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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • (第4 東日本高速道路株式会社)、(第5 中日本高速道路株式会社)、(第6 西日本高速道路株式会社)、(第9 阪神高速道路株式会社)|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1)-(4)遮音壁設置工事の実施に当たり、詳細検討を実施した上で、遮音壁の規模等や先付け取付金具の設置を適切に決定するよう改善させたもの


会社名
(1) 東日本高速道路株式会社
(2) 中日本高速道路株式会社
(3) 西日本高速道路株式会社
(4) 阪神高速道路株式会社
科目
(1)~(2) 仕掛道路資産、管理費用
部局等
(1) 本社、2支社
(2) 本社、3支社
(3) 本社、1支社
(4) 本社、2建設部
遮音壁設置工事の概要
高速道路の建設及び維持管理の一環として、高速道路からの騒音の低減を図るために遮音壁を設置等する工事
遮音壁設置工事の工事費
(1) 1680億4389万余円(平成22年度~27年度)
(2) 620億0424万余円(平成20年度~27年度)
(3) 359億5353万余円(平成21年度~27年度)
(4) 192億5362万余円(平成21年度~27年度)
詳細検討を実施せずに設置した遮音壁の直接工事費
(1) 3億6479万円(背景金額)(平成26、27両年度)
(2) 5億7257万円(背景金額)(平成24年度~27年度)
(3) 9億9230万円(背景金額)(平成23年度~27年度)
(4) 8875万円(背景金額)(平成21年度~27年度)
遮音壁の必要性を検討せずに設置したため不要となっていた先付け取付金具の直接工事費
(1) 1097万円(平成24年度~27年度)
(2) 2797万円(平成20年度~27年度)
(3) 1483万円(平成24年度~27年度)
(4) 1773万円(平成21年度~27年度)

1 遮音壁設置工事等の概要

(1) 遮音壁設置工事の概要

東日本高速道路株式会社(以下「東会社」という。)、中日本高速道路株式会社(以下「中会社」という。)、西日本高速道路株式会社(以下「西会社」という。また、以下、これらの会社を総称して「3会社」という。)及び阪神高速道路株式会社(以下「阪神会社」という。また、以下、3会社と合わせて「4会社」という。)は、高速道路の建設及び維持管理の一環として、高速道路からの騒音の低減を図るために、遮音壁を設置する工事(以下「遮音壁設置工事」という。)を実施している。

遮音壁は、高速道路の橋りょうの壁高欄、土工部の路肩等に設置されるものであり、基礎、支柱、遮音板等から構成されている。そして、遮音壁を橋りょうの壁高欄に設置する場合は、遮音壁の基礎として、アンカーボルト等から構成される取付金具が設置される(参考図参照)。

(2) 環境影響評価の概要

環境影響評価法(平成9年法律第81号)等によれば、高速道路の整備に当たり、都道府県等は、都市計画決定時等に環境影響評価を実施することとされている。そして、都道府県等は、環境影響評価において、高速道路の整備によって騒音の影響が生ずる地域における騒音予測を行い、当該騒音予測に基づき騒音基準を達成するための遮音壁の必要性、高さなど(以下「遮音壁の規模等」という。)を検討するなどしている。

そして、環境影響評価は、高速道路の新設、大規模な改築等の環境への影響が大きい事業の際に実施されており、インターチェンジやジャンクションを追加するなどの小規模な改築等の際には実施されない。また、環境影響評価における騒音予測は、道路構造、地域特性等を踏まえて選定された代表的な箇所において実施されるため、必ずしも騒音の影響のある全ての地域についての詳細な予測がされるとは限らない。

(3) 遮音壁の詳細検討の概要

遮音壁設置工事の多くは、環境影響評価が実施されてから相当の年数が経過して実施されており、現況の土地利用状況、交通量等が、環境影響評価を実施した時点と比較して大きく変化している場合がある。

このため、4会社は、遮音壁設置工事の実施に当たり、騒音の影響がある地域について、将来の土地利用計画、交通量等の最新の指標に基づく騒音予測を網羅的に行うなどして、遮音壁の規模等を検討(以下、この検討を「詳細検討」という。)し、騒音対策に係る沿道住民の意見を聴取した上で、遮音壁の規模等を決定することを通例としているが、これらの手続は基準等で明確に定められてはいない。

そして、3会社がそれぞれ制定している「設計要領第五集交通管理施設編」及び阪神会社が制定している「設計基準第1部計画基準」によれば、橋りょうの新設に当たって、遮音壁の設置が決定されている場合等は、壁高欄の天端等に、あらかじめ取付金具を設置しておくことなどとされている。このため、4会社は、壁高欄を施工する際に、天端部にアンカーボルトを設置した上で、コンクリートを打設するなどして、あらかじめ取付金具を設置することとしている(以下、あらかじめ設置する取付金具を「先付け取付金具」という。)。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、遮音壁設置工事の実施に当たり、遮音壁の規模等や先付け取付金具の設置が適切なものとなっているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、平成26年度又は27年度に遮音壁設置工事を実施した契約(契約年度は20年度から27年度まで)、東会社14件(契約金額計1680億4389万余円)、中会社29件(同計620億0424万余円)、西会社14件(同計359億5353万余円)、阪神会社4件(同計192億5362万余円)、4会社計61件(同計2852億5528万余円(61件のうち、47件は遮音板等を設置する工事、15件は先付け取付金具を設置する工事であり、その両方を含む工事が1件ある。))を対象として、4会社の本社、各支社等において、契約書、設計書、特記仕様書等の書類を確認するとともに、現地を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 遮音壁の規模等

前記47件のうち、3会社が実施した28件における遮音壁の延長計75,938.4mは、詳細検討を実施した上で規模等が決定されていた。そして、このうち延長計44,648.1mの遮音壁については、環境影響評価において代表的な箇所で実施された騒音予測に基づいて、高さ3mから8mまでの遮音壁の設置が必要となっており、これと3会社が実施した詳細検討の結果に基づく遮音壁の高さとを比較したところ、延長計36,998.1m(82.8%)の遮音壁は、高さを0.5mから7m低くしても沿道の騒音基準を達成できることとなっていた。

一方、前記47件のうち23件、遮音壁の延長計16,272.1m(東会社2件、延長計2,815.1m(直接工事費計3億6479万余円)、中会社13件、延長計6,103.9m(同計5億7257万余円)、西会社6件、延長計6,301.6m(同計9億9230万余円)、阪神会社2件、延長計1,051.5m(同計8875万余円))については、4会社が詳細検討を行っていなかったことから、遮音壁の規模等を決定した根拠を確認したところ、延長計5,345.4mについては、環境影響評価において代表的な箇所で実施された騒音予測の結果を参考にして、また、残りの延長計10,926.7mについては、新設のインターチェンジ等に設置されるものであることから、当該インターチェンジ等が設置される高速道路本線の遮音壁の設置状況を参考にするなどして、それぞれ遮音壁の規模等を決定していた(前記47件のうち4件は、詳細検討が実施されていた延長部分と実施されていなかった延長部分の両方を含む遮音壁設置工事である。)。

しかし、前記のように、詳細検討を実施した上で、遮音壁の規模等を決定すれば、環境影響評価の結果等に比べて高さの低い遮音壁でも騒音基準を満たすことが相当区間で可能であり、上記の23件について、4会社は、遮音壁設置工事の前に、詳細検討を実施した上で、遮音壁の規模等を決定する必要があったと認められた。

(2) 先付け取付金具の設置

4会社は、15件(東会社3件、中会社8件、西会社1件、阪神会社3件)において先付け取付金具を計12,074か所(東会社1,954か所、中会社7,165か所、西会社378か所、阪神会社2,577か所)設置していた。

そして、4会社は、12,074か所のうち9,497か所については、環境影響評価において代表的な箇所で実施された騒音予測の結果を参考にして、また、残りの2,577か所については、新設のインターチェンジに設置されるものであることから、当該インターチェンジが設置される高速道路本線の遮音壁の設置状況を参考にするなどして、それぞれ先付け取付金具の設置を決定していた。そこで、これらの先付け取付金具の設置箇所に係る遮音壁の必要性を確認したところ、4会社が先付け取付金具の設置後に詳細検討を実施した結果、計12,074か所のうち計4,186か所(東会社648か所(直接工事費計1097万余円)、中会社1,164か所(同計2797万余円)、西会社378か所(同計1483万余円)、阪神会社1,996か所(同計1773万余円))は、遮音壁の設置が不要と判断されており、設置された先付け取付金具は使用される見込みがない状況となっていた。

しかし、先付け取付金具は、前記のとおり、壁高欄の施工時に遮音壁の設置が決定されている場合等に設置されることとなっているものであり、壁高欄等の構造物設計に反映可能な時期までに、遮音壁の必要性について詳細検討を実施して、先付け取付金具の設置を決定すれば、使用見込みのないものを設置することなく経済的な設計を行うことが可能であったと認められた。

このように、4会社において、遮音壁の規模等や先付け取付金具の設置を決定するに当たり、騒音の影響がある地域について、詳細検討を実施せずに、環境影響評価において代表的な箇所で実施された騒音予測の結果や、周辺の高速道路における遮音壁の設置状況等を参考にしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、4会社において、遮音壁設置工事の実施に当たり、経済的な設計を行うことに対する認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、4会社は、28年9月に関係部署へ通知を発して、遮音壁設置工事の実施に当たり、詳細検討を実施した上で、遮音壁の規模等や先付け取付金具の設置を適切に決定することとして、同月からこれを適用することとする処置を講じた。

(参考図)

遮音壁の概念図

遮音壁の概念図 画像