【是正改善の処置を求めたものの全文】
職員等駐車場に係る駐車整理業務の委託契約の見直し等について
(平成27年12月3日付け 国立大学法人京都大学学長宛て)
標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。
記
貴法人は、診療、教育、研究等を担う附属施設として、医学部附属病院(以下「附属病院」という。)を設置し運営しており、附属病院敷地内に外来患者、入院患者及びその付添人又は見舞等のために来訪する者が利用する駐車場(以下「患者等駐車場」という。)と、職員、学生、納品業者及びその他大学関係者(以下「職員等」という。)が利用する駐車場(以下「職員等駐車場」という。)をそれぞれ設置している。
貴法人は、このうちの職員等駐車場については、その円滑な運営を図るために、附属病院の教員等を構成員とする京都大学病院地区駐車区域運営委員会を設置している。そして、同委員会が職員等駐車場の運営方式等について定めた京都大学病院地区職員・学生・その他大学関係者駐車区域整理要領によれば、職員等駐車場に係る駐車区域における車両の誘導、適正駐車の指導、パスカードの発行、駐車整理料の収納・管理等の整理業務(以下「駐車整理業務」という。)は第三者に委託して行うこととされている。
このため、貴法人は、平成11年4月以降、職員等駐車場に係る駐車整理業務について、一般財団法人和進会(23年7月以前は財団法人和進会。以下「和進会」という。)と委託契約(以下「職員等駐車場委託契約」という。)を、毎年度、随意契約により締結して実施している。
貴法人が行う契約については、国立大学法人京都大学会計規程(平成16年達示第92号)等によれば、請負その他の契約を締結する場合は、公告して申込みをさせることにより一般競争入札に付さなければならないとされている。ただし、契約の性質又は目的が競争を許さない場合、予定価格が1000万円未満である場合等においては随意契約によることができることとされている。
一方、21年6月に文部科学大臣が決定した「国立大学法人の組織及び業務全般の見直しについて」によれば、財務内容を改善させるために、「各法人は多様な資金調達による自己収入の増加、管理的経費の一層の抑制等についてさらに努めること」とされている。そして、効果的・効率的な法人運営を推進するために、「随意契約について、各法人の見直し計画に基づく取組を着実に実施するとともに、一般競争入札等により契約を行う場合であっても、特に企画競争等を行う場合には競争性、透明性を確保するなど、随意契約の適正化の推進に努めること」とされている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、経済性等の観点から、職員等駐車場委託契約は適切に行われているか、駐車整理業務により生ずる利益を貴法人が適切に享受しているかなどに着眼して、24年度から26年度までの間に貴法人が締結した職員等駐車場委託契約を対象として、貴法人において契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、委託先である和進会の委託業務の実施状況等についても、貴法人に対して調査及び報告を求めるなどして検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴法人が和進会との間で締結した職員等駐車場委託契約の主な内容は、次のとおりとなっている。
① 貴法人は、職員等駐車場に係る駐車整理業務を和進会に無償で委託するものとする。
② 和進会は、駐車区域に駐車する者から駐車整理料を徴収することができる。
③ 駐車整理料は、職員等駐車場に係る駐車整理業務に要する最低限度の費用相当額とし、その額はあらかじめ貴法人が和進会と協議して定めるものとする。
④ 和進会は上記③の駐車整理料をもって職員等駐車場に係る駐車整理業務に必要な一切の経費(以下「駐車整理業務経費」という。)を賄うものとする。
⑤ 和進会は、職員等駐車場に係る駐車整理業務の収支に係る会計を他の業務に係る会計と区分し、前者の会計において剰余金が生じたときは、貴法人と協議した上で、職員等駐車場の施設又は設備の整備、その他職員等駐車場に係る駐車整理業務等に必要な経費に充てるものとする。
そして、職員等駐車場委託契約により和進会が徴収した駐車整理料の収入額及び駐車整理料により賄っている駐車整理業務経費の支出額は、24年度から26年度までの間でそれぞれ計1億2505万余円及び計9876万余円となっていた。
貴法人は、毎年度、和進会と職員等駐車場委託契約を随意契約により締結するに当たり、本件契約が契約の性質又は目的が競争を許さないなどの随意契約によることができる場合に該当するか否かについて特段の確認を行っていなかった。
しかし、和進会が行っている駐車整理業務の内容である、駐車区域における車両の誘導、適正駐車の指導、パスカードの発行、駐車整理料の収納・管理等の実施には、特別な専門的知識を必要とするものではなく、この種の業務を行うことができる業者は多数存在していることから、職員等駐車場委託契約の相手方を和進会に限定する特段の理由はない。現に、貴法人は、患者等駐車場については、駐車整理料を貴法人の収入とした上で、駐車整理業務を車両の誘導等に係る業務と駐車整理料の収納に係る業務とに分けて、それぞれ別の民間の業者と一般競争入札等により契約を締結している。
したがって、貴法人は、患者等駐車場に係る上記の契約を参考にして職員等駐車場委託契約の内容を見直すなどすれば、一般競争入札等の競争性及び透明性を確保した契約方法により契約を締結することが可能であると認められる。
職員等駐車場に係る駐車整理業務の会計は、前記のとおり、職員等駐車場委託契約に基づき、和進会が他の業務に係る会計と区分して管理している。そして、24年度から26年度までの当該会計に係る収支等の状況をみたところ、貴法人は、23年度以前に職員等駐車場の収容台数に限りがあるなどの理由から、駐車場の利用希望者数を抑制することを目的として駐車整理料の金額を引き上げており、表のとおり、各年度の駐車整理料収入は、駐車整理業務経費を上回り剰余金が発生する状況となっている。このため、和進会が管理する職員等駐車場に係る駐車整理業務の会計において、23年度以前の剰余金と合わせて、26年度末現在で4239万余円の剰余金が生じていた。
表 職員等駐車場委託契約に係る収支等の状況
区分 | 収入額 | 支出額 | 剰余金 |
---|---|---|---|
平成24年度 | 42,429,041 | 30,317,366 | 12,111,675 |
25年度 | 41,869,794 | 32,393,844 | 9,475,950 |
26年度 | 40,752,522 | 36,053,937 | 4,698,585 |
小計 | 125,051,357 | 98,765,147 | 26,286,210 |
23年度以前の剰余金の計 | / | 16,112,897 | |
合計 | / | 42,399,107 |
したがって、貴法人が、患者等駐車場と同様に職員等駐車場に係る駐車整理料を貴法人の収入として受け入れることとしていれば、26年度末までに前記の剰余金に相当する計4239万余円の利益を得ることができたと認められる。
(是正改善を必要とする事態)
職員等駐車場委託契約について、契約の内容を見直すなどすれば、一般競争入札等の競争性及び透明性を確保した契約方法により契約を締結することが可能であるのに、随意契約により委託契約を締結していたり、駐車整理料による収入が駐車整理業務経費を上回っていて利益が生じているのに貴法人がこれを享受していなかったりしている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴法人において、次のことなどによると認められる。
貴法人は、契約の競争性及び透明性を確保するとともに、自己収入の増加に努めることが求められている。そして、貴法人においては、職員等の利便性の確保等の観点から今後も引き続き職員等駐車場を運営していくことが見込まれる。
ついては、貴法人において、職員等駐車場委託契約の競争性及び透明性を確保するとともに、自己収入の増加を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。