日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生労働省が所掌する健康保険、厚生年金保険及び国民年金の事業に関する事務の一部を委任され、又は委託されており、当該事務の実施に当たり必要となる多数の年金関係文書等を保有している。
また、機構は、社会保険庁において生じた年金記録問題等を踏まえ、当面、その保有する文書については、日本年金機構文書管理規程(平成22年規程第12号)等に基づき、定められた文書保存期間を超えても廃棄しないこととしており、文書の保管数量は年々増大している。
そして、近畿ブロック本部(平成28年4月1日以降は機構本部に統合)は、近畿ブロック本部並びに近畿ブロック本部管内の6事務センター及び49年金事務所内の倉庫に保管可能な数量を超える文書について、ダンボール箱に収納した上で、民間業者を貸主とする倉庫に保管することとして、23年3月1日、1会社(以下「倉庫業者」という。)との間で、23年4月1日から26年3月31日までを賃貸借期間として、倉庫844m2(以下「本件倉庫」という。)を賃借料計141,120,000円(月額3,920,000円)で賃借する旨の定期建物賃貸借契約(以下「倉庫賃貸借契約」という。)を随意契約により締結している。
本院は、経済性等の観点から、倉庫賃貸借契約の内容が適切なものとなっているかなどに着眼して、近畿ブロック本部において、契約書等により会計実地検査を行った。
検査したところ、倉庫賃貸借契約の賃貸借期間の始期は23年4月1日となっているのに、実際に本件倉庫に近畿ブロック本部等の文書が搬入されたのは、同年6月22日以降となっていた。
この点について、近畿ブロック本部は、本件倉庫に文書の搬入等を行う時期を同年6月以降と予定していたが、文書の搬入前に棚の設置工事を行う必要があるとの認識の下、その工事に約2か月を要すると見込まれたことから、同年4月1日を賃貸借期間の始期とする倉庫賃貸借契約を締結したとしていた。
しかし、実際には、上記の棚は、本件倉庫の所有者である倉庫業者によって既に設置されており、2か月の工事期間を賃貸借期間に含める必要はなかったことから、近畿ブロック本部が、倉庫賃貸借契約の締結に当たり、賃貸借期間の始期を同年4月1日としていたことは適切とは認められない。
したがって、倉庫賃貸借契約に係る賃借料の支払額のうち同年4月及び5月の2か月分に係る支払額の計7,840,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、近畿ブロック本部において、倉庫賃貸借契約の締結に当たり、実際に本件倉庫に文書の搬入等を行う時期等を踏まえた適切な賃貸借契約を締結する認識が欠けていたことなどによると認められる。