① 人的被害、建物への被害、社会基盤施設や農林水産業等の被害はいずれも甚大であり、内閣府によればその被害額は、約16兆9000億円(ただし、東京電力福島第一原発の事故に伴う放射能汚染被害は含まれていない。)と推計されている。そして、国は、被災者の救援、救助等の被害応急対応を実施するとともに、東日本大震災復興基本法、特区法等の制定、復興基本方針の策定、復興庁の設置等を実施し、国の総力を挙げて復旧・復興に取り組んでいる。
国は、これらの施策に必要な財源を確保するための特別措置として、復興財源確保法を施行するとともに、23年度補正予算(第1次から第3次まで)により計14兆9354億余円を東日本大震災関係経費として財政措置した。
② 復旧・復興事業の実施状況について、予算措置年度別の予算現額、支出済額等から執行状況をみると、23年度の予備費及び23年度補正予算の同年度における執行率は60.6%となっていて、これらを経費項目別にみると、全てが執行されている経費項目が多くある一方、年度内に執行されないままその大半が翌年度に繰り越されている経費や執行率が20%程度と低くなっている経費項目も見受けられ、経費項目別の執行率が区々となっていた。また、特別会計における執行状況を反映した支出済額の予算現額に対する割合は54.2%であり、一般会計における執行率よりも低くなっていた。そして、このような執行状況の結果、全体の38.3%が翌年度に繰り越され、7.4%が不用となっていた。
③ 特区法に基づく復興特別区域制度による各種計画の実施状況をみると、復興推進計画については、24年8月3日現在、20の復興推進計画における28分類の特例が認定され、復興整備計画については、同年8月10日現在、復興整備協議会を組織した28市町村のうち21市町村が公表していた。また、復興交付金事業計画については、同年7月までに復興庁は市町村から計3回の提出を受け、このうち第2回までの交付対象事業費6220億余円に対して5122億余円を交付可能額として82市町村に通知していた。そして、交付対象事業費6220億余円のうち、防集事業、災害公営住宅整備事業等の5事業が4528億余円を占めていた。
④ 58市町村の復旧・復興事業等の実施状況を検査した結果、各市町村の事業執行率は市町村によって大きな差が見受けられた。また、これらの市町村では、復旧・復興事業の実施に当たる職員に大きな事務負担が生じており、アンケートにおいて、復興事業の増加に伴う各種業務に対応するための人的支援やそのための体制整備を要望していた。
そして、24年報告の検査の結果に対する所見は、次のとおりである。
国は、復旧・復興に当たり、被災地の地方公共団体に対して、既存の制度にとらわれない行政手続の簡素化や財政面及び人材面からの支援を実施し、被災地の地方公共団体が行う復興の取組を総力を挙げて支援することとしている。そして、この復旧・復興は、被災地の単なる災害復旧にとどまらない活力ある日本の再生を視野に入れた抜本的な対策及び一人一人の人間が災害を乗り越えて豊かな人生を送ることができるようにすることを旨として行われる施策の推進により実施されるべきとされていることから、復興の成果は、国民全体が感じ取れるものとするとともに、将来の世代にわたって誇ることができるものにする必要がある。
会計検査院は、今回、東日本大震災からの復旧・復興に対する事業について検査を実施した。国及び地方公共団体は、現在全力を挙げて復旧・復興に取り組んでいるところであるが、復旧・復興のための施策は、総合的かつ中長期的な視点を有し、被災地に暮らす国民の声やその迅速性にも配慮して実施することが不可欠であり、復興庁及び関係府省等は連携して、国及び地方公共団体が行う施策が基本理念に即したものとなるよう、今後、以下の点に留意して、復興施策の推進及び支援に適切に取り組む必要がある。