(1件 不当と認める国庫補助金 60,661,908円)
部局等 | 補助事業者等 | 間接補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 | 事業費 | 左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(25) | 内閣府本府 | 沖縄県 | 島尻郡伊是名村 | 沖縄振興特別推進交付金 | 26、27 | 88,203 | 70,562 | 75,828 | 60,661 |
この交付金事業は、伊是名村が、伊是名村伊是名地内において、Uターン・Iターン者向けの住宅を提供することにより定住の促進を図ることを目的として、間取りや構造が同一の木造建築物である定住促進施設2棟の建築、電気設備工事等を実施したものである。
同村は、本件定住促進施設について、柱、横架材(建物の軸組において水平に架け渡す構造材)、筋交いなどの部材で骨組みを構成する木造軸組工法により建築することとして、建築基準法(昭和25年法律第201号)等に基づき、地震や風により生ずる水平力に抵抗するために、柱と柱との間に厚さ1.8cm、幅9.0cmの木材を使用した筋交いを設置した耐力壁を張り間方向(注)に21か所及び桁行方向(注)に10か所それぞれ配置すれば、張り間方向及び桁行方向共に水平力に対して必要な耐力壁の長さをそれぞれ上回ることなどから安全であるとして設計し、これにより施工することとしていた。そして、筋交いについては、施工業者から、引張耐力が高まるなどの理由により厚さ3.0cm、幅9.0cmの木材を使用したいとの協議を受けて、同村はこれを承諾していた。この際、施工業者は、筋交いの端部における接合方法について長さ9.0cmの鉄丸くぎを筋交いから柱及び横架材に計5本打ち付けることとする図面を同村に提出し、これにより施工していた。
しかし、耐力壁を構成する筋交いと柱及び横架材との接合については、建築基準法等に基づく告示「木造の継手及び仕口の構造方法を定める件」(平成12年建設省告示第1460号。以下「告示」という。)等によれば、水平力により生ずる引抜力等に抵抗するために、筋交いに使用する木材の厚さなどに応じて定められた方法又はこれと同等以上の引抜耐力を有する方法により接合することとされている。そして、告示によれば、筋交いに使用する木材が厚さ3.0cm、幅9.0cmの場合は、厚さ1.6mmの鋼板添え板を用いた上で、筋交いに対しては径12mmのボルト締めを行うとともに長さ6.5cmの太め鉄丸くぎを3本、柱に対しては同くぎを3本、横架材に対しては同くぎを4本それぞれ平打ちする接合方法等により接合することとされている。このように接合方法等が定められているにもかかわらず、同村は、これを確認することなく、上記のとおり鉄丸くぎ5本のみで筋交いと柱及び横架材とを接合していた(参考図参照)。このため、当該接合部は、告示に基づくものよりも引抜耐力が著しく不足しており、引抜力等に抵抗できないおそれがある状態となっていた。
このように、柱及び横架材との接合方法が適切でない筋交いで構成された壁は設計計算上耐力壁とは認められないことから、張り間方向及び桁行方向共に必要とされる耐力壁が皆無の状態となっていた。
したがって、本件定住促進施設2棟(工事費相当額計75,828,348円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これらに係る交付金相当額計60,661,908円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同村において木造建築物の設計についての理解が十分でなかったこと、沖縄県において同村に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図)
筋交いと柱及び横架材との接合の概念図