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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第26 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

在籍型出向者に業務を実施させるに当たり、出向元企業支払金の額等を把握し、これに基づき機構負担金の額等を算定することとする通達を発するなどして機構負担金の額等を適切に算定して支払うよう改善させたもの


科目
経常費用
部局等
独立行政法人日本原子力研究開発機構(平成27年4月1日以降は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構)本部、12研究開発拠点等
機構負担金等の概要
機構が在籍型出向者に係る給与等及び社会保険料として出向元企業に対して負担するなどのもの
機構負担金の合計額が多い上位4社に係る機構負担金の額(1)
65億6630万余円(平成25、26両年度)
機構の基準により算定した賃金総額に基づき労働局に支払った在籍型出向者に係る労災保険料等相当額(2)
3746万余円(平成25、26両年度)
(1)のうち出向元企業支払金を上回っていた額(3)
13億2091万円
(2)のうち出向元企業が在籍型出向者に支払った賃金総額に基づき算定した労災保険料等相当額を上回っていた額(4)
405万円
(3)及び(4)の計
13億2496万円

1 制度の概要

(1) 在籍型出向の概要

独立行政法人日本原子力研究開発機構(平成27年4月1日以降は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構。以下「機構」という。)は、独立行政法人日本原子力研究開発機構法(平成16年法律第155号。27年4月1日以降は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構法)に基づき、原子力に関する基礎的研究等の事業を行っており、これらの事業を行うために民間企業等から、技術指導を受けることなどを目的として技術開発協力員等を受け入れている。そして、その多くは、出向元企業との間の労働契約を維持したまま出向先である機構との間に労働契約関係が生ずるいわゆる「在籍型出向」による出向者(以下「在籍型出向者」という。)となっている。

(2) 在籍型出向者に係る機構負担金等

機構本部は、機構の研究開発に係る各業務を実施している拠点(以下「研究開発拠点」という。)等から依頼を受けて、出向元企業との間で「技術開発協力員の取扱いに関する協定書」等(以下「協定書」という。)を締結している。そして、協定書によれば、のとおり、出向元企業は出向元企業の基準により算定した給与等の額を在籍型出向者に支払い、機構は機構の基準により算定した在籍型出向者に係る給与等の額を出向元企業に支払うこととされている。また、在籍型出向者の健康保険、厚生年金保険等に係る保険料(以下「社会保険料」という。)のうち事業主が負担することとされている分については、出向元企業及び機構の基準により算定した給与等の額を基にそれぞれ算定した額を、出向元企業は年金事務所等に、機構は出向元企業に支払うこととされており(以下、機構が出向元企業に対して負担している給与等と社会保険料を合わせて「機構負担金」といい、出向元企業が支払っている上記の給与等と社会保険料を合わせて「出向元企業支払金」という。)、機構によれば、機構負担金は出向元企業支払金を負担するものであるとしている。

そして、出向元企業数、在籍型出向者数及び機構負担金は、25、26両年度計220社、延べ2,639人、計180億7767万余円となっている。

また、機構は、在籍型出向者に係る労働者災害補償保険の適用事業主とされており、機構の基準により算定した賃金総額に基づき労働者災害補償保険に係る保険料等(以下「労災保険料等」という。)を算定し、220社からの在籍型出向者に係る分として、25、26両年度計3746万余円を労働局に支払っている。

図 機構における在籍型出向者受入の概要

図 機構における在籍型出向者受入の概要 画像


2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、機構負担金等は適切に算定されているかなどに着眼して、25、26両年度の機構負担金計180億7767万余円のうち額が多い上位4社(注1)の在籍型出向者延べ851人に係る計65億6630万余円及び前記の労災保険料等相当額計3746万余円を対象として、機構本部及び10研究開発拠点等(注2)において、協定書、給与決定計算書等の関係書類を確認するとともに、2研究開発拠点(注3)については、機構本部において関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(注1)
上位4社  原子力エンジニアリング株式会社、検査開発株式会社、日本アドバンストテクノロジー株式会社、株式会社NESI
(注2)
10研究開発拠点等  東海、大洗、敦賀、那珂、高崎、幌延、東濃、青森の各拠点、高速増殖原型炉もんじゅ、原子炉廃止措置研究開発センター
(注3)
2研究開発拠点  関西、人形峠の両拠点

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

前記のとおり、協定書によれば、出向元企業は出向元企業の基準により算定した給与等の額を在籍型出向者に支払い、機構は機構の基準により算定した在籍型出向者に係る給与等の額を出向元企業に支払うこととされていることなどから、機構負担金の額は、出向元企業支払金の額に基づいて算定されておらず、また、在籍型出向者に係る労災保険料等相当額は、在籍型出向者に実際に支払われた賃金総額に基づいて算定されていない。

そこで、上位4社に係る25、26両年度の機構負担金の額と出向元企業支払金の額とを比較したところ、表1のとおり、機構負担金のうち給与等の分が57億8342万余円、社会保険料の分が7億8287万余円、計65億6630万余円となっていたのに対して、出向元企業支払金のうち給与等の分が45億7847万余円、社会保険料の分が6億6691万余円、計52億4538万余円となっており、機構負担金の計が出向元企業支払金の計を13億2091万余円上回っていた。

表1 機構負担金が出向元企業支払金を上回っていた状況

(単位:千円)
出向元企業 年度 機構負担金(A) 出向元企業支払金(B) AがBを上回っていた額
給与等 社会保険料 給与等 社会保険料
(①) (②) a(①+②) (③) (④) b(③+④) (a―b)
原子力エンジニアリング株式会社
平成
25
1,019,493 131,840 1,151,333 817,763 115,002 932,765 218,567
26 992,963 134,710 1,127,674 758,036 112,309 870,345 257,328
検査開発株式会社 25 905,486 125,011 1,030,498 712,523 107,957 820,481 210,017
26 925,242 127,067 1,052,310 693,892 106,803 800,696 251,613
日本アドバンストテクノロジー株式会社 25 579,891 78,867 658,759 510,870 71,900 582,771 75,987
26 623,307 84,809 708,116 506,640 73,150 579,791 128,325
株式会社NESI 25 367,611 49,912 417,524 287,513 39,147 326,660 90,863
26 369,431 50,652 420,084 291,237 40,638 331,876 88,207
年度別計 25 2,872,483 385,632 3,258,115 2,328,670 334,008 2,662,678 595,436
26 2,910,944 397,240 3,308,185 2,249,807 332,902 2,582,710 725,474
5,783,427 782,872 6,566,300 4,578,477 666,911 5,245,388 1,320,911
(注)
単位未満を切り捨てているため、算式と一致しない計数となっている欄がある。

また、25、26両年度に出向元企業が在籍型出向者に実際に支払った賃金総額に基づいて在籍型出向者に係る分の労災保険料等相当額を算定すると、表2のとおり、計3340万余円となり、前記の機構が労働局に支払った労災保険料等相当額計3746万余円はこれを405万余円上回っていた。

表2 機構が労働局に支払った労災保険料等相当額が実際に支払った賃金総額に基づいて算定した労災保険料等相当額を上回っていた状況

(単位:千円)
年度 機構が労働局に支払った労災保険料等相当額
(A)
実際に支払った賃金総額に基づいて算定した労災保険料等相当額
(B)
AがBを上回っていた額
平成
25
17,818 16,403 1,414
26 19,645 17,005 2,639
37,463 33,409 4,054
(注)
単位未満を切り捨てているため、「AがBを上回っていた額」欄は集計しても一致しないものがある。

しかし、機構負担金は、機構において出向元企業支払金を負担するものであるとしており、出向元企業支払金の額を上回る額を負担する必要はないこと、また、労災保険料等は在籍型出向者に実際に支払われた賃金総額に基づいて算定することとされていることから、出向元企業支払金の額等を把握し、機構負担金及び労災保険料等の額を適切に算定して支払う必要があると認められた。

現に、在籍型出向者を受け入れている他団体は、出向元企業が在籍型出向者に支払った給与等の額を把握し、これに基づき負担する額を算定していた。

このように、機構において、機構負担金の額が出向元企業支払金の額を上回るなどしていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、機構において、機構負担金の額及び労災保険料等の額の算定に当たり、出向元企業支払金の額等に基づいて行う必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、28年5月から9月までの間に、25、26両年度の労災保険料等相当額について、出向元企業が在籍型出向者に実際に支払った賃金総額に基づいて算定した額により労働局に対して修正申告を行い還付を受けるなどするとともに、28年8月に、出向元企業支払金の額等を把握し、これに基づき機構負担金の額及び労災保険料等の額を算定することとする通達を発するなどして、機構負担金の額及び労災保険料等の額を適切に算定して支払うこととする処置を講じた。

なお、4研究開発拠点(注4)で実施されていた機構の業務の一部が28年4月に国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構に移管されたことに伴い、在籍型出向者を受け入れた同機構においても同様の処置が講じられた。

(注4)
4研究開発拠点  那珂、高崎、関西、青森の各拠点