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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第13 日本年金機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2)倉庫賃貸借契約の締結に当たり、文書保管委託契約を締結する場合における費用等との比較検討を行った上で調達方法を決定することを周知徹底し、経済的な契約を締結するよう改善させたもの


科目
業務経費
部局等
日本年金機構本部、4ブロック本部(平成28年4月1日以降は日本年金機構本部)
契約名
倉庫賃貸借契約32契約
契約の概要
文書を保管するための倉庫の賃貸借契約を締結して、事務所内の倉庫に保管可能な数量を超える文書を保管するもの
契約の相手方
20会社等
契約
平成26年3月ほか 随意契約
支払額
2億1270万余円(平成26、27両年度)
文書の保管費用等の節減が見込まれた支払額
5529万円(平成26、27両年度)

1 契約等の概要

(1) 文書保管の概要

日本年金機構(以下「機構」という。)は、厚生労働省が所掌する健康保険、厚生年金保険及び国民年金の事業に関する事務の一部を委任され、又は委託されており、当該事務の実施に当たり必要となる多数の年金関係文書等を保有している。

また、機構は、社会保険庁において生じた年金記録問題等を踏まえ、当面、その保有する文書について、日本年金機構文書管理規程(平成22年規程第12号)等に基づき、定められた文書保存期間を超えても廃棄しないこととしており、文書の保管数量は年々増大している。

そして、機構本部及び全国9ブロック本部(平成28年4月1日以降は機構本部に統合)は、機構本部、全国9ブロック本部、39事務センター及び312年金事務所内の倉庫に保管可能な数量を超える文書について、ダンボール箱等に収納した上で(以下、文書を収納するダンボール箱等を「保管箱」という。)、民間業者を貸主とする倉庫(以下「外部倉庫」という。)の賃貸借契約(以下「倉庫賃貸借契約」という。)又は文書の保管等を委託する契約(以下「文書保管委託契約」という。)を締結し、保管している。

(2) 倉庫賃貸借契約及び文書保管委託契約の概要等

機構は、倉庫賃貸借契約の締結に当たっては、賃貸借期間内に搬入することが見込まれる保管箱の最大数量に基づき所要の賃借面積を算定した上で、その面積を確保することができる外部倉庫を選定し、複数の外部倉庫を選定した場合には、賃借料や利便性等について最適であるとした外部倉庫を管理する業者と随意契約により契約を締結している。

一方、文書保管委託契約の締結に当たっては、保管箱ごとの保管料、運搬費等の単価に、保管、運搬等を行う保管箱の数を乗じて所要の経費の見込額を算出し、一般競争契約又は随意契約により、保管、運搬等を行う業者と契約を締結している。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、文書の保管に係る費用の節減が図られているかなどに着眼して、機構本部及び全国9ブロック本部(注1)が締結した倉庫賃貸借契約計90件(26、27両年度の賃借料支払額計11億7047万余円)を対象として、機構本部及び全国9ブロック本部において、契約書、仕様書等により会計実地検査を行った。

(注1)
全国9ブロック本部  北海道、東北、北関東・信越、南関東、中部、近畿、中国、四国、九州各ブロック本部

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

機構本部及び全国9ブロック本部は、前記の倉庫賃貸借契約計90件において選定した外部倉庫について、賃借料や利便性等について最適であるとして、契約の性質等により一般競争入札によることが適当ではないと認められる場合に該当するので随意契約によることができるなどとして、従前の契約を更新するなどしていた。

そして、これらの倉庫賃貸借契約の締結に当たり、機構本部及び2ブロック本部は、文書保管委託契約を締結する場合における費用等との比較検討を行っていたが、7ブロック本部(注2)は、比較検討を行っていなかった。

そこで、7ブロック本部が締結していた倉庫賃貸借契約計80件(26、27両年度の賃借料支払額計8億2483万余円)のそれぞれの契約について、全国的に文書保管業務を受託している業者の一箱当たりの保管料等に基づき文書保管委託契約を締結した場合の保管費用等を試算すると、このうち4ブロック本部(注3)が20会社等と締結していた契約計32件(26、27両年度の賃借料支払額計2億1270万余円)については、賃借料を節減することが可能となり、26、27両年度で計1億3767万余円となる。したがって、従前の外部倉庫から保管文書を移転する際に見込まれる費用として計1972万余円を要することを考慮しても、両年度で計5529万余円の賃借料を節減することができたことになる。

このように、倉庫賃貸借契約の締結に当たり、文書保管委託契約を締結する場合における費用等との比較検討を行っていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注2)
7ブロック本部  北海道、東北、北関東・信越、南関東、中国、四国、九州各ブロック本部
(注3)
4ブロック本部  東北、北関東・信越、南関東、中国各ブロック本部

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、倉庫賃貸借契約の締結に当たり、文書保管委託契約を締結する場合における費用等との比較検討を行う必要性についての認識が欠けていたことによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、28年8月に、倉庫賃貸借契約の締結に当たっては文書保管委託契約を締結する場合における費用等との比較検討を行った上で調達方法を決定することなどを定めた、経済的な契約を締結するための基準を策定した。そして、関係各部署に対して指示文書を発して、今後締結予定の契約については上記の基準を適用して適切に対応するよう周知徹底する処置を講じた。