内閣府は、「消費税の円滑かつ適正な転嫁・価格表示に関する対策の基本的な方針(中間整理の具体化)」(平成24年10月消費税の円滑かつ適正な転嫁等に関する対策推進本部決定)に基づき、平成25年10月に、消費税価格転嫁等総合相談センター(以下「総合相談センター」という。)を設置して、「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(平成25年法律第41号。以下「転嫁特措法」という。)で禁止されている消費税の転嫁を拒否する行為等(以下「転嫁拒否行為等」という。)に関する相談業務を行っている。そして、内閣府は、総合相談センターに、全国各地の消費者、事業者等(以下「相談者」という。)からの転嫁拒否行為等に関する相談窓口としてアウトソーシングセンター(以下「OC」という。)を設置するとともに、相談者からの専門性の高い相談にも対応できるよう13省庁(注1)の本省庁内及び10地方機関(注2)内に計23の総合相談センター分室(30年3月末現在。以下「分室」という。)を設置している。また、総合相談センターの運営期間については、当初、25年10月から29年3月末までとされていたが、消費税率の10%への引上げが31年10月に延期されたことなどを受けて、33年3月末まで延長されている。
内閣府は、25年6月に、一般競争入札によりエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(以下「NTTコム」という。)との間で、総合相談センターの運営及び電話設備の設置等に関する請負契約(契約期間25年6月から26年3月まで。以下「総合相談センター運営等契約」という。)を締結している。そして、26年度以降は、総合相談センターを継続的かつ安定的に運営する必要があることなどから、毎年度、随意契約によりNTTコムとの間で総合相談センター運営等契約を締結している。
内閣府が総合相談センター運営等契約により実施している総合相談センター等の運営体制及び電話設備等の設置状況は、次のとおりとなっている(図参照)。
内閣府は、総合相談センター運営等契約に基づき、NTTコムに、OCにオペレータを配置させるとともに、OC及び各分室には、専用回線を用いた相談用の専用電話と専用パーソナルコンピュータ(以下「専用PC」という。)をそれぞれ設置させている。そして、総合相談センターに相談者から電話相談及びメール相談が寄せられた場合には、相談内容に応じて、オペレータ又は13省庁等の各分室の職員(以下「分室員」という。)が相談に対応することになっている。また、専用PCは、オペレータ又は分室員がメール相談に対応する際に利用されるほか、オペレータ又は分室員が相談内容を蓄積するためのシステム(以下、このシステムを「応対管理システム」という。)に応対記録を入力することに利用されるなどしている。さらに、専用回線は、電話相談が同時に多数寄せられても専用電話が受電することを可能としたり、応対管理システムに入力される応対記録等のデータ通信を外部ネットワークから遮断されたネットワークで行ったりするなどのために設置されている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、経済性、有効性等の観点から、総合相談センター運営等契約について、相談件数等に応じた契約の見直しが行われて、総合相談センターの運営に要する費用が経済的なものとなっているかなどに着眼して、設置された機器等の操作状況の記録が保存されるなどしていた28、29両年度の総合相談センター運営等契約(支払金額計3億6860万余円)を対象として、内閣府本府において、業務実績報告書、契約書等の関係書類等により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
内閣府が、総合相談センター運営等契約に基づき、28、29両年度にNTTコムに対して支払った額は、表のとおり、計3億6860万余円であり、このうちOCの運営に要した費用(以下「OC運営費」という。)は計1億5161万余円、分室の運営に要した費用(以下「分室運営費」という。)及び関係庁の運営に要した費用(以下「関係庁運営費」といい、分室運営費と関係庁運営費を合わせて「分室等運営費」という。)は計1億2310万余円となっていて、専用回線に要した費用が分室等運営費の過半を占めていた。そして、OC運営費については、相談件数等に応じてオペレータの配置人数や専用電話及び専用PCの設置台数を見直すなどしている一方、分室等運営費については、専用電話及び専用PCの設置台数を見直すなどしていなかった。
表 総合相談センター等の運営に要した費用並びに専用電話及び専用PCの設置状況
運営費用 | 平成28年度 | 29年度 | 計 | |||
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費用内訳 | ||||||
OC運営費 | オペレータ等費用、専用電話及び専用PCに係る機器費用、専用回線費用 | 78,209 | 73,402 | 151,611 | ||
OCに設置された専用電話台数 | 28 | 22 | / | |||
OCに設置された専用PC台数 | 22 | 16 | / | |||
分室運営費 | 専用電話及び専用PCに係る機器費用、専用回線費用、その他附属機器費用 | 60,344 | 58,391 | 118,735 | ||
分室に設置された専用電話台数 | 73 | 73 | / | |||
分室に設置された専用PC台数 | 75 | 75 | / | |||
関係庁運営費 | 専用PCに係る機器費用、専用回線費用、その他附属機器費用 | 2,187 | 2,177 | 4,364 | ||
関係庁に設置された専用PC台数 | 8 | 8 | / | |||
その他費用 | 通話録音システム費用、機器移設費用等 | 47,386 | 46,507 | 93,893 | ||
合計 | 188,127 | 180,478 | 368,606 | |||
分室等運営費 | 62,532 | 60,568 | 123,100 | |||
分室及び関係庁に設置された専用PCの台数 | 83 | 83 | / | |||
分室等運営費のうち専用回線費用 | 36,275 | 34,927 | 71,202 |
そして、内閣府は、25年度の総合相談センターの運営の開始に当たりNTTコムと締結した契約書の仕様書において、毎月の電話相談の予定件数15,000件程度、メール相談の予定件数7,500件程度になると想定していた。しかし、実際には、最も相談件数が多かった26年3月においても電話相談4,134件、メール相談304件となっていて想定を大きく下回っており、28年度は年間で電話相談757件、メール相談68件、29年度は年間で電話相談865件、メール相談72件となっていた。
そこで、各分室及び関係庁における相談件数と電話設備等の利用状況についてみたところ、次のような事態が見受けられた。
28、29両年度に設置されていた23分室における電話相談件数及びメール相談件数を確認したところ、電話相談件数が年間10件未満であった分室の数は、28年度で19室、29年度で20室、メール相談件数が年間10件未満であった分室の数は、28年度で22室、29年度で21室となっていた。このうち、28、29両年度に電話相談件数及びメール相談件数が共に年間10件未満となっていた分室の数は、28年度で19室、29年度で20室、計39室となっていて、これらの分室に設置されている専用電話及び専用PC並びにこれに付随する専用回線の利用が低調となっていると認められた。そして、上記の39室に要した分室運営費は28、29両年度で計9467万余円となっていた。
表のとおり、28、29両年度に、分室及び関係庁には専用PCが計83台設置されており、専用PCはメール相談に利用されるほか応対管理システムに応対記録を入力したり、保存された応対記録を検索したりすることなどに利用されていた。上記の計83台の専用PCの操作状況について、応対管理システム上に保存された操作記録を用いて専用PCの操作状況を確認したところ、専用PCの年間の操作回数が1日平均1回未満の操作(操作回数を開庁日(28年度243日、29年度244日)で除して求めた回数)にとどまっていた専用PCは、28年度で54台、29年度で60台となっていて、多くの専用PCの利用が低調となっていた。そして、これらの専用PCに係る機器費用は28、29両年度で計1632万余円となっていた。
このうち、(1)の電話相談件数及びメール相談件数が共に10件未満となっていた分室における専用PCを除くと、28年度で11台、29年度で19台、計30台となり、これらの専用PCに係る機器費用は28、29両年度で計429万余円となっていた。
このように、電話相談件数及びメール相談件数が少なくなっていた分室において、専用電話、専用PC及び専用回線の利用が低調となっていたり、相談件数が年間10件以上あった分室及び関係庁に設置された専用PCについても利用が低調となっていたりしていたのに、内閣府において、専用電話及び専用PCの設置台数並びに専用回線の回線数について相談件数等に応じた見直しが十分に行われていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、内閣府において、利用が低調となっている専用電話、専用PC及び専用回線を分室及び関係庁に設置しておくことについての必要性の検討を十分に行っていなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、内閣府は、31年10月に予定されている消費税率の引上げを考慮しつつ、総合相談センターの運営に係る機器費用等の節減を図るよう次の処置を講じた。
ア 30年10月に総合相談センター運営等契約の変更契約を行い、16分室の専用電話、専用PC及び専用回線を撤去することとした。
イ 専用電話及び専用PCを引き続き設置することにした分室及び関係庁においても、利用実績が低調となっている専用電話及び専用PCについて、上記の変更契約等により設置台数の見直しなどを行った。