならず、受託者が委託業務を完了したときは、受託者から委託業務完了報告書を提出させて、検査職員による検査を行うことなどにより委託業務の完了を確認することとされている。

(2) 委託費の算定

取扱要領によれば、支出負担行為担当官等は、委託費の算定に当たり、当該業務の委託業務仕様書又は委託業務実施要領にのっとり、算出基準を明らかにして合理的な単価に基づいて行わなければならないとされている。

そして、環境省は、「環境省における委託業務経費の算出等に関する基本方針」(平成24年環境省大臣官房会計課長通知。以下「基本方針」という。)等において、委託費の支払については、契約金額を上限に委託業務の実施に要した経費を支払う実費弁済の考え方によることとしており、その経費については、人件費、業務費、一般管理費等に区分して、それぞれ算出方法を具体的に定めている。

基本方針によれば、委託業務に直接必要となる設備等を調達するための経費は、購入や製造による場合は備品費として、また、リース等による場合は、当該委託業務の業務期間内に要する費用のみを借料及び損料としてそれぞれ業務費に計上できるとされている。

このうち、リースは、リース会社が賃借しようとする者に代わって設備等を購入して、当該設備等の購入価格と諸経費を合わせた経費をリース期間を通じてリース料により回収するものであるが、基本方針等にはリース料の算定方法は明示されていない。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、委託費の対象経費となる設備等のリース料の算定に係るリース期間は適切に設定され、リース料が適切に算定されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、平成25、26両年度に終了した委託業務に係る契約(契約締結は23年度から26年度まで)のうち、設備等の調達に係るリース料を借料及び損料として委託費の対象経費に計上して、環境本省が、温室効果ガス削減対策等の検証を目的として12受託者(注)との間で締結した計35契約(契約金額計42億9575万余円、うちLED照明器具等の37設備等に係るリース料計13億9653万余円)を対象として、環境本省及び1受託者において、契約書、見積書、委託業務精算報告書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、環境本省からリース契約に関する調書の提出を受け、その内容を確認するなどの方法により検査した。

(注)
12受託者  株式会社アバンアソシエイツ、伊藤組土建株式会社、株式会社エディット、佐川急便株式会社、国立研究開発法人水産大学校、一般財団法人石炭エネルギーセンター、東京急行電鉄株式会社、中条町農業協同組合(平成26年2月1日以降は胎内市農業協同組合)、阪急電鉄株式会社、山梨交通株式会社、株式会社LIXIL、学校法人早稲田大学

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 委託業務の終了後も設備等を継続して使用することとしていた委託契約

前記35契約のうち、18契約(契約金額計20億0624万余円)における21設備等(契約金額のうちのリース料計2億8595万余円)については、受託者が環境省に提出していた応募書類において、委託業務の終了後も受託者が継続して使用することとしていた。

しかし、このうち19設備等(契約金額のうちのリース料計2億8569万余円)については、設備等の使用可能年数として一般的に認められている「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(昭和40年大蔵省令第15号)に定められた期間(以下「法定耐用年数」という。)等の合理的な基準よりも大幅に短い期間となっている当該委託業務期間内における設備等の使用期間等をリース期間と設定してリース料を算定しており、この額を委託費の対象経費としていた。そして、受託者は、委託業務の終了後も、当該設備等をリース会社から低額で再リースしたり、低額で買い取ったりして継続して使用するなどしていた。

上記の事態について、委託費の対象経費が最も多額となっている事例を示すと次のとおりである。

<事例>

環境省は、平成23年度から26年度までの間に、駅構内の施設等に高効率のLED照明器具等の設備を設置することなどによる二酸化炭素削減量等を検証する業務を、毎年度、東京急行電鉄株式会社と委託契約(契約金額計5億8530万円)を締結して実施している。そして、同会社は、委託業務の終了後も当該設備を継続して使用することとしていた。

同会社は、本件業務を行うために必要となる当該設備のリース料について、法定耐用年数(180か月)等の合理的な基準よりも大幅に短い期間となる委託業務における当該設備の使用期間29か月をリース期間として設定してリース料を計1億3129万余円と算定し、この額を委託費の対象経費としていた。そして、同会社は、委託業務の終了後、当該設備等をリース会社から2782万余円で買い取って継続して使用していた。

(2) 委託業務の終了後、継続して使用しないこととしていた委託契約

前記35契約のうち、17契約(契約金額計22億8950万余円)における16設備等(契約金額のうちのリース料計11億1058万余円)については、受託者が環境省に提出していた応募書類において、委託業務の終了後は当該設備等を継続して使用しないこととしていた。そして、当該設備等についても(1)と同様に、法定耐用年数等の合理的な基準よりも大幅に短い期間となっている当該委託業務期間内における設備等の使用期間等をリース期間と設定してリース料を算定しており、この額を委託費の対象経費としていた。

しかし、上記の16設備等について、委託業務終了後の状況を確認したところ、9契約(契約金額計16億6360万余円)における6設備等(契約金額のうちのリース料計3億8615万余円)については、受託者が委託業務の終了後も、当該設備等をリース会社から低額で再リースしたり、低額で買い取ったりなどして継続して使用していた。

(1)及び(2)のように、設備等のリースによる調達に当たり、委託業務における設備等の使用期間等をリース期間として設定しリース料を算定して、この額を当該委託業務に要するリース料として委託費の対象経費とすることは、設備等の総額に相当する額を委託費の対象経費として支払うこととなり、委託業務の終了後に、当該設備等を継続して使用する場合、受託者が自ら負担すべきリース料も委託費の対象経費に含めることになる。

このように、委託業務における設備等のリースによる調達に当たり、受託者が調達した設備等を、委託業務の終了後も継続して使用しているにもかかわらず、委託業務の終了後に受託者が自ら負担すべきリース料を含めて委託費の対象経費としていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(過大に算定されていたリース料)

リースにより調達された設備等のリース料の総額を法定耐用年数等で除して算出した月額単価に使用期間を乗じて算定した委託業務期間内における設備等の使用期間に発生するリース料のみを委託費の対象経費としたとすると、(1)の19設備等のリース料は計8211万余円、(2)の6設備等のリース料は計5317万余円となり、委託費の対象経費として計上していたそれぞれのリース料計2億8569万余円、計3億8615万余円は、これに比べて2億0357万余円、3億3297万余円、計5億3655万余円過大に算定されていたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、環境省において、次のことなどによると認められた。

  • ア 委託業務に必要となる設備等をリースにより調達する場合に、委託費の対象経費となる設備等のリース料の算定に用いるリース期間の設定方法を基本方針等に明示していなかったこと
  • イ 受託者がリースにより調達した設備等を委託業務の終了後に継続して使用しないこととする場合に、受託者に対して委託業務の終了の際に、設備等の継続使用の有無を環境省に報告させるなどの体制を整備していなかったこと

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、環境省は、委託業務における設備等に係る経費の算定等を適正なものとするよう、28年10月に基本方針を改正するなどして、次のような処置を講じた。

ア 受託者が委託業務に必要となる設備等をリースにより調達する場合に、法定耐用年数等の合理的な基準に基づいてリース期間を設定するなどして、委託業務における当該設備等の使用期間に発生した分のリース料のみを委託費の対象経費とするよう、基本方針に明示した。

イ 受託者がリースにより調達した設備等を委託業務の終了後に継続して使用しないこととする場合に、受託者に対して委託業務の終了の際に委託業務完了報告書等により設備等の継続使用の有無を環境省に報告させるなどの体制を整備するとともに、当該設備等を継続して使用する場合には、法定耐用年数等の合理的な基準に基づき算定したリース料との差額を返還させることなどについて基本方針等に定めた。