ページトップ
  • 国会からの検査要請事項に関する報告(検査要請)|
  • 会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書|
  • 平成28年4月|

東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について


第1 検査の背景及び実施状況

1 検査の要請の内容

会計検査院は、平成24年8月27日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月28日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

(一)検査の対象

国会、裁判所、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省

(二)検査の内容

東日本大震災からの復興等に対する事業に関する次の各事項

  1. ① 東日本大震災に伴う被災等の状況
  2. ② 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

2 平成22年度決算審査措置要求決議の内容

参議院決算委員会は、24年8月27日に検査を要請する旨の上記の決議を行っているが、同日に「平成22年度決算審査措置要求決議」を行っている。

このうち、上記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。

1 東日本大震災復旧・復興関係経費の迅速かつ円滑な執行の確保について

平成23年度の東日本大震災復旧・復興関係経費の執行状況については、全体予算14兆9243億円のうち、翌年度繰越額が4兆7694億円、不用額が1兆1034億円と多額に上っており、予算の執行率は約6割にとどまった。特に、復興庁所管の経費1兆3141億円のうち1兆3101億円は執行されずに繰り越され、23年度における執行率は0.02%となっており、また、国土交通省所管の経費では、災害公営住宅等整備事業費1115億円のうち、執行額等はわずか3億円であり、残り1112億円が不用額として処理されるなど、復旧・復興関係予算の執行が当初の予定どおり進んでいない事態が明らかとなっている。

政府は、これらの事態が被災地における早期の復旧・復興や住民の生活再建の支障となることを認識し、事業の着手に必要な復興計画との調整等を速やかに実施した上で、迅速かつ円滑な予算執行に努めるべきである。また、予算の執行率が極端に低かった事業については、事業費の見積りが適切であったか検証するなどして必要な見直しを行い、多額の国民負担によって賄われている復旧・復興予算が適正、有効かつ効率的に活用されるよう、最善を尽くすべきである。

3 平成22年度決算に関する決議における内閣に対する警告の内容

参議院は、25年5月20日に決算委員会において、平成22年度決算に関して内閣に対し警告すべきものと議決し、同月22日に本会議において内閣に対し警告することに決している。

この警告決議は、前記の検査を要請する旨の決議の翌年に行われたものであり、この警告決議のうち、前記検査の要請に関する項目の内容は、次のとおりである。

1 東日本大震災からの復旧・復興に向けた迅速かつ効果的な取組が求められている中、復旧・復興関係経費の一部が、震災前から一般会計により継続的に実施されていた事務・事業等に支出されたり、被災地域における社会経済の再生や生活の再建等に直接結びつくとは考え難い使途に充てられたりなどしていたことは、看過できない。

政府は、同経費の財源が増税による国民負担で賄われていることを強く認識して、その使途が被災地域それぞれの需要や期待に応えるものとなるよう的確に予算を措置し、これまでの支出の精査による見直し作業を更に進めるとともに、今後とも、住まいとなりわい再建を最優先に、予算の査定、事業実施箇所の選定等を厳格に行うべきである。

4 これまでの会計検査の実施状況

東日本大震災の復旧・復興事業の実施に当たっては、東日本大震災復旧・復興関係経費(以下「東日本大震災関係経費」という。)に係る予算(以下「復旧・復興予算」という。)が、23年度については、一般会計の補正予算(第1次から第3次まで。以下、各次の補正予算を「23年度第1次補正予算」「23年度第2次補正予算」及び「23年度第3次補正予算」といい、これらを合わせて「23年度補正予算」という。)において、24年度以降については、東日本大震災からの復興に係る国の資金の流れの透明化を図るとともに復興債の償還を適切に管理するために、復旧・復興事業に関する経理を明確化することを目的として設置された東日本大震災復興特別会計(以下「復興特会」という。)の24年度から27年度までの予算(以下、予算措置年度及び当初又は補正の別に「24年度当初予算」「24年度補正予算」「25年度当初予算」「25年度補正予算」「26年度当初予算」「26年度補正予算」及び「27年度当初予算」といい、各年度の当初予算及び補正予算を合わせて「24年度予算」「25年度予算」及び「26年度予算」という。)において措置されている。

前記の要請により、会計検査院は、復旧・復興予算が措置されている16府省庁等(注1)を対象として、①東日本大震災に伴う被災等の状況、②復興等の各種施策及び支援事業の実施状況等について検査を実施し、これまでに、24年10月25日、25年10月31日及び27年3月2日の3回、会計検査院長から参議院議長に対して報告している(以下、それぞれの報告を「24年報告」「25年報告」及び「27年報告」という。)。

(注1)
16府省庁等  国会、裁判所、内閣、内閣府、復興庁、総務、法務、外務、財務、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、国土交通、環境、防衛各省

これらの報告の概要は、次のとおりである。

(1)24年報告及び25年報告に係る検査の実施

会計検査院は、24年報告に係る検査においては16府省庁等に対して、また、25年報告に係る検査においては16府省庁等とともに被災自治体のうち岩手、宮城、福島各県(以下「東北3県」という。)を除く8道県(注2)と管内100市町村(内訳については別図表1参照)に対して会計実地検査を行うなどして、①東日本大震災に伴う被災等の状況について検査を実施するとともに、②復興等の各種施策及び支援事業の実施状況等に対する検査として、国の復旧・復興への取組等の状況や復旧・復興予算の執行状況、東日本大震災復興特別区域法(平成23年法律第122号。以下「特区法」という。)に基づく復興特別区域制度の適用状況、各被災自治体における復旧・復興事業の実施状況等について検査を実施した(両報告の検査の概要については別添参照)。

(注2)
8道県  北海道、青森、茨城、栃木、埼玉、千葉、新潟、長野各県

(2)27年報告の概要

会計検査院は、27年報告に係る検査として、被害額の推計や復旧・復興事業の財源の確保についても着眼して、16府省庁等とともに東北3県を含む20都県(注3)に対して会計実地検査を行うなどして、引き続き検査を実施した。

27年報告の概要は、次のとおりである。

(注3)
20都県  東京都、岩手、宮城、福島、神奈川、石川、福井、岐阜、愛知、奈良、岡山、徳島、香川、高知、佐賀、長崎、熊本、大分、鹿児島、沖縄各県

① 被害額の推計について、内閣府は、被害額を約16.9兆円としていた。その推計方法は、再調達価格で算出しているものと減価償却後の価格によるものとが混在していた。また、被害額に推計の対象とならないものなどを一部含めていたり、被害額に反映していなかったりしていたものが見受けられた。

② 復旧・復興事業の実施について、23年度補正予算、24年度予算及び25年度予算の執行状況をみると、予算現額(歳出予算額(当初予算額、補正予算額及び予算移替額の合計)に予備費使用額及び流用等増減額を加減したもの。以下同じ。)の計は25兆1009億余円に対して、支出済歳出額(以下「支出済額」という。)の計は20兆1211億余円(執行率(支出済額の予算現額に対する割合。以下同じ。)80.1%)、翌年度繰越額(以下「繰越額」という。)の計は1兆9604億余円(繰越率(繰越額の予算現額に対する割合。以下同じ。)7.8%)、不用額の計は3兆0192億余円(不用率(不用額の予算現額に対する割合。以下同じ。)12.0%)となっていた。

東北3県及び管内の市町村に23年度から25年度までに交付等された国庫補助金等は計8兆1780億余円となっていて、補助事業等、復興交付金事業(東日本大震災復興交付金(以下「復興交付金」という。)を原資として基金の設置造成又は積増し(以下「設置造成等」という。)を行うなどして実施される事業。以下同じ。)及び復興関連基金事業(国庫補助金等を原資として設置造成等される基金により復旧・復興事業として実施される事業。以下同じ。)に係る交付額並びに震災復興特別交付税(交付税及び譲与税配付金特別会計(以下「交付税特会」という。)において一般会計及び復興特会から受け入れた繰入金により地方公共団体に交付されるもの。以下同じ。)の交付額が、上記の8兆1780億余円に占める割合は、補助事業等が31.7%、復興交付金事業が24.0%、復興関連基金事業が21.8%、震災復興特別交付税20.3%等となっていた。

これらのうち、復興関連基金事業18基金62事業の25年度末における執行状況をみると、交付額に対する取崩額の割合(以下「基金事業執行率」という。)が100%となっている事業がある一方、1.1%となっている事業があるなど、事業により大きな差が見受けられた。

また、復興交付金による市街地・居住地復興のための事業の実施状況等においては、漁業集落防災機能強化事業、災害公営住宅整備事業等、都市再生土地区画整理事業及び防災集団移転促進事業(以下「防集事業」という。また、これらを合わせて「住まいの復興に係る4事業」という。)を実施している地区延べ1,004地区、整備計画戸数計45,021戸のうち、集中復興期間の終了年度である27年度末までの整備計画戸数は28,324戸(62.9%)となっており、残りの16,697戸(37.0%)は、集中復興期間終了後の28年度以降に完了する見込みなどとなっていた。

③ 東北3県における復興特別区域制度の活用状況をみると、復興推進計画では、26年9月末までに、管内の市町村において作成された計96計画で14の特例の適用を受けることができるようになっていた。復興整備計画では、26年9月末までに、管内の市町村が県と共同して同計画を作成していて、特区法に規定されている14の復興整備事業のうち6事業を記載し、各種の特例を受けることができるようになっていた。復興交付金事業計画では、管内の79市町村が復興交付金事業計画を作成して、復興庁に提出していた。

④ 復興関連基金事業において、区分して経理していない又は全額が国庫に返納された事業を除いた計102事業の国庫補助金等交付額は計3兆4013億余円で、基金事業執行率は40.5%となっていた。このうち、東北3県では、同種の復興事業等により代替可能であったことなどにより基金事業の執行が低調となっているものなどが見受けられた。東北3県を除く17都県では、事業の対象となる被災者がほとんどいないことなどのため今後の実施が見込めないものなどが見受けられた。

⑤ 東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)の福島第一原子力発電所(以下「福島第一原発」という。)の事故による原子力災害からの復興再生において、25年度に実施された原子力災害関係の事業に係る予算現額は計1兆1629億余円であり、「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号。以下「放射性物質汚染対処特措法」という。)に基づき放射性物質により汚染された土壌等の除染等(以下「汚染土壌等の除染等」という。)について、除染特別地域(注4)の進捗状況をみると、26年9月末現在、田村市、双葉郡楢葉、大熊両町及び川内村は、帰還困難区域(注5)を除き終了しているが、その他の市町村は当初の目標から遅れるなどしていた。また、福島県等8県管内で除染実施計画を策定している市町村における進捗状況をみると、26年9月末現在、福島県管内の市町村では完了したものはなく、その他の7県管内の市町村のうち、現在も事業を実施しているのは一部となっていた。

長期避難者の生活拠点の形成を支援する生活拠点形成事業(以下「生活拠点形成事業」という。)について、福島県は、長期避難者のための災害公営住宅の整備計画における全体戸数4,890戸のうちおおむね3,700戸について27年度までの入居を目指すとしていたが、26年9月末現在、27年度末までの完成予定は1,170戸(入居開始23戸を含む。)となっていた。

(注4)
除染特別地域  福島第一原発から放出された放射性物質による環境の汚染が著しいと認められることその他の事情から国が汚染土壌等の除去、当該汚染の拡散の防止その他の措置(以下、本文において「除染等の措置」という。)並びに除去土壌等の収集、運搬、保管及び処分を実施する必要があるとして環境大臣が指定した双葉郡楢葉、富岡、大熊、双葉、浪江各町、双葉郡葛尾、相馬郡飯舘両村の全域並びに田村、南相馬両市、伊達郡川俣町及び双葉郡川内村の一部地域
(注5)
帰還困難区域  避難指示区域のうち、平成24年3月時点での空間線量率から推定された年間積算線量が50mSvを超えていて、事故後6年間を経過してもなお年間積算線量が20mSvを下回らないおそれがある地域

⑥ 復旧・復興事業の財源の確保等の状況について、各年度の収納済歳入額等をみると、23年度は、復興公債金、歳出予算の既定経費の減額等により計14兆4733億余円、24年度は、復興公債金、一般会計より受入等により計5兆0222億余円、25年度は、一般会計より受入、前年度剰余金受入、復興特別法人税等により計6兆7703億余円となっていた。そして、23年度から25年度までの復興債の年度末現在額は、23年度末現在額11兆2574億余円、24年度末現在額11兆0437億余円、25年度末現在額9兆0135億余円となっていた。

そして、27年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。

会計検査院は、24年次及び25年次に引き続き、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を実施した。

国及び地方公共団体は、引き続き全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、東日本大震災発生後3年11か月を経過した今もなお、数多くの住民は応急仮設住宅や避難先での不自由で困難な生活を余儀なくされており、被災地の社会経済の再生や生活の再建には復旧・復興事業の進捗の遅れや地域の人口減少等、数多くの課題があり、これらを解決するには多くの困難がある。

このため、復旧・復興のための施策は、被災地に暮らす住民の声に配慮して迅速かつ円滑に実施する必要があり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即し、更なる復旧・復興の進展につながるよう、今後、次の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。

  • ア 復旧・復興事業の実施については、進捗している事業が多くある一方、事業完了までに時間を要しているものが多く見受けられることから、国は、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から復興需要が高まる期間として位置付けた27年度末までの集中復興期間において、国庫補助事業等の各種復旧・復興事業が東北3県等の地方公共団体において円滑かつ迅速に実施できるよう、事業の実施状況や復興の進捗に課題となっている事項を把握するとともに、集中復興期間後も被災地の復旧・復興を図るため引き続き支援し、被災者の生活の再建が迅速に行われるよう努めること
  • イ 東北3県及び管内の市町村では、多数多額の市街地・居住地復興のための事業を実施するなどしていることから、国は、復興特別区域制度がより一層活用されるよう、また、復興交付金等により実施する各種事業が加速化されるよう、引き続き、地方公共団体と十分な意見交換を行いつつ、情報提供、助言その他必要な協力を行い、迅速かつ着実な復興の支援に努めること
  • ウ 復興関連基金事業において、国は、今後も基金団体と十分連携し、適切かつ有効に事業が実施されるよう努めるとともに、基金の執行や基金規模は適切かなどの検証を行い、基金団体に今後の使用が見込めない余剰金等が生じている場合には、これを国庫に返納することを要請するなど、資金を適切かつ有効に活用するよう努めること
  • エ 原子力災害からの復興再生について、国は、引き続き除染等の事業の早期の完了を目指すとともに、現在も多くの住民が避難生活を送っている福島県については、住民の意向を踏まえるなどして、長期避難者支援等の事業の円滑かつ迅速な実施に努めること
  • オ 復旧・復興事業は、今後とも多額の経費が見込まれることから、国は、各種事業が有効かつ効率的に実施されるよう努めるとともに、復興財源が復興特別税等により確保されていることなどから、引き続き国民負担の増大を抑制しつつ、必要な財源の確保に努めること

5 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1)検査の観点及び着眼点

会計検査院は、27年報告において、各府省庁等が、一体となって「東日本大震災からの復興の基本方針」(以下「復興基本方針」という。)や復興計画等に基づき被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策等を継続して実施していることから、引き続き東北3県の被災の状況、集中復興期間における復興事業の実施状況等について検査を実施して、その結果については取りまとめが出来次第報告することとした。

国は、東日本大震災の発生後、23年7月に復興基本方針を策定して、「復興期間」を10年間とし、被災地の一刻も早い復旧・復興を目指す観点から当初の5年間を「集中復興期間」と位置付けた。この集中復興期間において国は、復旧・復興事業における被災自治体の負担を実質ゼロとするなどの前例のない幅広く手厚い措置を実施し、事業費と財源の見込みを25兆円程度の規模とする復興財源フレーム(以下「25兆円フレーム」という。)を策定した。

25兆円フレームにより確保された予算の執行状況については、過去3回の報告によれば、被災自治体においては限られた人員で膨大な事業を実施しており、関係機関との調整や地域住民との協議等に時間を要したことなどにより、多額の繰越額が計上されるなどの状況が継続してきている。一方、集中復興期間が終了し、復旧・復興事業により実施されてきた各種事業も完了した事業が増加し、投入された予算が事業の成果として目に見える段階になってきている。

そこで、会計検査院は、今回の検査において、東日本大震災からの復旧・復興事業に関する各事項について、合規性、効率性、有効性等の観点から、次の着眼点により検査を実施した。

ア 東日本大震災に伴う被災等の状況

東日本大震災に伴う被災の状況はどのようになっているか、避難者数はどのように推移しているか、国は、東日本大震災からの復旧・復興を推進するためにどのような取組を行っているか。

イ 復興等の各種施策及び支援事業の実施状況

(ア)復興特会において措置された復旧・復興予算は、どのような経費に配分されているか、予算の執行は計画的、効率的に行われているか。また、復興債の発行及び償還は適時に行われているか。

(イ)復興交付金事業及び復興関連基金事業における各基金の使途は適切か、使用見込みのない余剰金が基金に滞留するなどしていないか。また、被災地のうち津波等により甚大な被害を受けた青森、岩手、宮城、福島、茨城、千葉各県(以下「沿岸6県」という。)における補助事業等、復興交付金事業、復興関連基金事業等の復旧・復興事業について、予算の執行は円滑かつ適切に行われているか。特に、復興交付金事業や復興関連基金事業は、計画に照らして適時に実施されているか。

(ウ)復興基本方針の基本的考え方に沿って、沿岸6県における復旧・復興事業の成果は着実に上がっているか。特に、災害に強い地域づくり、地域における暮らしの再生、地域経済活動の再生等に向けた取組について、期待される目的、成果が達成されているか。

(エ)原子力災害からの復興再生について、各府省庁、福島県等が実施する事業は円滑かつ迅速に実施されているか。特に、除染等による放射能汚染対策、長期避難者の支援、長期避難者の早期帰還への対応等の福島の再生加速化に資する事業等は計画に照らして適時に実施されているか。また、国から東京電力に対する求償は適切に行われているか。

(2)検査の対象及び方法

会計検査院は、27年次においては、復旧・復興予算が措置されている16府省庁等を対象として引き続き検査するとともに、東日本大震災による被害を受けた地方公共団体については、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)第2条第2項に規定する地方公共団体(以下「特定被災地方公共団体」という。)である青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野各県並びに特定被災地方公共団体である市町村及びその区域が特定被災区域(同条第3項に規定する区域をいう。以下同じ。)内にある特定被災地方公共団体以外の市町村に、特定被災区域をその区域とする市町が所在する北海道及び埼玉県を加えた11道県及び227市町村(以下「特定被災自治体」という。内訳については別図表1参照)における被災状況、復旧・復興事業等の実施状況等について検査した。

特に、沿岸6県及び管内200市町村(内訳については別図表1参照)に対して、予算の執行状況や成果等の状況について検査した。また、株式会社日本政策金融公庫(以下「日本公庫」という。)に対して、事業者等への資金繰り支援の成果等の状況について検査した。

検査に当たっては、16府省庁等の内部部局等並びに日本公庫、沿岸6県及び管内57市町(内訳については別図表1参照)に対して374人日を要して会計実地検査を行い、調書及び関係資料を徴したり担当者等から説明を聴取したりするなどして把握した内容等を基に調査分析を行った。