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政府の情報システムを統合・集約等するための政府共通プラットフォームの整備及び運用の状況について


検査対象
22府省
政府共通プラットフォームの概要
各府省が別々に整備・運用していた政府情報システムを統合・集約化し、運用コストの削減、セキュリティの強化等を図るための基盤
検査の対象とした政府情報システムのシステム数
1,312システム
政府共通プラットフォームに係る契約件数及び支払額
119件 170億5646万円 (平成23年度~27年度)
平成27年度までに政府共通プラットフォームの利用を開始した政府情報システムのシステム数
50システム
上記に係る契約件数及び支払額
166件 182億2308万円(平成23年度~27年度)

1 検査の背景

(1)国の情報通信技術に係る施策等

ア 国の情報通信技術に係る施策の推進体制

政府は、平成6年12月に、行政の総合性の確保、簡素化・効率化の推進、国民のニーズへの対応等を図るために、「行政情報化推進基本計画」(平成6年12月閣議決定)を策定し、行政の情報化を総合的、計画的に推進することとした。

そして、13年1月に、高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(平成12年法律第144号)に基づいて、内閣に、内閣総理大臣を本部長とする高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(25年3月に通称を「IT戦略本部」から「IT総合戦略本部」へ変更。以下「IT総合戦略本部」という。)を設置し、政府のIT戦略等に基づく各種施策を推進している。

政府は、電子政府の推進体制を確立・強化するために、14年に、各府省に情報化統括責任者(以下「府省CIO」という。)を設置しており、15年7月に、府省CIOを補佐し、支援・助言等を行う各府省情報化統括責任者補佐官(以下「府省CIO補佐官」という。)を各府省に設置している。府省CIO及び府省CIO補佐官は、政府の全体方針に沿って府省内における電子政府の取組を推進し、かつ、府省内の基本的な方針又は計画の策定等を行う各府省の情報化推進委員会の構成員となっている。

また、政府は、18年に、各府省にプログラム・マネジメント・オフィス(以下「PMO」という。)を設置し、府省CIOの下で、府省内の政府情報システムの企画、調達、運用、評価等の業務について統括する体制を整備している。

さらに、政府は、24年8月に、内閣に政府情報化統括責任者を設置し、25年5月に、内閣法(昭和22年法律第5号)等を改正し、政府全体のIT政策及び電子行政の推進等の企画立案・総合調整を行う権限を持つ内閣情報通信政策監(以下「政府CIO」という。)として、IT政策及び電子行政推進の司令塔の役割を担わせることとした。また、政府は、各府省におけるITガバナンス(注1)の強化を支援するために、25年度から、府省CIO補佐官を内閣官房が一元的に採用・管理し、各府省の状況に応じて配置することとした(以下、内閣官房が採用したCIO補佐官を「政府CIO補佐官」という。)。これにより、府省CIO補佐官は、原則として政府CIO補佐官を充てることとなった。

28年3月末時点の政府全体のITガバナンスの体制は、政府CIO、政府CIO補佐官、内閣官房及び総務省により構成されるとともに、IT総合戦略本部を頂点として、その下に、各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議(以下「CIO連絡会議」という。)等が設置されている。CIO連絡会議は、関係行政機関の連携の下で政府全体として情報化推進体制を確立し、行政の情報化等を一層推進することを目的として14年9月に設置された機関であり、議長を政府CIO、副議長を総務省行政管理局長等、構成員を各府省CIOとし、庶務を総務省行政管理局の協力を得て内閣官房が担うという体制で運営されている。また、総務省行政管理局は、国の行政制度一般に関する基本的事項や行政機関の運営に関する企画及び立案に関することなどを所掌しており、その一環として、行政情報システムに関する企画、立案等についても取り組んでいる。

そして、各府省は、情報化推進委員会、府省CIO、府省CIO補佐官及びPMOに、①府省内における情報化戦略等の策定・推進・評価、②投資管理、③人材育成・確保の各機能及び役割を担わせるとともに、内閣官房及び総務省と連携しつつ、ITガバナンスの確立・強化に努めることとなっている(図1参照)。

(注1)
ITガバナンス  政府においては、政府CIO及び府省CIOを中心とする体制の下に組織に組み込むこととされている、政府情報システムの整備又は管理のための全ての活動、成果及び関係者を適正に管理し、電子政府の構築及び世界最先端IT国家の実現へと導く仕組みをいう。

図1 政府全体及び府省内全体のITガバナンスの体制

図1 政府全体及び府省内全体のITガバナンスの体制 画像

イ 世界最先端IT国家創造宣言における政府共通プラットフォームの位置付け

政府は、25年6月に、政府のIT戦略として、32年までに世界最高水準のIT利活用社会を実現するとする「世界最先端IT国家創造宣言」(平成25年6月閣議決定。以下「創造宣言」という。)を策定している。そして、国・地方を通じた行政情報システムの改革として、クラウド(注2)の徹底活用により、大規模な効率化と縦割りを打破した継ぎ目のない連携、変化への迅速かつ柔軟な対応力の向上を図り、効率的な行政運営と徹底したコスト削減を実現するなどとしている。

そして、創造宣言では、政府情報システム改革に関するロードマップ(以下「ロードマップ」という。)を策定し、政府CIOの指導の下、重複する政府情報システムやネットワークの統廃合、必要性の乏しい政府情報システムの見直し及び政府共通プラットフォーム(以下「政府共通PF」という。)への移行を進めるなどとしている。さらに、30年度までに、24年度に約1,500あった政府情報システム数を半数近くまで削減し、特別な検討を要する政府情報システムを除き、33年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化し、拠点分散を図りつつ、災害や情報セキュリティに強い行政基盤を構築し、運用コストを圧縮する(3割減を目指す)などとしている。

また、政府CIOの下、ロードマップの着実な実施に向けた政府情報システムに関する投資計画(以下「投資計画」という。)を予算編成に合わせて策定・推進するとともに、各府省のIT投資の状況等をインターネット経由で一覧性を持って国民が確認できる仕組みであるITダッシュボードの運用を26年度から開始するとしている。

政府は、情勢の変化や取組の進捗によって、創造宣言の内容を毎年度改定している。そして、28年5月の改定では、政府共通PFへの移行数を33年度までに316システムと見込み、これを含めて政府情報システム全体では、24年度の1,450システムから30年度までに908システムを削減することとなっている(24年度比約63%減)。さらに、運用コストの圧縮については、25年度の運用コスト約4000億円と比較して、政府共通PF等の取組を含めてコスト削減対象のシステム全体で33年度までをめどに年間1000億円を超える削減を見込むこととなっている(25年度比約28%減。当初目標30%減)。

内閣官房は、前記の3割減について、政府共通PFへの移行を含めた政府情報システムの統廃合等や各府省個別の業務の見直しなどを踏まえたものであり、コスト削減額を詳細に計算したものではなく、今後の政府情報システムの集約・統合において抜本的な効率化・合理化等の推進を前提とした戦略的目標であるとしている。そして、内閣官房は、運用コストの削減を目指した取組を着実なものとするため、各府省から政府情報システムの運用コストの削減見込額及び削減状況の報告を受けており、28年6月にITダッシュボードにおいて、結果を公表している。これによると、33年度の削減額の見込みは28.0%(1066億8796万余円)で、27年度末の削減額の実績は4.4%(167億1427万余円)とされている。なお、この27年度末の削減額の実績には、政府共通PFへシステムの全てを移行した政府情報システム等の削減額の実績は含まれていない。

(注2)
クラウド  クラウドコンピューティングの略。クラウドコンピューティング技術とは、一元管理されたコンピュータ資源をネットワーク経由で利用することにより、システム開発、管理及び運用の効率化を図る技術のこと

(2)政府共通PF構築の方針

政府共通PF構築の方針は、次のとおりである(表1参照)。

表1 政府共通PF構築の方針

年度 決定等年月 組織名等 計画等名 政府情報システムの統合・集約/政府共通PFの役割 政府情報システム数及び運用コスト
平成
21
21年4月 IT戦略本部 デジタル新時代に向けた新たな戦略~三か年緊急プラン~ 霞が関クラウド(仮称)を構築し、全府省横断的に業務及びシステムの最適化を推進する。 (記述なし)
22 22年4月 在り方研究会 政府情報システムの整備の在り方に関する研究会最終報告書~政府共通プラットフォームの構築に向けて~ 政府共通PFの構築を提言。政府共通PFの役割として、大きく、政府情報システムの統合・集約化の基盤と各政府情報システムが保有するデータの連携の基盤の二つを挙げている。 (記述なし)
22年5月 IT戦略本部 新たな情報通信技術戦略 クラウドコンピューティング技術を活用した政府共通PFにより各府省別々に構築・運用している政府情報システムの統合・集約化を進める。 (記述なし)
23 23年8月 IT戦略本部 政府共通プラットフォームの整備方針(電子行政推進に関する基本方針) 原則として、全ての政府情報システムを対象に統合・集約化を図る。政府共通PF整備計画を速やかに策定する。 (記述なし)
23年11月 CIO連絡会議 政府共通プラットフォーム整備計画 原則として、全ての政府情報システムを対象に統合・集約化を図る。当面統合・集約化になじまないと考えられるものについても必要な検討を継続的に行う。 施設・設備、機器の共用や、基盤ソフトウェアの共通化によるシステム運用コストの抑制
25 25年4月 内閣官房政府情報化統括責任者(政府CIO)室参事官及び総務省行政管理局管理官 政府情報システム改革の検討の実施について 政府情報システムが次に該当しない場合は原則として政府共通PFへ移行する。
  1. ①府省内LAN
  2. ②通信ネットワークシステム
  3. ③メインフレーム型の情報システム
  4. ④捜査・国防・航空管制に係る情報システムや、これらのシステムと同等の独立的運用の妥当性が認められるその他の情報システム
(記述なし)
25年6月 IT総合戦略本部 世界最先端IT国家創造宣言 特別な検討を要するものを除き、33年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化。政府共通PFへの移行を加速する。 30年度までに政府情報システム数約1,500(24年度)を半数近くまで削減する。33年度を目途に運用コストを圧縮する(3割減を目指す)。
25年7月 内閣官房IT総合戦略室及び総務省行政管理局 政府情報システム改革に関するロードマップ案の作成について 政府情報システムが次に該当しない場合は原則として政府共通PFへ移行する。
  1. ①府省内LAN
  2. ②通信ネットワークシステム
  3. ③メインフレーム型の情報システム
  4. ④捜査系、装備系、航空管制系の情報システムや、これらのシステムと同等の独立的運用の妥当性が認められるその他の情報システム
(記述なし)
25年12月 CIO連絡会議 政府情報システム改革ロードマップ 33年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化 24年度において、1,450に分散して存在する政府情報システムは統廃合により、30年度に871(60%)まで減少し、このうち、252の政府情報システムが政府共通PFへ移行する。33年度を目途に24年度に比べ、毎年度経常的に要する運用等経費について、全体として3割減を目指す。
26 26年6月 IT総合戦略本部 世界最先端IT国家創造宣言 33年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化 30年度までに政府情報システム数約1,500(24年度)を半数近くまで削減する。33年度を目途に運用コストを圧縮する(3割減を目指す)。
27年3月 CIO連絡会議 政府情報システム改革ロードマップ 33年度を目途に原則全ての政府情報システムをクラウド化 24年度において、1,450に分散して存在する政府情報システムは統廃合により、30年度に801(55%)まで減少し、このうち、259の政府情報システムが政府共通PFへ移行する。新たに65の政府情報システムが追加され、これらについては30年度に58まで減少し、このうち、1の政府情報システムが政府共通PFへ移行する。33年度を目途に24年度に比べ、毎年度経常的に要する運用等経費について、全体として3割減を目指す。33年度を目途に25年度末で1,312に分散して存在する政府情報システムは838(63%)まで減少し、このうち、316の政府情報システムが政府共通PFへ移行する。
27 27年6月 IT総合戦略本部 世界最先端IT国家創造宣言 33年度をめどに原則全ての政府情報システムをクラウド化 30年度までに政府情報システム数約1,500(24年度)を半数近くまで削減する。33年度をめどに運用コストを圧縮する(3割減を目指す)。
28 28年5月 IT総合戦略本部 世界最先端IT国家創造宣言 国の行政情報システムのクラウド化の推進に関しては、政府共通PFへの移行を推進する。 30年度までに24年度の政府情報システム数(1,450)を半数近くまで削減するほか、33年度までをめどに25年度の運用コスト(約4,000億円)を基準に3割削減することを目指す。

ア 霞が関クラウド(仮称)構想と政府情報システムの整備の在り方に関する研究会による政府共通PF構築の提言

IT総合戦略本部は、21年4月に、「デジタル新時代に向けた新たな戦略~三か年緊急プラン~」(平成21年4月IT戦略本部決定)を策定し、この中で、効率的かつ柔軟で安全な政府情報システムの構築、開発・運用コストの削減及び業務の共通化のために、将来における地方公共団体のクラウドとの連携等も視野に入れつつ、霞が関クラウド(仮称)を構築し、全府省横断的に業務及びシステムの最適化を推進するとしていた。

これを受けて、総務省は、霞が関クラウド(仮称)構想の具体化に向け、その在るべき将来像を明らかにするために、21年6月に、総務省行政管理局長の下に政府情報システムの整備の在り方に関する研究会(以下「在り方研究会」という。)を発足させた。

在り方研究会の21年8月の中間取りまとめによると、これまでの政府における業務・システム最適化の取組は、個々の業務・システムの範囲にとどまっており、政府全体としての業務・システムの効率化、各情報システムで保有している情報の有効な相互利用等の全体最適の取組が不十分であるとされている。そして、府省ごと、業務・システムごとに最適化を図る個別最適の取組から、各府省及び各業務・システム横断的に最適化を図る全体最適の取組に転換し、政府横断的な電子政府の取組を一層推進するために、業務・システムごとに個別に整備されている政府情報システムについて、可能な限り統合・集約化を図ることが必要であるとされている。また、統合・集約化に当たっては、より一層の効率化や利便性向上を図る観点から、クラウドコンピューティング技術等の最新の技術を活用した政府共通の基盤を整備することが有効であるとされている。さらに、統計情報や各種行政情報を政府情報システムで共同利用等するデータ連携について、これにより政府内部における情報の利活用・共用を促進し、業務をより一層効率化・高度化することが期待できるとされている。

さらに、22年4月に取りまとめられた在り方研究会の最終報告書によると、①特定の技術・動作環境に依存する情報システム、②極めて高い可用性が求められるシステム、③統合・集約化に当たって大規模な構成変更等が求められる情報システム、④政府共通PFのセキュリティ要件では不十分な情報システム及び⑤民間クラウドサービスの活用が適当と考えられる情報システムは、統合・集約化になじまないと考えられるとされている。

そして、政府情報システムの更なる全体最適を推進するための技術的な解決策として、政府共通PFの構築が提言され、政府共通PFの効果及び活用の方向性並びにフレームワークが示されている。また、政府共通PFの役割として、大きく、政府情報システムの統合・集約化の基盤と各政府情報システムが保有するデータの連携の基盤の二つが挙げられている。

イ 政府共通PF整備計画において見込まれた効果

22年5月にIT総合戦略本部により策定された「新たな情報通信技術戦略」(平成22年5月IT戦略本部決定)において、クラウドコンピューティング技術を活用した政府共通PFにより、各府省別に構築・運用している政府情報システムの統合・集約化を進めることとされた。

さらに、23年8月にIT総合戦略本部により策定された「電子行政推進に関する基本方針」(平成23年8月IT戦略本部決定)において、政府共通PFの整備方針(以下「整備方針」という。)が示された。この中で、政府情報システムの全体最適をより一層推進し、政府のITガバナンスを確立・強化する観点から、原則として、全ての政府情報システムを対象に統合・集約化を図ること、政府のITガバナンスの確立・強化に資する共通基盤システムとして整備する観点から、業務・システムの標準化・共通化を図りながら、統合・集約を進めていくことなどとされた。また、統合・集約化になじまないと考えられる特定の技術・動作環境に依存したり、特段の高度な情報セキュリティ対策が求められたりするなどのシステムについても、将来的な統合・集約化に向けて、段階的に標準化・共通化を図るなど必要な検討を継続的に行うこととされた。

そして、整備方針等に基づき、23年11月に、対象期間(第一期計画期間)を23年度から28年度までとする「政府共通プラットフォーム整備計画」(平成23年11月CIO連絡会議決定。以下「整備計画」という。)が定められた。整備計画では、政府共通PFについて、効率的な予算執行や政府情報システムの質の向上等を図るものであり、政府のITガバナンスを支える重要な基盤であるとしている。また、政府共通PFとともに、同様に国が直接の管理運用主体となる政府共通ネットワークを整備することにより、政府内部の安定的な情報流通を確保するとしており、これらの取組により、政府共通PFの構築には、表2のとおり、ITリソース(注3)の効率的配分による政府情報システムの整備及び運用の効率化等の効果が見込まれるとしている。

表2 整備計画において政府共通PFの整備により見込まれるとされている主な効果

ITリソースの効率的配分による政府情報システムの整備及び運用の効率化
  システム構築に必要なITリソースの提供による迅速なシステム立ち上げや期間限定システム等のシステム構築ニーズへの柔軟な対応
施設・設備、機器の共用や、基盤ソフトウェアの共通化によるシステム運用コストの抑制
政府情報システムの質の向上
  適切な情報セキュリティ対策に関する措置の統一的実施による政府情報システム全体としての情報セキュリティ対策の底上げ
サーバ等の仮想化技術や情報システムの統合・集約化によるスケールメリットを活かした効率的な可用性・信頼性の確保
政府のITガバナンスを支える基盤としての役割
  仮想化技術を活用した同一基盤上における政府の複数システムの運用といったノウハウを含め、政府共通PFの整備及び運用によって得られる知識・経験の蓄積及び政府内における共有
(注)
仮想化技術とは、ITリソース及びそれらの組合せを、物理的構成によらず柔軟に分割したり統合したりなどする技術のこと。1台のサーバを、あたかも複数台のサーバであるかのように論理的に分割し、それぞれに別のオペレーティングシステムやアプリケーションソフトウェアを動作させるサーバ仮想化等がある。
(注3)
ITリソース  ソフトウェアやハードウェアを動作させるのに必要なCPU(Central Processing Unitの略。コンピュータを構成する部品の一つで、各装置の制御やデータの計算・加工を行う装置)、メモリ、ストレージ(データを記録したり保存したりするための機器)等

(3)政府共通PFの概要

ア 政府共通PFへの移行対象システム

政府共通PFの整備及び運用の実務は、整備計画に基づき、総務省が実施することとなっており、政府情報システムの政府共通PFへの移行の可否の判断、移行することにした政府情報システム(以下「移行対象システム」という。)の業務アプリケーションの開発、運用等は、当該移行対象システムの担当府省が実施することとなっている。そして、政府共通PFは、25年3月に運用が開始されており、ロードマップに沿って政府情報システムの移行が順次行われている。

政府は、25年4月に、「政府情報システム改革の検討の実施について」(平成25年4月内閣官房政府情報化統括責任者(政府CIO)室参事官及び総務省行政管理局管理官事務連絡。以下「政府情報システム改革検討要領」という。)を、また、同年7月に、「政府情報システム改革に関するロードマップ案の作成について」(平成25年7月内閣官房IT総合戦略室及び総務省行政管理局事務連絡。以下「ロードマップ作成要領」という。)を発出している。これらによれば、政府共通PFへの統合・集約においては、①府省内LAN、②通信ネットワークシステム、③メインフレーム型の情報システム及び④捜査・国防・航空管制に係る情報システムやこれらのシステムと同等の独立的運用の妥当性が認められるその他の情報システムの4類型(以下、これら情報システムの類型を合わせて「4類型」という。)に該当するものを除いて、原則として政府共通PFへ移行することとされている。

政府は、創造宣言に基づき、25年12月にロードマップを策定し、必要に応じて改定している。

27年3月に改定されたロードマップにおいては、25年度末時点の1,312の政府情報システム(以下「ロードマップ記載1,312システム」という。)について、33年度末までの予定が示されている。そして、政府共通PFへの移行対象システムが316システム、移行対象外のシステムが522システム(政府共通PF及び政府共通ネットワークを含む。)、システムの統廃合により廃止を予定しているシステムが474システムとなっており、最終的に1,312システムから838システムにする予定としている(内訳は別表1参照)。

イ 政府共通PFが提供する環境等

政府共通PFが移行対象システムに提供する環境は、標準環境及び非高可用性要件等環境(以下「ライト環境」という。)の二つの環境がある。このうち、標準環境は、24時間365日のサービス提供、99.99%の年間稼働率の保証、高スペックな外部記憶装置やネットワーク、各種監視サービス、バックアップ等のレベルの高いサービスを提供する環境であり、25年3月の運用開始と同時に提供が開始されている。一方、ライト環境は、比較的小規模な政府情報システムを効率的に統合・集約化するために、標準環境に比べて限られたサービスを提供する環境であり、27年10月に提供が開始されている。そして、どちらの環境を利用するかは、移行対象システムの担当府省が選択できることになっている。

また、政府共通PFが移行対象システムに提供するITリソースのパターン(以下「リソース提供パターン」という。)は、図2のとおり、コンピュータを動作させる基本的なソフトウェアであるオペレーティングシステム(以下「OS」という。)、データベース等を動作させるソフトウェアであるミドルウェア、サーバ及びストレージ、ネットワーク等の組み合わせにより4パターンがある。そして、どのリソース提供パターンを利用するかについても、総務省と調整した上で移行対象システムの担当府省が選択できることになっている。なお、既に28年3月までに政府共通PFの利用を開始している政府情報システムでは、その76.0%がリソース提供パターンaを選択している。

さらに、移行対象システムが政府共通PFへ移行した後に必要とするITリソースの規模についても、総務省と調整した上で各府省が主体的に判断することになっている。

図2 政府共通PFのリソースの提供パターン

図2 政府共通PFのリソースの提供パターン 画像

(4)政府共通PFにおける情報セキュリティ対策の責任の分担等

整備計画では、表2のとおり、政府共通PFを整備することにより見込まれる効果の一つとして、適切な情報セキュリティ対策に関する措置の統一的実施による政府情報システム全体としての情報セキュリティ対策の底上げを挙げている。

政府共通PFと移行対象システムとの間のセキュリティに関する責任分界については、総務省及び担当府省双方の作業手順や遵守事項等を定める「政府共通プラットフォーム運用・保守要領」(平成25年5月政府共通プラットフォーム及び政府共通ネットワークの整備及び運用に関するワーキンググループ了承)において、図3のように示されている。すなわち、総務省及び担当府省は、リソース提供パターンに応じた責任分界に基づいて、それぞれが必要となる情報セキュリティ対策を行うことになっている。ただし、リソース提供パターンaではOS及びミドルウェアについて、リソース提供パターンbではOSについて、総務省が情報セキュリティ対策の設計を行い、各担当府省が対策の実装及び実施を行うことになっている。

図3 政府共通PFと移行対象システムとの責任分界と情報セキュリティ対策の考え方

図3 政府共通PFと移行対象システムとの責任分界と情報セキュリティ対策の考え方 画像

このように、政府共通PFの情報セキュリティ対策は、総務省がその設計、実装及び実施の全てを担う部分、総務省が設計した情報セキュリティ対策を担当府省が実装及び実施する部分並びに担当府省がその設計、実装及び実施の全てを担う部分の三つの部分に分かれている。

また、「政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準」(平成26年5月情報セキュリティ政策会議決定)によれば、政府情報システムの企画・要件定義段階で、当該システムが情報セキュリティリスクに対処するために必要な要件(以下「情報セキュリティ要件」という。)を定義することとされている。そして、情報セキュリティ要件を定義するためには、情報セキュリティ上のリスクの大きさなどを分析した上で、対応の要否、優先順位等を決定すること(以下、このような分析・決定を「リスク評価」という。)が必要になる。また、「情報システムに係る政府調達におけるセキュリティ要件策定マニュアル」(平成23年3月内閣サイバーセキュリティセンター決定)には、リスク評価の簡易手法として、SBDワークシート(注4)を使用する方法が示されている。

(注4)
SBDワークシート  定型化された作業によって必要な情報セキュリティ要件を導出できるワークシート。SBDはSecurity By Designの略で、情報セキュリティを情報システムの企画・設計段階から確保するための方策をいう。

(5)移行対象システムの担当府省が運用開始までに実施する作業

移行対象システムの担当府省が移行に際して実施する作業は、「政府情報システムの政府共通プラットフォームへの移行に係るガイドライン」(平成24年5月政府共通プラットフォーム及び政府共通ネットワークの整備及び運用に関するワーキンググループ了承)に示されている。移行に際して担当府省が実施する作業のスケジュールについて、同ガイドラインに示されている例は次のとおりである(図4参照)。

移行対象システムの担当府省は、移行の作業を進めるに当たっては、総務省の支援を受けながら進めることとなっており、利用を開始する年度の前年度以前に、費用対効果等の検討を通じ、移行可否の検討を行い、移行の判断をすることとなっている。そして、移行することにした場合は、利用するリソース提供パターンや情報セキュリティ要件等の確認等を行い、予算要求等を実施することとなっている。

利用を開始する年度には、設計・開発等を行うとともに、総務省からITリソースの提供を受け、その後、各種テスト、データ移行等を行った上で、政府共通PFでの運用を開始することとなっている。

なお、ロードマップ作成要領等によれば、政府共通PFの利用の開始とは、総務省が調達した政府共通PFのITリソースの利用を担当府省が開始することとされており、また、政府共通PFの運用の開始とは、担当府省が移行対象システムにより利用者に政府共通PF上で業務サービスを提供することとされている。

図4 政府共通PFへ移行するまでのスケジュールの概要(例)

図4 政府共通PFへ移行するまでのスケジュールの概要(例) 画像

(6)政府共通PF及び移行対象システムの費用の構成

政府共通PFに係るITリソース等の機器や施設等の調達は、整備計画に基づき総務省が行っている。政府共通PFに係る費用は、整備に係る経費(以下「PF整備経費」という。)と運用等経費(注5)(以下「PF運用等経費」という。)に分けられる。各府省は、PF運用等経費のうち、移行対象システムが利用する環境やITリソースの規模(注6)等に応じて移行対象システムごとに個別に要する費用(以下「PF運用等分担経費」という。)を、受益者負担の観点から負担することとなっており、総務省は、PF運用等分担経費を各府省に示している。また、政府共通PFを利用する全ての移行対象システムに共通的に要する運用等経費(以下「PF運用等共通経費」という。)については、原則として、総務省が負担することとなっている。

政府共通PFから提供された環境で運用する移行対象システムに係る費用は、移行に係る経費(以下「移行等経費」という。)と業務アプリケーションソフトウェア等に係る運用等経費(以下「府省運用等経費」という。)に分けられる。そして、政府共通PFから提供された環境で運用する移行対象システムの業務アプリケーションソフトウェア等に係る運用・保守等については、移行前と同様に移行対象システムの担当府省がシステム運用保守業者等と運用・保守契約等を締結するなどして行っており、府省運用等経費については、担当府省が負担することとなっている。

すなわち、政府共通PFへの移行後は、PF運用等分担経費、PF運用等共通経費及び府省運用等経費の合計が、政府共通PF及び移行対象システムに係る運用等経費となる(以下、これらを合わせて「PF府省運用等経費」という。)。

これらの政府共通PF及び移行対象システムに係る費用の構成を示すと、図5のとおりである。

CIO連絡会議が、27年7月に策定した投資計画によると、23年度から33年度までの間の政府共通PFに係る総投資額は、PF整備経費に約88億円(27年度までの総投資額は約38億円)、移行等経費に約309億円(同約89億円)の計約397億円(同約127億円)の見込みとなっている。なお、総投資額には、政府共通PF及び各政府情報システムに係る運用等経費は含まれていない。

図5 政府共通PF及び移行対象システムに係る費用の構成

図5 政府共通PF及び移行対象システムに係る費用の構成 画像

(注5)
運用等経費  サーバの借料も含めた運用、保守等に要する経常的な経費
(注6)
ITリソースの規模  ITリソースを構成するCPUの処理速度、メモリの容量、ストレージ容量等