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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第1 日本私立学校振興・共済事業団|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

私立大学等経常費補助金(社会人の組織的な受入れに係る特別補助)について、算定対象に修業年限を超えた学生を含めたり研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に含めたりすることとならないようにその要件等を見直すことにより、社会人受入れ促進の意義等を踏まえた効率的、効果的なものとなるよう意見を表示したもの


科目
(助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等
日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
私立大学等経常費補助金(社会人の組織的な受入れに係る特別補助)の概要
社会人の受入れを推進するために、社会人の就学を促進する取組を実施して、25歳以上の学生が在籍している私立大学等に対して私立大学等経常費補助金を増額するもの
上記特別補助の補助金が交付されていた私立大学等に係る学校法人数及び補助金交付額
478学校法人 202億5101万余円(平成23年度~26年度)
検査の対象とした私立大学に係る学校法人数及び補助金交付額
23学校法人 13億5929万余円
修業年限を超えた学生を算定対象に含めていた私立大学に係る学校法人数及び補助金相当額
20学校法人 1億9813万円(平成23年度~26年度)
研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に算定対象に含めていた私立大学に係る学校法人数及び補助金相当額
23学校法人 2億8308万円(背景金額)
(平成23年度~26年度)

【意見を表示したものの全文】

私立大学等経常費補助金の社会人の組織的な受入れに係る特別補助の取扱いについて

(平成28年10月28日付け 日本私立学校振興・共済事業団理事長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

貴事業団は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立の大学、短期大学及び高等専門学校(以下「私立大学等」という。)を設置する学校法人に対して、私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高めることを目的として、私立大学等における教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。そして、経常的経費のうち教育研究経常費については、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のために特に必要があると認めるときは、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。

(2) 大学における社会人受入れの促進に向けた取組

文部科学省中央教育審議会大学分科会が平成22年6月に取りまとめた「中長期的な大学教育の在り方に関する第四次報告」(以下「第4次報告」という。)等によれば、大学における社会人受入れの促進は、我が国の知的資本としての成人層の能力向上という我が国社会全体の課題への対応策として取り組むべきものであり、社会人受入れを促進する意義等(以下「社会人受入れ促進の意義等」という。)は、次のとおりとされている。

① 職業上の専門的知識・技能・能力の向上や就業、社会活動参画等を目的とした専門的知識・技能の獲得等、多様かつ明確な学修ニーズを持つ一人一人の要請に応えることになる。

② 就業者が専門的知識・技能を獲得したり、高齢者や就業していない者が専門的な知識や技能を獲得して就業及び社会活動参画の機会を得たりなどすることは、社会の成長、経済の活性化を支える上で必要であり、特に少子高齢化社会において不可欠である。大学におけるそうした活動は、大学に対する社会的要請に応えることになる。

③ 社会人をはじめ多様な年齢層の学生が就学することは大学教育の現代化に寄与することになる。

このように、第4次報告等において、社会人受入れ促進の意義等における社会人とは、就業、社会活動参画等を目的として大学で学ぶ就業者、高齢者等を想定しており、大学に入学した後、出産、育児、就職等のやむを得ない理由がないのに卒業に必要な単位を取得できず修業年限(注1)を超えて在籍している者は、想定していない。

(注1)
修業年限  大学等において、学部等の学生に対して入学から卒業までの教育を受けさせる期間を定めたもので、原則として4年(医学、歯学及び獣医学に関する学部等並びに薬学に関する学部等の一部は6年)となっている。

(3) 社会人の組織的な受入れに係る特別補助

貴事業団は、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定。以下「配分基準」という。)等に基づき、22年度以前は、就学機会の多様化に向けた取組として社会人の入学を推進するために、社会人の特別入試選抜制度により入学した者を社会人の受入れとして特別補助の対象としていた。

しかし、第4次報告等において、社会人受入れの促進について提言があったことなどを踏まえて、貴事業団は、配分基準の社会人の受入れに係る項目を見直して、23年度から社会人の組織的な受入れとして適用している。

社会人の組織的な受入れに該当するための具体的な要件は、社会人の受入れを促進するために、社会人の就学を促進する取組として、次のア及びイを実施している私立大学等となっている。

  • ア 正規課程(大学は学部及び研究科、短期大学及び高等専門学校は学科)の学生(以下「正規学生」という。)、科目等履修生、専攻科生若しくは別科生のいずれかの身分で在籍している社会人学生(当該年度4月1日現在で25歳以上の者で、永続的に日本に生活拠点を置かず一時的な滞在を予定している外国人留学生を除く。)又は当該私立大学等が開講する履修証明プログラムを受講して、当該年度に履修証明書が交付される社会人受講者(当該年度4月1日現在で25歳以上の者で、永続的に日本に生活拠点を置かず一時的な滞在を予定している外国人留学生を除く。)の合計人数が、大学は10人以上、短期大学及び高等専門学校は5人以上であること
  • イ 社会人に対する特別な入学選抜制度の実施、社会人向け履修コース等の設定、社会人に関する学修ニーズを学外から聴取する仕組みの構築等、貴事業団が定める社会人の就学を促進する取組5件(24年度以降は8件)のうち2件以上(24年度以降は3件以上)実施していること

そして、配分基準等において、当該年度の5月1日現在で社会人学生を正規課程に受け入れている私立大学等に対して、社会人学生数等に学生1人当たり10万円を乗ずるなどの特別補助ができることとなっている。

このように、社会人学生について、就業している者等の要件を設けず、当該年度4月1日現在で25歳以上の者で、永続的に日本に生活拠点を置かず一時的な滞在を予定している外国人留学生を除くこと(以下「25歳以上要件」という。)としていることについて、貴事業団は、経済協力開発機構(OECD)が社会人の大学就学に関する調査について25歳以上の入学者数を対象としていて、25歳以上が基準となっていること、学生の経歴把握は難しく私立大学等の負担が大きいことなどを踏まえたものであるとしている。

社会人の組織的な受入れに係る特別補助の補助金(以下「社会人受入れ補助金」という。)は、23年度から26年度までの間に478学校法人583私立大学等に対して交付されており、その交付額は計202億5101万余円に上っている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法

前記のとおり、社会人受入れ補助金において、その算定対象となる社会人学生の要件は25歳以上要件のみとなっていることから、本院は、効率性、有効性等の観点から、算定対象となっている社会人学生が社会人受入れ促進の意義等に沿ったものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、貴事業団が23年度から26年度までの間に社会人受入れ補助金を交付している23学校法人(注2)23私立大学(注3)における社会人学生のうち正規学生計16,515人(注4)に係る補助金計13億5929万余円を対象として、貴事業団において社会人受入れ補助金の算定資料を確認したり、23学校法人において貴事業団に提出した算定資料の根拠資料等を確認したりなどして会計実地検査を行うとともに、23学校法人から修業年限を超えて在籍している学生の履歴等に関する調書の作成及び提出を求めて、内容を確認し、分析するなどして検査を行った。

(注2)
23学校法人  埼玉医科大学、千葉学園、共立女子学園、国士舘、昭和女子大学、大正大学、大乗淑徳学園、大東文化学園、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星学苑、立正大学学園、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院、朝日大学、市邨学園、京都産業大学、大阪医科大学、神戸学院、久留米大学、中村産業学園
(注3)
23私立大学  埼玉医科大学、千葉商科大学、共立女子大学、国士舘大学、昭和女子大学、大正大學、淑徳大学、大東文化大学、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星大学、立正大学、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院大学、朝日大学、名古屋経済大学、京都産業大学、大阪医科大学、神戸学院大学、久留米大学、九州産業大学
(注4)
社会人学生のうち正規学生計16,515人  社会人の受入れが進んでいると思料される通信教育学部等に在籍する学生を除いている。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 修業年限を超えた学生を算定対象に含めている事態

学生の中には、大学に入学した後、卒業に必要な単位を取得できず修業年限を超えて在籍した結果、25歳以上要件を満たす者がいることから、前記社会人学生16,515人のうち学部に在籍する6,208人について修業年限を超えていないか確認したところ、2,536人が修業年限を超えた者であった。そして、これらの者について修業年限を超えた理由等を当該私立大学に確認したところ、出産、育児、就職等やむを得ない理由がないのに卒業に必要な単位を取得できず修業年限を超えて在籍した結果、25歳以上要件を満たすこととなった学生(以下「修業年限を超えた学生」という。)が20学校法人(注5)20私立大学(注6)で2,307人(社会人受入れ補助金相当額1億9813万余円)見受けられた。

しかし、修業年限を超えた学生は、大学に入学した後、出産、育児、就職等のやむを得ない理由がないのに卒業に必要な単位を取得できず修業年限を超えて在籍している者であることから、前記のとおり、第4次報告等における社会人受入れ促進の意義等で想定される対象には含まれていない。したがって、社会人受入れ促進の意義等で想定されていない者まで算定対象に含めていた。

(注5)
20学校法人  埼玉医科大学、千葉学園、国士舘、昭和女子大学、大正大学、大乗淑徳学園、大東文化学園、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星学苑、立正大学学園、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院、朝日大学、市邨学園、京都産業大学、神戸学院、久留米大学
(注6)
20私立大学  埼玉医科大学、千葉商科大学、国士舘大学、昭和女子大学、大正大學、淑徳大学、大東文化大学、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星大学、立正大学、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院大学、朝日大学、名古屋経済大学、京都産業大学、神戸学院大学、久留米大学

(2) 研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に算定対象に含めている事態

研究科修士課程(標準修業年限2年)及び研究科博士課程(標準修業年限3年)に在籍する学生の中には、25歳以上要件を満たす者がいる。例えば、博士課程2年次以上の学生及び一貫制博士課程(標準修業年限5年)に在籍する学生のうち4年次以上の学生(以下、これらの者を「博士課程2年次以上の学生等」という。)は、原則として25歳以上要件を満たすこととなり、全員が一律に社会人受入れ補助金の算定対象となることから、前記の社会人学生16,515人に博士課程2年次以上の学生等が含まれているか確認したところ、博士課程2年次以上の学生等が23学校法人(注7)23私立大学(注8)で3,511人(社会人受入れ補助金相当額2億8308万余円)見受けられた。

しかし、博士課程2年次以上の学生等の中には、社会人受入れ促進の意義等において想定される社会人である就業、社会活動参画等を目的として大学で学ぶ就業者、高齢者等とは認められない者等が算定対象に含まれているおそれがある。このように、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に算定対象とすることは、社会人受入れ促進の意義等で想定されていない者まで算定対象に含めることとなり、(1)と同様に、本来必要とされる以上に社会人受入れ補助金を交付することとなっていた。

(注7)
23学校法人  埼玉医科大学、千葉学園、共立女子学園、国士舘、昭和女子大学、大正大学、大乗淑徳学園、大東文化学園、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星学苑、立正大学学園、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院、朝日大学、市邨学園、京都産業大学、大阪医科大学、神戸学院、久留米大学、中村産業学園
(注8)
23私立大学  埼玉医科大学、千葉商科大学、共立女子大学、国士舘大学、昭和女子大学、大正大學、淑徳大学、大東文化大学、中央大学、東京経済大学、東京電機大学、明星大学、立正大学、自治医科大学、帝京平成大学、関東学院大学、朝日大学、名古屋経済大学、京都産業大学、大阪医科大学、神戸学院大学、久留米大学、九州産業大学

(改善を必要とする事態)

社会人受入れ補助金の算定対象に、修業年限を超えた学生を含めていたり、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に含めていたりしている事態は適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴事業団において、社会人受入れ補助金の算定対象の要件等を定めるに当たり、社会人受入れ促進の意義等に照らした検討が十分でないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

貴事業団は、今後も引き続き、社会人の組織的な受入れなどの特別補助を行っていくこととしている。

ついては、貴事業団において、社会人受入れ補助金の算定対象に、修業年限を超えた学生を含めたり、研究科に在籍する学生のうち25歳以上要件を満たす者を一律に含めたりすることとならないようにその要件等を見直すことにより、社会人受入れ補助金が社会人受入れ促進の意義等を踏まえた効率的、効果的なものとなるよう意見を表示する。