独立行政法人都市再生機構東日本都市再生本部(以下「本部」という。)は、東京都中央区内の湊二丁目東地区において土地区画整理事業を施行するために、平成25、26両年度に、同地区に所在する店舗兼住宅(木造)2棟、工作物等に対する移転補償を行っている。
本部は、公共事業の施行に伴う損失の補償を「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)等に準じて制定された「損失補償算定標準書」(平成24年度版。関東地区用地対策連絡協議会。以下「標準書」という。)等に基づいて行うこととしている。標準書等によれば、建物の移転補償費は、建物、工作物等に区分して、それぞれ算定することとされている。
建物のうち、建築設備は、建物と一体として施工され、建物の構造及び効用と密接不可分な関係にあり、分離することが困難なものであるとされており、その再調達価格を含む建物の推定再建築費に当該建物の耐用年数等から定まる再築補償率を乗ずるなどして建物移転料を算定することとされている。そして、建物移転料は、残地以外の土地に従前の建物と同種同等の建物を建築する場合、従前の建物の内外装、床、屋根等の建物の部位ごとに区分した調査(以下「建物調査」という。)の結果に基づいて算定することとされている。
一方、工作物は、建物から分離することが可能なものであり、原動機等により製品等の製造又は加工等を行うものを機械設備に、建物及び他の工作物区分に属するもの以外の全てのものを附帯工作物にそれぞれ区分するなどして、工作物移転料を算定することとされている。
本院は、合規性、経済性等の観点から、移転補償費の算定が適切に行われているかなどに着眼して、本部において、本件契約を対象に、補償契約書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
本部は、移転補償費の算定に当たり、店舗で使用されている冷水機等の業務用機器、ガス管等の設備及び店舗の内外装を附帯工作物に区分して、これらの再調達価格にそれぞれの耐用年数等から定まる再築補償率を乗ずるなどして、工作物移転料を算定していた。
しかし、冷水機等の業務用機器は、原動機等により製品等の製造又は加工等を行う設備であることから、附帯工作物ではなく機械設備に区分して工作物移転料を算定すべきであった。また、ガス管等の設備は、建物と一体として施工され、建物の構造及び効用と密接不可分な関係にあり、建物から分離することが困難であることから、附帯工作物に区分して工作物移転料を算定するのではなく、建築設備に区分して建物移転料を算定すべきであった。さらに、店舗の内外装は、建物の一つの部位として建物調査の対象となっていることから、附帯工作物に区分して工作物移転料を算定するのではなく、建物に区分して建物移転料を算定すべきであった。
したがって、冷水機等の業務用機器を機械設備として、また、ガス管等の設備を建築設備として、さらに、店舗の内外装を建物として適正な移転補償費を算定すると55,515,600円となり、本件移転補償費64,499,700円は、これに比べて8,984,100円過大となっていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、本部において、移転補償費の算定に当たり、標準書等における建物と工作物等の区分等についての理解が十分でなかったことなどによると認められる。