国立大学法人旭川医科大学(以下「旭川医科大学」という。)は、大学設置基準(昭和31年文部省令第28号)第39条の規定に基づき、医学部の教育研究に必要な施設として、旭川医科大学病院(以下「大学病院」という。)を設置し、運営している。
そして、旭川医科大学は、大学病院で使用する医薬品の調達を実施しており、契約や支払等の調達に係る事務を、国立大学法人旭川医科大学会計規程(平成16年旭医大達第152号。以下「会計規程」という。)等の内部規程等に基づいて行うこととなっている。
会計規程等によれば、売買、貸借、請負その他の契約を締結する場合においては、公告して申込みをさせることにより一般競争に付さなければならないこととされている。ただし、予定価格が500万円未満の契約をするときなどは、随意契約によることができるとされている。
政府調達に関する協定(平成7年条約第23号。以下「協定」という。)は、世界貿易機関(WTO)の下で運用されている協定の一つで、各加盟国の中央政府、地方政府及び協定が定める機関による調達の分野における、国内外のいかなる事業者でも参入を可能なものとする内外無差別原則の確立と手続の透明性等の確保を目的として、各国が遵守すべき調達手続上の義務等を規定している。そして、我が国政府は、調達手続を更に透明性、公正性及び競争性の高いものとするなどのために、「政府調達手続に関する運用指針等について」(平成26年3月関係省庁申合せ)等を我が国の自主的措置として決定している(以下、協定及び我が国の自主的措置を合わせて「協定等」という。)。
協定において、国立大学法人が協定の適用対象となる機関とされていることから、旭川医科大学は、協定の適用対象となり、協定等の対象となる調達契約を締結する場合には、協定等に基づき契約事務を行う必要がある。
協定によれば、物品及びサービスの調達が適用対象とされている。このうち、物品については、全ての物品の調達を適用対象とすることとされていて、適用対象となる物品の品目は具体的に示されていないが、協定その他の国際約束を実施するために制定された「国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令」(昭和55年政令第300号。以下「特例政令」という。)等において、現金及び有価証券を除く動産等が適用対象とされている。
協定等によれば、機関の区分、調達する物品及びサービス、契約締結時期等ごとに、それぞれ基準額が定められており、当該基準額以上の価額の物品及びサービスの調達契約が協定等の適用対象とされている。そして、平成26年4月1日から28年3月31日までの間に締結される物品等の調達契約については、予定価格等、評価の基礎となる額が10万SDR(注)以上の場合が協定等の適用対象とされ(以下、協定等の適用対象となる調達を「特定調達」という。)、協定の適用対象となる機関は、特定調達を行うに当たり、協定等に基づき、原則として一般競争に付することとされている。
前記のとおり、旭川医科大学は、協定の適用対象となっていることから、「旭川医科大学政府調達細則」(平成16年学長裁定)において、物品等の調達契約に当たり、予定価格が特例政令に規定する財務大臣の定める額(26年4月1日から28年3月31日までの間に締結される物品等の調達契約については1300万円)以上の物品等の調達契約が、特定調達の適用対象となることなどを定めて、協定等を遵守した契約事務を行うこととしている。
本院は、合規性等の観点から、大学病院で使用する医薬品の調達は協定等や会計規程等に従って適正に実施されているかなどに着眼して、27年度に調達した医薬品延べ3,974品目に係る支払額計3,512,072,368円を対象として、旭川医科大学において、予定価格算定資料、支払関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、旭川医科大学は、医薬品の調達について、従前は、協定等や会計規程等に基づき実施していたのに、27年度においては、随意契約によれば価格交渉が可能となり経費削減に資するとして、協定等や会計規程等に反して、次のとおり随意契約により実施していた。
旭川医科大学は、上期(27年4月から9月までの間)において予定価格が1300万円以上である20品目について、下期(同年10月から28年3月までの間)において同様の17品目について、特定調達の適用対象であるにもかかわらず、協定等に反して、一般競争に付することなく随意契約により調達し、これに係る代金計1,149,113,136円を支払っていた。
旭川医科大学は、上期において予定価格が500万円以上1300万円未満である44品目について、下期において同様の47品目について、会計規程等に反して、一般競争に付することなく随意契約により調達し、これに係る代金計742,725,500円を支払っていた。
このように、協定等や会計規程等に反して随意契約により医薬品を調達していた事態は適正ではなく、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、旭川医科大学において、医薬品の調達に当たり、協定等や会計規程等に従って適正に契約手続を行う認識が欠けていたことなどによると認められる。