独立行政法人海技教育機構(以下「機構」という。)は、国立海上技術学校4校(注1)及び国立海上技術短期大学校3校(注2)(以下、これらを合わせて「7学校等」という。)において、新たに船員となろうとする者(以下「生徒等」という。)に対して船舶の運航に必要な海技士の免許の取得に必要な知識及び能力を習得させるための講習(以下「海技免許講習」という。)を行っている。
7学校等は、海技免許講習の一環として英会話語学練習(以下「語学練習」という。)を実施しており、機構本部は、既存のテープレコーダー式等のLL装置が老朽化したことから、平成25年12月に「LL機能付き情報技術用パソコン・ファイアウォールルータ賃貸借契約」を契約金額72,841,680円(借入期間26年4月から31年3月までの5年間。契約金額のうちLL機能に係る分は6,273,600円)でNTTファイナンス株式会社と締結して、7学校等にLL機能が付加されたパーソナルコンピュータ計315台を26年4月に導入するなどしている。
本件のLL機能は、生徒等が各自のパーソナルコンピュータにヘッドセットマイクを接続して使用することで、語学練習時の発音を録音して再生したり、録音と英会話リスニング教材との比較再生をしたりすることなどができるもので、既存のテープレコーダー式等のLL装置よりも効率的かつ効果的に語学練習を実施することを目的として導入されている。
本院は、有効性等の観点から、LL機能が語学練習において適切に使用されているかなどに着眼して、本件契約を対象として、機構本部及び国立清水海上技術短期大学校において、契約書等の関係書類及びLL機能の使用状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、他の6学校等については、機構本部を通じてLL機能の使用状況に関する書類の提出を受け、その内容を確認するなどして検査した。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
28年1月の国立清水海上技術短期大学校での会計実地検査時点において、LL機能は使用されておらず、ヘッドセットマイクも全て梱包されたままとなっていた。そこで、LL機能を導入した7学校等全てにおけるLL機能の使用状況について、保存されていた使用記録及び教員への聴取内容を機構本部を通じて確認したところ、語学練習は教員が口頭で指導するなどしており、導入した26年4月から28年3月までの間、LL機能は、パーソナルコンピュータ計315台に付加されたもの全てが、全く使用されていなかった。
したがって、LL機能は、語学練習を効率的かつ効果的に実施するという所期の目的を達成しておらず、本件契約に係る26、27両年度の支払額のうち、LL機能に係る2,509,440円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、機構において、LL機能を使用して語学練習を効率的かつ効果的に実施するという認識が欠けていたこと、7学校等の教員に対するLL機能の導入目的の周知が十分でなかったことなどによると認められる。