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  • 平成27年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第27 独立行政法人地域医療機能推進機構|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

病院における物品の購入等に係る契約を締結するに当たり、会計規程等に従って競争契約に付することにより、契約手続の公正性及び透明性を確保するとともに、競争による利益を十分に享受できるよう改善させたもの


科目
材料費、委託費、設備関係費、経費
部局等
独立行政法人地域医療機能推進機構本部、6病院
契約の概要
病院で使用する診療材料、医薬品、検査試薬等の購入、リネン類等の賃貸借及び人材派遣業務等の委託を行うもの
競争契約に付することなく随意契約により契約を締結していた支払額
6億6635万円(平成27年4月~28年3月)

1 契約手続等の概要

(1) 病院運営の経緯等の概要

独立行政法人地域医療機能推進機構(以下「機構」という。)は、地域において必要とされる医療等を提供する機能の確保を図ることを目的として病院の設置、運営等を行っている。これらの病院は、社会保険庁が設置し、その後一連の社会保険庁改革により平成20年10月及び24年4月に独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構(以下「旧機構」という。)が国から現物出資を受ける形で保有していたもので、旧機構は同庁と同様に、社団法人全国社会保険協会連合会等の運営委託法人に対してその運営を委託していた。そして、26年4月1日の「独立行政法人年金・健康保険福祉施設整理機構法の一部を改正する法律」(平成23年法律第73号)の施行に伴い、旧機構が機構に改組されるとともに、機構は、これらの病院の運営を直接行うこととなった。

(2) 会計規程等における随意契約の要件

機構は、売買、貸借、請負その他の契約を締結するに当たっては、独立行政法人地域医療機能推進機構会計規程(平成26年4月規程第61号。以下「会計規程」という。)第52条の規定に基づき、公告して申込みをさせることにより競争に付さなければならないこととなっている。ただし、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、緊急の必要により競争に付することができない場合、競争に付することが不利と認められる場合及び契約に係る予定価格が少額である場合には、随意契約等によることができることとなっている。

上記のうち「契約に係る予定価格が少額である場合」とは、独立行政法人地域医療機能推進機構契約事務取扱細則(平成26年4月細則第6号。以下「細則」という。)第27条の規定によれば、①物品等の購入契約で、その予定価格が160万円を超えない財産を買い入れるとき、②賃貸借契約で、その予定賃借料の年額又は総額が80万円を超えない物件を借り入れるとき、③工事又は製造の請負、財産の売買及び物件の貸借以外の契約で、その予定価格が100万円を超えないときなどとされている。

また、細則第35条の規定によれば、予定価格は契約する事項の価格の総額について定めなければならないとされている一方で、一定期間継続してする製造、修理、加工、売買、供給、使用等の契約の場合には、単価により予定価格を定めることができるとされている。

そして、機構は、契約の締結に当たっては、単価契約(単価についてのみ約定し、支払金額については購入等の実績に基づき決定する契約。以下同じ。)の場合であっても、契約の目的である1品目の単価を基準とするのではなく、当該契約に基づく年間支払予定総額を考慮した上で随意契約を締結できる場合に該当するかどうかを判断するとしている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、機構の運営する病院が随意契約により契約を締結した件数が相当数あり、支払額も多額に上っていることから、合規性、経済性等の観点から、これらの契約手続が適切に行われ、公正性及び透明性が確保されているかなどに着眼して、27年度に13病院(注1)が随意契約により契約を締結していた計528件、支払額計48億4754万余円を対象として、契約書、請求書等の関係書類により会計実地検査を行った。

(注1)
13病院  北海道、仙台南、群馬中央、高岡ふしき、福井勝山総合、可児とうのう、桜ヶ丘、滋賀、玉造、久留米総合、伊万里松浦各病院、東京蒲田、四日市羽津両医療センター

(検査の結果)

検査したところ、6病院(注2)において次のような事態が見受けられた。

(注2)
6病院  高岡ふしき、福井勝山総合、桜ヶ丘、滋賀、久留米総合、伊万里松浦各病院

(1) 物品の購入契約等の締結に当たり、単価が少額であるとして単価契約に基づく年間支払予定総額について考慮していなかった事態

4病院(注3)は、27年度に病院で使用する診療材料、医薬品、検査試薬等及び医療用酸素ガスの購入契約等計34件の単価契約(年間支払総額計6億0145万余円)を随意契約により締結していた。そして、4病院は、上記34件の単価契約については単価が少額であることから年間支払予定総額についてまで考慮せず、会計規程及び細則に照らして随意契約を締結できる場合に該当するとしていた。

しかし、上記34件の単価契約については、契約締結の際に、いずれも当該契約に基づく年間の購入予定数量(以下「購入予定数量」という。)を算定した上で、予定価格とした単価に購入予定数量を乗ずると、当該契約に基づく年間支払予定総額が細則に基づき随意契約によることができる場合の上限金額(物品等の購入契約では予定価格160万円)を超過することになり、会計規程及び細則に定める随意契約によることができる場合には該当しないと認められた。

(注3)
4病院  福井勝山総合、桜ヶ丘、久留米総合、伊万里松浦各病院

(2) 役務契約等の締結に当たり、他にも契約可能な業者が見受けられるにもかかわらず、契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとしていた事態

4病院(注4)は、27年度に病院で使用するリネン類の賃貸借契約、人材派遣業務委託契約等計9件の役務契約等(年間支払総額計6489万余円)を随意契約により締結していた。そして、4病院は、上記9件の役務契約等については、契約の相手方が特定の業者に限定されるとして、いずれも契約の性質又は目的が競争を許さない場合に該当するとしていた。

しかし、上記9件の役務契約等については、他にも契約可能な業者が見受けられることから、契約の相手方が特定の業者に限定されるものではなく、いずれも契約の性質又は目的が競争を許さない場合には該当しないと認められた。

このように、病院における物品の購入等に係る契約に当たり、会計規程及び細則に反して随意契約により契約を締結していた事態は、契約手続の公正性及び透明性が確保されておらず、競争による利益を十分に享受できないものとなっていて適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注4)
4病院  高岡ふしき、滋賀、久留米総合、伊万里松浦各病院

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、6病院において、随意契約により契約を締結するに当たり、会計規程及び細則の趣旨について十分に理解しておらず、契約手続の公正性及び透明性を確保することについての認識が欠けていたこと、また、機構において、各病院における随意契約の締結に当たっては、会計規程及び細則に従って厳正かつ適正に行う必要があることについての周知徹底が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、機構は、28年2月及び9月に、各病院に対して、単価契約の締結に当たっては、当該契約に基づく購入予定数量や年間支払予定総額についても考慮したり、役務契約等の締結に当たっては、調査等が不十分なまま契約可能な業者が限定されると判断しないようにしたりして、会計規程及び細則に従った手続を行うよう通知等を発するとともに、同年7月に各病院の経理担当職員を対象とした研修を開催して、その周知徹底を図る処置を講じた。